「やっぱり阿部真央だったな」って言ってほしい

──山本彩さんに楽曲提供した「喝采」のセルフカバーも素敵でした。歌詞の内容も含め、もはや阿部さんの曲でしかない印象です。

あははは（笑）。もちろん彩ちゃんのことを思って書き上げたものではあるんですけど、図らずも自分にリンクする部分も多かったみたいですね。まあ私も彩ちゃんも、芸を生業にしているという意味で大きく見れば同じ世界にいますから。歌詞にも書いたように、自分の選んだステージに疑問を抱くこともあるし。歌に関しては、こういうタイプの曲は得意っちゃ得意なんで、歌入れは3時間くらいで終わりましたね。楽しくパパッと歌えました。

──10曲目の「朝日が昇る頃に」は美しいエンディングをイメージできる曲ですが、そこでアルバムを終えるのではなく、最後にコミカルなギター弾き語りナンバー「27歳の私と出がらし男」を持ってくるところが実に阿部さんらしいですね。

ファンの人たちに「やっぱり阿部真央だったな」って言ってほしいんですよ。この曲ができた瞬間、これは絶対アルバムのラストかシークレットトラックだなって思いましたから。1曲目から作ったいい流れをあえて最後にぶっ壊す、みたいな（笑）。

──曲中の「あの5000円は許しません」の意味がかなり気になりますが。

そうですよね。みんなに言われる。しめしめ（笑）。

──かつて“三万円”というワードを繰り返す「返して」なる曲もありました。

お金ばっかり（笑）。「返して」の“三万円”に意味はなかったんですけどね。言葉の響きで使っただけなので。でも今回は明確に意味がある。重いよー、この5000円は（笑）。その理由は内緒ですけどね。うふふふ。

作ってきた作品が全部今につながっている

──4月には本作を引っ提げてのライブハウスツアー「Closer」も決定しています。

最近はホールでのライブが多かったので、ライブハウスツアーになって規模が縮小したと思われるのがイヤで。だからこれまで使ってきた「阿部真央らいぶNo.〇」とは違う、「Closer」というツアータイトルにしました。「Closer＝より近く」なれるライブハウスで一緒に楽しみましょうってことです。

──ライブの内容についてはどのようなものを考えていますか？

今回のアルバムには「どうやって再現するんだ!?」という曲がけっこうあるんですよ。だからちゃんと考えて、ライブならではの楽しみ方を提示できればなと思っています。アルバム曲はもちろん過去の曲も含め、ライブハウスならではの盛り上がりを作れるようなセットリストにしたいと考えているので、楽しみにしていてください。

──阿部さんは現在、来年1月のデビュー10周年に向けた“Road to 10th Anniversary”と銘打った活動をされています。その中で用意されている7つのトピックのうちツアーとアルバムの発表で2つが解禁になり、残りは5つとなりました。何が待っているのか期待が高まりますね。

ここからもいろいろ動きがありますよ。先日、うれしい決定事項もあったので、近々ご報告もできると思います。

──デビュー10周年を迎えることに対してはどんなお気持ちですか？

ついこの間まではそんなに意識してなかったんですけど、10年続けられるってすごいことなんじゃないかって思い始めています。だから、ただただ感謝を伝えることに専念するアニバーサリーイヤーにしたいなと思っていて。だってね、ここまで続けられたのは自分の力だけじゃないから。感謝以外はないよね。

──でも、この10年を振り返って自分を褒めてあげられることもあるんじゃないですか？

あー、そっか。自分を褒めてあげることか。確かにそれも大事ですよね。周りへの感謝もしつつ、自分のことも愛でてあげないと。こうやって今、過去の事も含めて楽しく話せているのって、そのときどきに一生懸命、自分なりに向き合ってきた証拠ですからね。今まで作ってきた作品が全部今につながっていると言うか。そう考えるとやっぱり、月並みですけどそのときどきの自分を褒めてあげたいなと思います。よくがんばったねって（笑）。