阿部真央がニューアルバム「YOU」をリリースした。
来年1月のデビュー10周年に向けた“Road to 10th Anniversary”の一環でリリースされた本作には、恋人との出会いから別れまでの変遷を紡いだ全11曲を収録。先行シングルとして配信されたハッピーなポップチューン「K.I.S.S.I.N.G.」や、岡崎体育をアレンジャーとして迎えた妖艶なダンスナンバー「immorality」、山本彩(NMB48)への楽曲提供曲「喝采」のセルフカバー、切なさを感じさせるピアノバラード「Angel」など、恋愛にまつわるあらゆる感情を多彩なサウンドで表現している。
自身のモードを反映したと言う、風通しのよく開けたムードに包まれた本作はいかにして作り上げられたのか。今年4月に約7年ぶりのライブハウスツアー「Closer」の開催を控える阿部に話を聞いた。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / moco.(kilioffice)
何も怖くない
──約1年ぶりのアルバムは非常に開けた印象の痛快な作品になりましたね。
そうですね。前作「Babe.」がけっこうヘビーな内容だったので、今回のアルバムではポップさだったり、明るい気持ちを前面に出していきたいなと思っていて。それで先行配信シングル「K.I.S.S.I.N.G.」はキャッチーで、みんなでクラップできる雰囲気にしたところもあったんですよ。
──前作の内容を踏まえ、意識的に対照的とも言える方向性を目指したと。
そう。ただそこは意識的でもあり、無意識にそうなったところもあると思います。今回のアルバムの方向性に直結した話ではないんですけど、「Babe.」は非常にさまざまな評価をもらったし、賛否両論がすごくあったアルバムだったんですよ。だから、そのあとに作る作品に対してどんな評価をもらってももう怖くなくなったと言うか。前作でいろいろ言われたから、今回はとりあえず自分の思いついたものを正直に、なんでもやってみようと思えたんですよね。そういう気持ちが圧倒的に今までの作品よりも強かった。ある意味、デビューしたときに近かったかもしれないです。何も怖くない感じ(笑)。
私の好きなエロスが1行に凝縮されてる
──自分のクリエイティビティを素直に形にした結果が今作の開けたムードにつながったということは、すなわち阿部さん自身のモードがそういった方向を向いていたということですよね。
うん、そうだと思う。もうヘビーな曲は書きたくないってどこかで思ってたところもあったし(笑)、調子はすごくいいですからね。今回は曲を書く段階から歌入れをするときまで、いつも以上に楽しんで作業できたんですよ。曲で言うと「immorality」「傘」「その心には残れない」は完全にフィクションとして書いているんですけど、フィクションだからこそすごく楽しんで書けたし。
──前作あたりからフィクションを織り交ぜて歌詞を書くようになったそうですね。デビュー以来、ずっと自身のリアルを曲に落とし込んできた阿部さんだけにちょっとビックリしたんですけど。
あ、ホント? 確かに最初は自分でも「どうなのかな?」と思うところはありましたよ。私はずっと「実体験を曲にしなきゃ」って言ってきた人だったから。でも迷ったのは最初だけ。フィクションを書いてみたら楽しいし、楽なんですよ(笑)。実体験じゃないから、自分の気持ち1つでどんなストーリーでも書けるわけじゃないですか。で、そこに自分のリアルな気持ちを織り交ぜて、最終的に言い得て妙みたいに言い表せたときの快感はすごくって。やればやるほど楽しいですね。
──フィクションで書いた曲であっても、そこには阿部さんの思いもしっかり注がれているということなんですね。
そうそう。まったくのゼロじゃないです。ストーリーとかシチュエーションがフィクションなだけ。例えば「傘」のような不倫をテーマにした曲にしても、そこで感じている甘い背徳感は誰しもが多かれ少なかれ経験しているものじゃないですか。例えば「こんな時間にアイスなんて食べちゃダメだけど……でも食べちゃうよね」みたいな(笑)。そういう気持ちをフィクションのストーリーに重ね合わせていくっていう。
──そういった手法を用いながら紡がれた歌詞は、選びや表現の鋭さ、深みが格段にアップしている印象もあって。
あー、うれしい。前はとにかく明け透けに思ったことをストレートに書いていて。それはそれでいいとは思うんだけど、今の私はもうちょっと含みを持たせたうえで、言葉の強さを大事にしたいと思うようになったんですよ。そこはけっこう大きな変化かなって自分でも感じます。
──では、歌詞に使う言葉や表現は今まで以上にじっくり取捨選択していく感じですか?
うん、かなり突き詰めますね。今回、個人的にうまく書けたなって思うのは「傘」の「触れていた肩に気付きながら何度も押し付けた」のとこ。この1行が書けたとき、自分はもう天才なんじゃないかって思った(笑)。私が表現したい、私の好きなエロスがこの1行には凝縮されてるんですよ。この1曲だけ見ても、自分の中での成長を実感できますね。
──内容的にもデビュー当時じゃ絶対書けなかったでしょうし。
そうですね。このアルバムの曲たちを書いたのは27歳でしたけど、その年齢だからこそ出てきた歌詞がすごく多いと思う。曲調にしてもそうだし、前だったら恥ずかしくて作れなかったことも平気で作れるようになってきたんですよ。さっき話したように、怖いものがなくなってきたのかもしれないですね。
次のページ »
全部が同じ人のことを書いた曲
- 阿部真央「YOU」
- 2017年3月7日発売 / ポニーキャニオン
-
初回限定盤 [CD+DVD]
3500円 / PCCA-04627 -
通常盤 [CD]
3000円 / PCCA-04628
- CD収録曲
-
- K.I.S.S.I.N.G.
- the SUN
- Such a beautiful day
- 蔑ろな夜
- immorality
- 傘
- その心には残れない
- 喝采
- Angel
- 朝日が昇る頃に
- 27歳の私と出がらし男
- 初回限定盤DVD収録内容
-
- 「K.I.S.S.I.N.G.」Music Video
- 「immorality(Arranged by 岡崎体育)」Music Video
- 「K.I.S.S.I.N.G.」Music Videoメイキング
- 「immorality(Arranged by 岡崎体育)」Music Videoメイキング
- 「K.I.S.S.I.N.G.」ジャケットメイキング
- 「YOU」ジャケットメイキング
- あべまおらじお~超超超番外編~メイキング
- 特別企画!阿部真央が27歳までにやっておきたいこと
- 阿部真央「阿部真央ライブハウスツアー2018 "Closer"」
-
- 2018年4月6日(金)東京都 新木場STUDIO COAST
- 2018年4月13日(金)宮城県 Rensa
- 2018年4月15日(日)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2018年4月20日(金)福岡県 DRUM LOGOS
- 2018年4月22日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2018年4月27日(金)愛知県 DIAMOND HALL
- 2018年4月30日(月・振休)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 阿部真央(アベマオ)
- 1990年1月24日生まれ、大分県出身のシンガーソングライター。2009年1月にアルバム「ふりぃ」でポニーキャニオンからメジャーデビューし、等身大の歌詞とポップなメロディ、表現力豊かなボーカルが同世代を中心に支持を集める。2010年1月に2ndアルバム「ポっぷ」、2011年6月に3rdアルバム「素。」を発表。全国ツアーやアヴリル・ラヴィーンの来日公演にオープニングアクトとして出演するなど、精力的なライブ活動を展開する。CDデビュー5周年を迎えた2014年8月、初のシングルコレクションアルバム「シングルコレクション 19-24」をリリース。2017年2月には7thアルバム「Babe.」、9月にはライブDVD / Blu-ray「阿部真央らいぶNo.7@東京国際フォーラム」を発売した。2019年1月のデビュー10周年に向けた“Road to 10th Anniversary”の一環として、2018年3月に8枚目のオリジナルアルバム「YOU」をリリースしたほか、4月からはライブハウスツアー「阿部真央ライブハウスツアー2018 "Closer"」を開催する。