ナタリー PowerPush - AA=
上田剛士が語る「2011年」
上田剛士のソロプロジェクト、AA=がSPEEDSTAR RECORDS移籍第1弾アルバム「#3」をリリースした。文字どおり通算3作目のアルバムとなる本作は、上田が全曲でボーカルを担当した意欲作。東日本大震災後の日本の情勢に対する辛辣なメッセージだけでなく、未来を切り開こうとする希望がストレートな言葉とサウンドで表現されている。
ナタリー初登場となる今回は、アルバム制作の流れや震災後に上田が起こしたアクションについて言及。また、AA=AiDとして発表した「We're not alone」やそのタイトルに込めた思いなど、じっくり語ってもらった。
取材・文 / 西廣智一
新作はある意味集大成的なものを考えていた
──今回のアルバムの準備はいつ頃から始めたんですか?
今年に入ってすぐ曲作りの準備を始めて、そのままアルバム制作に入っていった感じです。
──THE MAD CAPSULE MARKETS後期と比べると、AA=になってからはコンスタントにリリースとライブが続いていますが、意識的にそうしているんでしょうか?
そうですね。最初にアルバム「#1」を作ってツアーをやったら、単純に「もっと曲が欲しい、もっとライブをやりたい」って思うようになって。そこで2枚目(「#2」)を作ってっていう流れがあって、同じようなテンポ感で今回の3枚目も作ったんです。
──今回の制作に入る前、アルバムを「こんなものにしよう」というイメージはありましたか?
テクニカルな部分ではなかったんですけど、自分のいろんな要素が入っていて、1つの答えみたいなものが出る作品、ある意味集大成的なものになったらいいなとは漠然と考えてました。
──なるほど。作品を重ねるごとにAA=は剛士さんのソロプロジェクトというよりはバンドとしてのイメージが強くなってる気がします。今回のアルバムでは成長を続けてきた1つのバンドとしての集大成感もあるように感じられました。
実際にバンドっぽくなってきてるし、ほかのメンバーのアイディアも自然と融合するようになってきてるし。バンドの成長記録としては、確かにそういった意味での集大成的な意味合いもあったと思います。
──自分の頭の中で思い描いたサウンドを形にしていく上で、プラスアルファとしていろんな人のカラーが混ざっていくと。
曲の基本的な部分は全部自分でガッチリ作っちゃうんで、そこは本当に動かぬものとしてあるんですけど、その曲をみんながどう解釈して広げるかっていうのはだんだんわかってきましたね。ほかのみんなもAA=としてどういう形にしていくかっていうビジョンについて、ピントが合ってきている感じもありますし。
──お互いのピントが合ってきたことで生まれた1つの答えが、今回のアルバムに反映されている?
でも、実際にはイメージしてたものよりもストレートな音になりましたね。そういう意味では、みんなのアイデアが加わることでより変化していったんだと思います。
悲しみの中から出てきた言葉「We're not alone」
──アルバムの準備をする中、3月に東日本大震災がありました。震災後にはチャリティTシャツの制作やAA=AiDとしての活動がありましたよね。で、まず最初のTシャツにその後の楽曲タイトルにもつながる「We're not alone」って言葉が登場しますが、この言葉にはどのような意味を込めたんですか?
言葉の意味どおり、そのままなんですけどね。あまりにも大きな悲しいことがあって、自分の中からはそういう言葉しか出てこなかったんです。今まで自分を支えてくれていた人の中に被災して苦しんでる人がたくさんいる。だから、一緒に支え合ってきたほかのファンも含めて、そういう仲間たちに向けて自分が発する言葉としては本当にこういうシンプルなものしかなかったんです。
──シンプルだからこそストレートに響く言葉だと思います。
そうですね。自分は20年音楽をやっていてずっとファンに支えてもらってるんで、彼らに対して自分がやれることっていうのはそういうことしかない、自分のやれることをやってるっていうだけなんですけどね。
──そして7月1日にはAA=AiDとして、さまざまなアーティストが参加した楽曲「We're not alone」を無料配信しました。ダウンロード課金して収益を寄付することもできたと思うんですけど、なぜフリーダウンロードにしたんですか?
一番の理由は、自分のところにお金を集めなくてもいいなって思ったから。実際にお金を集めているところもほかにたくさんあったので、だったら自分はお金を集めるんじゃなくて、気持ちというか自分がこう思うっていうメッセージを伝えていこうと。そこから、募金したい人は募金すればいいし、ボランティアしたい人は行動を起こせばいいし。そういうきっかけになればいいと思ったんです。
──この曲を聴いた人が、自分が感じたように動くのが一番だと。
大げさに言うと、人それぞれ誠意の形って違うじゃないですか。いろんな答えがあっていいと思うんですよね。
──レコーディングに参加した方々もみんな、その考えに賛同したわけですね。
そうです。みんながこうやってバンドの垣根を飛び越えて集まって、1つの曲をサクッと完成させるっていう、それだけでもメッセージになると思うんです。
CD収録曲
- #3 INTRO
- WORKING CLASS
- DISTORTION
- posi-JUMPER
- sTEP COde
- Dry your tears
- coLors
- Sunshine glow
- PEOPLE POWER
- DREAMER
- We're not alone (AA= Ver.)
- #3 OUTRO
初回限定盤 / "AA-ID (All Animals' Identify Document)"エンブレムワッペン封入
AA=(えーえーいこーる)
2006年までTHE MAD CAPSULE MARKETSで活動した上田剛士(Vo, B, Programming, Produce)によるソロプロジェクト。プロジェクト名はイギリスの作家、ジョージ・オーウェルの小説「動物農場」に登場する言葉「All Animals Are Equal」に由来する。2008年10月に1stシングル「PEACE!!!」をリリース。以後、アルバム2枚とDVD1枚を発表したほか、精力的なライブ活動を展開してきた。また、社会意識も高く、アルバムの売り上げの一部を環境保全団体「WWWF」へ寄付。2011年3月には東日本大震災被災者への義援金を募るべく、チャリティTシャツを販売し、その収益の全額を寄付した。さらに、復興支援プロジェクトAA=AiDを立ち上げ、さまざまなミュージシャンと制作した楽曲「We're not alone」を発表している。12月にはレーベル移籍第1弾アルバム「#3」をリリース。