今年活動10周年を迎える上田剛士のソロプロジェクト・AA=が、初のベストアルバム「(re:Rec)」をリリースした。
本作は過去5作のオリジナルアルバムから選りすぐられた19曲を、上田、白川貴善(Vo / BACK DROP BOMB、Noshow)、児島実(G / ex. THE MAD CAPSULE MARKETS)、ZAX(Dr / The BONEZ、Pay money To my Pain、POLPO)、草間敬(Manipulator)の5人からなるバンド編成で新たにレコーディングした再録ベスト。現在のAA=の最新型を凝縮した1枚に仕上がった。
音楽ナタリーでは「(re:Rec)」のリリースに合わせて上田にインタビューを行い、ベストアルバム制作時のエピソードやアーティストとしてのスタンスを聞いた。
取材・文 / 小野島大 撮影 / 西槇太一
ライブを経て進化した楽曲をもう一度録りたい
──10周年記念の再録ベスト盤ということですが、この10年間を振り返るようなニュアンスもあるんでしょうか?
10年間を振り返る……と言うよりも、ライブを経てアレンジがどんどん進化していった楽曲をもう一度録りたいという気持ちがもともとの始まりなんです。それを口実に10周年がちょうどよかったというだけなので、区切りという感覚もあまりないんですよね。10年というのも周りに言われて初めて気付いたぐらいで。ただこうして話をする機会も多くなって、10年という時間の重みを徐々に感じてます。
──確かにAA=始動から10年も経った実感は全然ないですね。
うん、自分でもそうなんです。つい最近始まったばかりという。でも数えてみたら、そうなっていた。
──今回のアルバムに収録されたのは19曲ですが、選曲の基準はなんでしょう。
基本的には、オリジナルとはアレンジを変えているもの、ライブでコンスタントにやっている曲が中心です。
──AA=は基本的に上田剛士さんが1人の作業で作り上げた音源をライブにおいては5人編成のバンドで演奏するというスタイルでやっています。その過程でアレンジが変化していった楽曲ということですね。
そういうことです。
──選曲する段階で昔の音源を聴き返す機会もあったと思います。
はい。ライブバージョンのほうが体に染み付いてる感じなんで、聴き直したときに最初はこうだったなあ、という感じがあって。1ページ目と言うか、最初の純粋な気持ちを思い出したりしましたね。
──今の自分なら違う表現になっていた?
そうですね。ライブを経てだんだん変わっていったというのは、そういうことだと思うんです。今の自分、今のAA=に合っているのはこの形かなと思いますね。
AA=というのはバンドなんだな
──10年前と今とで、何が一番違うんですか?
……一番違うのは、やっぱりバンドとして完成してきたってことですかね。10年前はホント手探りで。特に1stアルバムとかは「とにかく始めよう」という衝動だけで始まったんです。それがだんだんお互いへの理解度が深まってきた。自分がメンバーをより理解できるようになって、ライブにおいては5人、今まで関わった人数を合わせると7人でAA=の音を鳴らすとしたらどういう形になるかが見えてきた10年だと思います。
──CDを作る段階ではすべて上田剛士のコントロール下であっても、ライブになれば各メンバーに委ねる部分もあるわけですよね?
あります。自然と変わっていくところはあります。ライブをやっていくうちにテンポ感であったりアレンジだったり、こう行きたいという方向にだんだん向かっていく。最初に自分が頭の中で思い描いてたものをより肉体的なエネルギーの方向で表現したと言うか。
──つまりAA=はソロユニットではあるけど、バンドでもある、ということでしょうか?
うん、最終的にはバンドなんですかね。オリジナルバージョンのほうは自分の頭の中にあるものを形にするのが第一にあるんです。イメージの塊みたいなところがある。もちろん感覚としてはバンドを想定してやってはいるんだけど、1人の作業で作ってるものなんで、絵を描いてるような感じに近い。バンドってどっちかと言うと、メンバーみんなでサッカーとか野球をやってるような感じなんですよ。その、1人で絵を描く作業が自分のやりたいことなんです、表現の1つとして。だからあえて1人で作る形を取っているんだけど、作り上げたものをみんなで鳴らしてるうちに今度はバンドサウンドでも表現したくなってくる。
──それが今回のベスト盤ということですね。要はライブでやっていることをスタジオで、もう少し緻密にやってみよう、という。
そうですね。ほとんどライブでやってることまんま、みたいなところがあります。実際にみんなで「せーの」で録ってるから。歌もそのままレコーディングスタジオで録ってたものをOKにしたので。ライブと何が違うって、目の前にお客さんがいないってだけ。基本的には同じように録ってるんで。だからそう銘打ってはいないけど、ライブレコーディングと違わないと思います。
──私はレコーディングを少しの時間だけ見学させてもらいましたが、非常に和やかかつ順調な作業でしたね。
そうですね! ワンテイクで終わった曲もあるし。
──3日間で19曲という非常にハイペースのレコーディングだったと聞いています。
でも逆の発想として、ライブって1時間半で20曲ぐらいやるじゃん、だったらできるよね、っていう(笑)。1日でやろうと思えばできるよ、って。もちろん音作りはよりシビアになってくるので、そこに時間を取られるから3日間は確保してるんだけど、ライブをやるぐらいのつもりでやってたって感じです。
──上田さんにとっても、バンドで一堂に会してレコーディングするのはひさしぶりのことですよね。
面白かったし、生々しいですね。AA=というのはバンドなんだな、と改めて感じることができた気がします。
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選択肢を広く持っている形が合ってる
- AA=「(re:Rec)」
- 2018年4月4日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
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[CD]
3240円 / VICL-64965
- 収録曲
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- LOSER
- 2010 DIGItoTALism
- posi-JUMPER
- KILROY WAS HERE
- WORKING CLASS
- GREED...
- Such a beautiful plastic world!!!
- HUMANITY2
- ROOTS
- meVIR
- sTEP COde
- The Klock
- STARRY NIGHT
- WARWARWAR
- DREAMER
- 4 leaf clover
- ALL ANIMALS ARE EQUAL
- FREEDOM
- PEACE!!!
ライブ情報
- AA= TOUR OIO 2018
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- 2018年5月2日(水)東京都 新宿LOFT
- 2018年5月5日(土・祝)大阪府 Music Club JANUS
- 2018年5月13日(日)宮城県 仙台MACANA
- 2018年6月8日(金)福岡県 LIVE HOUSE CB
- 2018年6月10日(日)愛知県 CLUB UPSET
- AA=(エーエーイコール)
- 2008年に始動した、THE MAD CAPSULE MARKETSの司令塔である上田剛士(Vo, B, Programming, Produce)のソロプロジェクト。アーティスト名はジョージ・オーウェルの小説「動物農場」に登場する言葉「All Animals Are Equal」に由来する。プロジェクトとしての活動の一方で、BABYMETAL、BiSなどの楽曲制作やプロデュースなどを担当したり、椎名林檎をはじめとするさまざまなアーティストの楽曲のリミックスをしたり、CM音楽や映画の劇伴を手がけたりと多岐にわたって活躍。2015年4月に0.8秒と衝撃。のJ.M.をボーカルに迎えた「→MIRAI→(ポストミライ)」をモード学園のCMソングとして提供して注目を集める。2016年5月に5thアルバム「#5」をリリース。2018年4月に全曲再録によるベストアルバム「(re:Rec)」を発表した。