ナタリー PowerPush - 9mm Parabellum Bullet
原点と進化を刻んだ最高傑作
歌詞では“その世界”を描く
──卓郎くんは今回、作曲はまったくしなかったの?
菅原 やらなかったです。今回は作詞が追いつきそうもなかったので、無理に欲を出すのはやめようと思って。魅力的な曲が十分そろっていたし。
──作詞の面ではどうですか? 9年前と現在のあり方は。
菅原 変わってないところは、バンドをやりたい、歌ってみたい、ギターを弾きたいと思ったときからすでに自分の中に表現したい世界観があって。それは一貫してると思います。それがどんどんクリアになって、広がってきたのかなと思いますね。
──変わったところは?
菅原 歌詞は書けるものだと思っているところですね。前は「書けるかわからん!」って思いながら取り組んでいたんですけど。今は必ず何か書けるとわかっているから、そこに向かってペンなりキーボードを走らせていけばいいと。
──改めて卓郎くんが歌詞で表現したいと思っている世界観を語ってもらえますか。
菅原 空気というか、雰囲気というか……。自分の中にある架空の世界で聞こえている物音や気配、匂い。視覚的なイメージだけじゃないものも言葉で捉えたくて。“その世界”の歴史みたいなものもあると思うし。
──今はリスナーの存在も“その世界”の住人として意識しながら歌詞を書いているような趣があって。それが歌の在り方にも影響していると思うんですよね。
菅原 うんうん。架空の世界を描いているけど、もしかしたら自分が知らないだけで、どこかで起きている出来事とつながっているんじゃないかとも感じるようになって。
──それはいつ頃から?
菅原 「Black Market Blues」あたりかな。「架空の世界なんだけど、どこかで現実と地続きになっているポイントがあるぞ」って思うようになったのは。そういうことって、例えば自分がリスナーとしてBLANKEY JET CITYの曲を聴いてるときにも感じることで。
──リスナーが歌にシンクロするときって、必ずしも現実世界が描かれているから果たされるわけでもなくて。卓郎くんが追求しているのはそこですよね。
菅原 うん。メンバーも最初からそういうところに共感してくれるところがあったので。「歌詞は直接的な体験をそのまま歌うような感じじゃないほうがいいよね」って。
ライブの新曲投入は試作品
──今作は「夜明け」とか「新しい始まり」を意味する「Dawning」というタイトルが付いている通り、歌詞もポジティブなエネルギーを感じさせるもの多いですね。
菅原 そうですね。ポジティブなエネルギーを確かに感じられる言葉を乗せたいと思って。それを押し付けるのではなく、曲を演奏するバンドも、それを聴くリスナーも、お互い自然と沸き上がってくるような。
──そういう筆致にしたいと思った理由は?
菅原 それはやっぱり震災後という意識が大きいですね。今でも大変な状況があることは変わらないし、多かれ少なかれ誰もがどこかでその影響を受けたり、体験をしていて。そのことを意識しながら、聴いた人がパワーの出るような音楽を生みたいと思ったときに、ただテンションが高いものではなく、音楽が堂々とリスナーに向かっていくようなものを作りたいなと思って。実際にどの曲も生き生きとしていたし、これなら前向きなパワーを込められるぞと思えたんですよね。
──レコーディングまでにライブで新曲を投入していったこともホントにいい作用しかなかったし。
滝 いい作用しかなかったですね。あんなに毎回のライブでドキドキワクワクできたのは新曲のおかげだなと思いますし。確実にライブの楽しみがまた1つ増えましたね。
かみじょう モノ作りしてる人って、だいたい試作品を作ったりすると思うんですよ。それと同じようなことなんじゃないかな。
菅原 うん。バンドってそもそもそういうものだなと思うしね。曲を作って人前で演奏するっていう。CDやレコードに録音するのは、そういう技術ができてからの話だから。人前に演奏することが先にあるのはすごく健康的だなって。
スタッフが一番のお客さん
──9年前と現在のライブにおける変化はどうですか?
菅原 とにかく9年前はお客さんがいなかったので(笑)。最初は演奏をやり切るとかもそこまで考えてなかったと思うし。少しずつ全員が暴れて弾くようになってからですね。「もっとやり切ろうぜ!」ってなったのは。今は自分たちが最高の演奏するということに加えて、会場全体を沸騰させて初めていいライブだったと思えるので。自分たちが手応えを感じていても、お客さんには伝わってなかったということもたまにありますからね。
中村 逆のときもあるしね。
菅原 そういう意味ではスタッフが一番のお客さんですよね。全部のライブを観ている人たちだから。ホントにいいライブをやっているときはギターを交換しにきてくれたローディさんが興奮しながら「最高だよ!」とだけ言って帰るっていう(笑)。そういうときはだいたいお客さんもハフハフしてます(笑)。
滝 ハフハフしてるね(笑)。
──今後もライブで新曲をやってからレコーディングに臨むというサイクルを維持できればいいですよね。
滝 うん、基本的には今後もそれでやっていくつもりです。
菅原 ツアーもあるので、しばらくは「Dawning」の曲をガンガンやっていきますけど、ちょっと落ち着いたらまた新曲もやっていきたいですね。
──ツアーでもいきなり新曲をやっちゃうこともありえるんじゃないの?(笑)。
菅原 いや、さすがにそれは!……そういう過ちがないとは言い切れないですね(笑)。
中村 うん、言い切れないなあ(笑)。
菅原 滝が作った新曲はすでに何曲かあるからね。
滝 メロがついてない曲もちょこちょこあるので、ツアーをしながらも作りたいと思います。
- ニューアルバム「Dawning」/ 2013年6月26日発売 / EMI Records Japan
- 完全生産限定盤 [CD+DVD] / 4500円 / TOCT-29168
- 通常盤 [CD] / 2800円 / TOCT-29169
CD収録曲
- The Lightning
- Grasshopper
- Answer And Answer
- Zero Gravity
- シベリアンバード~涙の渡り鳥~
- Scarlet Shoes
- コスモス
- Wild West Mustang
- Starlight
- ハートに火をつけて(Album Ver.)
- Caution!!
- 黒い森の旅人
- The Silence
完全生産限定版DVD収録内容
完全生産限定 全ビデオクリップ付 SPECIAL EDITION
- The World
- Discommunication
- Termination
- Supernova
- Wanderland
- Living Dying Message
- Vampiregirl
- Black Market Blues
- Cold Edge
- 命ノゼンマイ
- The Revolutionary
- キャンドルの灯を
- 新しい光
- カモメ
- ハートに火をつけて
- Answer And Answer
- 黒い森の旅人
9mm Parabellum Bullet
(きゅーみりぱらべらむばれっと)
2004年3月横浜にて結成。2枚のミニアルバムを残響レコードよりリリースした後、2007年10月に「Discommunication e.p.」で鮮烈なメジャーデビューを飾る。パンク、メタル、エモ、ハードコア、J-POPなどさまざまなジャンルを飲み込んだ音楽性と、激しいライブパフォーマンスで人気を博し、現在の音楽シーンを牽引するロックバンドの1組として支持されている。2009年9月9日には初の日本武道館公演「999(アット ブドウカン)」を開催し、1万1000人の観客を動員した。2011年6月には4thアルバム「Movement」を発表し、同月に横浜アリーナにてワンマンライブ「Movement YOKOHAMA」を開催。同公演の模様は、2012年4月に「actIV」としてDVDおよびBlu-rayでリリースされている。2012年6月にはMTVの人気企画「MTV Unplugged」に初出演。アコースティックによるステージの模様は、同年8月にDVD+CD作品として発表され話題を集めた。結成9周年を迎える2013年に入ってからは、5月29日にシングル「Answer And Answer」を発表。6月26日に5thアルバム「Dawning」をリリースする。