ナタリー PowerPush - 9mm Parabellum Bullet
原点と進化を刻んだ最高傑作
結成9周年のアニバーサリーイヤーを精力的に駆け抜けている9mm Parabellum Bullet。彼らの2年ぶりとなるニューアルバム「Dawning」がリリースされる。
「9mmの新たなスタンダード」と呼ぶにふさわしい本作は、あらゆる面においてバンドの原点と進化を感じさせる内容になっている。そこで今回は、「9mmの変化と不変」をキーワードにインタビューを実施。改めて、その独創的な音楽性の真髄に迫った。
取材・文 / 三宅正一(ONBU) インタビュー撮影 / 上山陽介
誰がどう聴いても「これが9mmだ」
──ほうぼうで「いいアルバムですね」って言われてると思うんですけど。
菅原卓郎(Vo,G) そうですね。だいたい「聴かせてもらったんですけど……いいですねっ!」って溜めてから褒めてもらえる感じで(笑)。
──(笑)。9mmの独創性が新たなスタンダードを見出した作品だと思いました。9年前と絶対的に変わらないことと、大きく進化したことがシンボリックに共存しているなと。
菅原 うん、そう言ってもらえる感じもよくわかるし、とてもいいアルバムができたなって思います。自分がこのアルバムに対していいと思う感覚って、人が聴いても同じように思ってくれるんじゃないかなって。最高傑作ですね。
──滝くんはどうですか?
滝 善充(G) ホントに満足してます。レコーディング前に新曲をライブでやったり、やりたかったアレンジを具現化できたり、いろんなことを叶えられたので。
──制作環境的にもバッチリだった?
滝 アルバムのために準備できた曲数も過去ダントツで多かったし。つまり、漏れた曲もたくさんあったんです。
──どれくらいあったんですか?
滝 ネタだけのも含めると、4、50曲分くらい同時に手をつけながらやってましたね。オケの長さになったのも20曲くらいありました。
──そこから厳選したと。今作に入らなかった曲は次作に生かす可能性もあるだろうし。
滝 大いにありますね。次作の入口になるんじゃないかと思います。だから、次への取っ掛かりがすでにできている感じなんですよね。しかもレコーディング終了直後にまた4曲くらい作ったので。
──ほとばしってるねえ。
滝 なんだか曲を作るのがホントに楽しくて(笑)。スイッチが入ったままなんです。
──最高じゃないですか。かみじょうくんはどうですか?
かみじょうちひろ(Dr) いつもだったらアルバムが完成した直後はけっこう聴いちゃうんですけど、今回はたいして聴いてないんですよ。
──それはなぜ?
かみじょう なんで聴いちゃっていたかというと、不安を自信に変えようとしてたからなんですね。
──ああ、なるほど。今作は完成直後から手応えがあるからそうしなくてもいいという。
かみじょう そうですね。今作は聴かなくてもいいやって感じですね。よくできたアルバムだと思います。
──どんなところがよくできていると思いますか?
かみじょう うーん、なんだろう……僕らはプレイヤーだから演奏する楽しみを知っているし、難しいことをやりたがり症候群みたいなところがあると思うんですが。でも、こう言っちゃなんですけど、ミュージシャンズミュージシャンって、難しいことばかりやってるけど曲がよくないみたいなことがよくあるので。だから、基本的には難しさと曲のよさって比例しないと思っているんですが、このアルバムはそのバランスがすごく取れてると思いますね。
──和彦くんはどうでしょう?
中村和彦(B) 純粋にすごくいいアルバムができたなと。9mmらしさをむりやり追求するのではなく、それを自然に形にすることができたので。誰がどう聴いても「これが9mmだ」って言わせられるアルバムになったと思いますね。
──自然に9mmらしさを形にできた要因はなんだと思いますか?
中村 バンドの状態と活動のリズムがすごくよかったんですよね。ライブで新曲をやりながら曲を詰めていけたのも大きいし。
──活動の流れにおけるいいグルーヴってあるもんね。
中村 そう思います。去年1年間、いろんなイベントに出てライブをしましたけど、ほとんどがいい思い出ばかりで。バンド活動の充実が、曲のよさに直結していったと思いますね。
曲作りは結成から変わってない
──今日は9年前と現在で変化したことと不変なことという観点で聞いていきたいんですけど。まず滝くん、曲作りの方法論における変化と不変についてはどうですか?
滝 基本的に何も変わってないですね。曲作りにおいては、なんならこのバンドを結成してから一度も変わってないと思います。バンドの中でアンサンブルを組んでいくうえでは楽曲ごとにいろんなことを試しますけど、曲の作り方はギターを弾いて思いついたリフを鳴らしてみてそこから組み立てるとか、あるいはドラムのいいリズムがあったらそこから組み立てる感じで。メンバーに伝える手段も口頭でやるときやデモを作って渡すときとかいろいろありますけど、頭の中のイメージを自信をもってしっかり伝えるようにしてます。
──結成当初からみんなで演奏しているイメージを浮かべて作曲していたんですか?
滝 はい。大学の同じ軽音サークルにいて、みんなが演奏している姿は日常的に見ていたので。コピーバンドでいいプレイをしていたりすると「この人はこういうのが得意なんだな」というのが見えて。「この人とこういうサウンドをやればカッコいいバンドができそうだな」ってすぐにイメージできたし。メンバーそれぞれの好きな音楽の話もよく聞いてましたから。このCDを買ってよかったとか、高校生のときにこういうバンドにハマっていたとか。もちろん、僕も話しましたし。だから、それぞれの趣味嗜好をよくわかってうえで9mmは始まったんです。
──このメンバーとだからこういうサウンドになっていったし。
滝 もちろんそうですね。
菅原 メロディ、コード感、リズム。滝独特の作家性は一貫したものがあって。それと同じように、僕らも音楽的な固有の性質がそれぞれある中で、滝の曲を演奏することでプレイヤーとしての自我を確立していったと思うんです。4人が互いに影響しあってバンドになっていったのかなと。
- ニューアルバム「Dawning」/ 2013年6月26日発売 / EMI Records Japan
- 完全生産限定盤 [CD+DVD] / 4500円 / TOCT-29168
- 通常盤 [CD] / 2800円 / TOCT-29169
CD収録曲
- The Lightning
- Grasshopper
- Answer And Answer
- Zero Gravity
- シベリアンバード~涙の渡り鳥~
- Scarlet Shoes
- コスモス
- Wild West Mustang
- Starlight
- ハートに火をつけて(Album Ver.)
- Caution!!
- 黒い森の旅人
- The Silence
完全生産限定版DVD収録内容
完全生産限定 全ビデオクリップ付 SPECIAL EDITION
- The World
- Discommunication
- Termination
- Supernova
- Wanderland
- Living Dying Message
- Vampiregirl
- Black Market Blues
- Cold Edge
- 命ノゼンマイ
- The Revolutionary
- キャンドルの灯を
- 新しい光
- カモメ
- ハートに火をつけて
- Answer And Answer
- 黒い森の旅人
9mm Parabellum Bullet
(きゅーみりぱらべらむばれっと)
2004年3月横浜にて結成。2枚のミニアルバムを残響レコードよりリリースした後、2007年10月に「Discommunication e.p.」で鮮烈なメジャーデビューを飾る。パンク、メタル、エモ、ハードコア、J-POPなどさまざまなジャンルを飲み込んだ音楽性と、激しいライブパフォーマンスで人気を博し、現在の音楽シーンを牽引するロックバンドの1組として支持されている。2009年9月9日には初の日本武道館公演「999(アット ブドウカン)」を開催し、1万1000人の観客を動員した。2011年6月には4thアルバム「Movement」を発表し、同月に横浜アリーナにてワンマンライブ「Movement YOKOHAMA」を開催。同公演の模様は、2012年4月に「actIV」としてDVDおよびBlu-rayでリリースされている。2012年6月にはMTVの人気企画「MTV Unplugged」に初出演。アコースティックによるステージの模様は、同年8月にDVD+CD作品として発表され話題を集めた。結成9周年を迎える2013年に入ってからは、5月29日にシングル「Answer And Answer」を発表。6月26日に5thアルバム「Dawning」をリリースする。