7ORDER|7人で踏み出した大きな一歩

ダウナーな曲がほしかった

──7月に行われたオンラインライブの時点で歌入りのオリジナル曲がすでに13曲ありましたが、アルバムではさらに新曲「&Y」が加わりました。ファッションブランド・Ground Yとのコラボレーション曲ですね。

安井 「&Y」だけは、当初自主レーベルからアルバムを出そうとしていたときにまだ生まれていなかった曲です。夏に出すと1回発表してからファンの方々を待たせてしまったこともあって、せっかくだから新曲を入れたいねという話になって。

──とてもつややかでアダルトなナンバーですよね。いろんなジャンルの曲がそろっているこのアルバムの中でも、いい意味で異質というか、アクセントになっている曲だと思います。

真田 アヴァンギャルドな感じですよね。

萩谷 アルバムの中で相当浮いてるもん。

安井 さなぴーにリズムのこだわりがあったので、作家さんにもそれをお伝えして。

真田 ジャマイカっぽいリズムをイメージしたんです。「ツッタ、ツッタ」って後ろで音を取る感じ。

安井 7ORDERは4つ打ちの曲が多いから、そうじゃないやつを作りたいってさなぴーが言っていて。このリズムの曲はほかにないから、アルバムの中でもいい意味でちゃんと目立つ曲になってる。

真田 アッパーチューンじゃなくて、ダウナーな感じの曲がほしかったんですよね。ちょっとだるくなっていくというか、体が重くなっていくような。

長妻 めちゃめちゃ難しかったよ。

──「&Y」は楽曲、ダンス、森田さんのデザインを取り入れたGround Yの衣装、ミュージックビデオすべて合わせて1つの世界観を作り上げているような印象を受けました。衣装と曲は同時並行で作っていたんですか?

真田 いや、デザインが先だったと思います。美勇人のデザインを先に見て、みんなで「じゃあこういう曲の感じにしよう」という話をしました。

──こういったアヴァンギャルドな感じのテーマはどういうふうに決まっていったんですか?

安井 全体的なテーマに関してはもともとGround Yさんからイメージをいただいて、そこに対してアプローチしていった感じですね。

真田 だから今回は、いかに7ORDERのカラーを消すかということを考えました。でもその中に俺らだからこそのエッセンスも少し入れてみたいと思ったときに、それはEDMサウンドからロックサウンドに急に変わることかなって。それでサックスが入ってから、急にバンドサウンドに変わるアレンジにしてるんです。ダンスもバンドもやるのは俺らのよさだから。

可能性が広がった

──7ORDERにおいてダンス面は森田さんが中心になっていて、これまでも振り付けを手がけています。「&Y」の振り付けは森田さんが担当しているんですか?

森田 サビは僕が考えましたね。

森田美勇人(B, Vo) 森田美勇人(B, Vo)

──ダンスもこれまでの7ORDERにない妖艶な感じですね。

森田 曲調とグルーヴ感を意識して、キャッチーさと妖しさを考えながら作ってみました。

安井 歌詞のまんまのような、アダルトな雰囲気のダンスだよね。

阿部 求愛的というか、異性へのアピールという感じのダンス。マイケル・ジャクソンみたいな。

長妻 MVもクラブをイメージしたような感じだよね。

──MVはエフェクトが多く用いられていて奇抜な雰囲気があります。皆さんがVRゴーグルを付けるところから映像がスタートして……。

安井 マネキンがVRゴーグルを付けてトリップした世界を描いています。監督さんがアイデアをくださって。

諸星 監督さんの曲の解釈が面白いなと思いました。さなぴーのだんだんだるくなっていくような思惑が伝わっているようで。リズムに乗せて、「気持ちいいな。ずっとこれが続けばいいのに」みたいな……。

安井 それをストーリーに落とし込んでくれたんだよね。

萩谷 マネキンが娯楽にのめり込むという。

安井 最初にMVのイメージを考えるとき、モロとながつ(長妻)は「欲望のままにファッションを楽しむ」って言ってたよね(笑)。

長妻 難しかったんだよ(笑)。

諸星 7ORDERの中で一番ファッションを楽しんだことがない2人なのに(笑)。

──今回のように楽曲、ダンス、衣装で1つの世界観を作り上げるというのは、音楽、アート、ファッションとジャンルレスな活動を掲げているエンタテインメント集団・7ORDERだからこそできることなのかなと。手応えがあったのでは?

安井 あー、確かにいろんな要素を絡めて、7ORDERらしい作り方ができたような気がします。

森田 グループとしての可能性が広がったというか。今までは「7ORDERとしてこうしたい」と挑戦してきたんですけど、今回は7ORDERとは接点がなかったアーティストの方々と一緒にアイデアを揉んで、そのイメージをちゃんと作品に落とし込めるかというところを実験できたのはけっこう大きかったです。今後もいろんな形で戦っていけるだろうなって。

──新しい7ORDERの可能性を見せてくれた曲なんですね。

安井 混ざれる強さってあると思っているんです。美勇人がアートで作り出した世界を軸に、そこに対してさなぴーが音楽を考えてくれて、全体をみんなで考えて、みたいな。さらにそこにGround Yさんがいて、アイデアを持ってきてくれる監督さんがいて。いろんなジャンルの人たちが集まって1つのプロジェクトとして、音楽、映像、ファッションにイメージを落とし込んでいくのは7ORDERらしいなと思います。

諸星 ファンの人は「&Y」のMVを観て、これまでにない感じでびっくりしたと思います。そういうふうにこれからもいい意味でどんどん皆さんを裏切っていけたら、お互いに楽しいかなって。

諸星翔希(Sax, Vo) 諸星翔希(Sax, Vo)

美勇人がイメージに重なった

──真田さんが作詞作曲した楽曲についても伺わせてください。「Love shower」は真田さん主演の舞台「27 -7ORDER-」の曲ですが、7ORDERで歌うことを想定して作った曲という認識で合ってますか?

真田 「Love shower」はそうですね。

──この曲は森田さんをイメージして作られた部分もあるそうですが。

真田 もともとある人から「愛は注ぐだけ。見返りは求めちゃいけないよ」という言葉を聞いて、そのときに「シャワーみたいだな」と思ったんです。それで気付いたら「Love shower 愛のシャワー」というフレーズを口ずさんでて、「あ、これで1曲作ろう」と思って。Aメロ、Bメロは街で人が裸足で踊ってる光景が思い浮かんで、そこに美勇人が重なったんです。美勇人だったらどういうふうに新宿の街を練り歩くかなって。

森田 新宿なんだね(笑)。

真田 新宿の伊勢丹のところから歌舞伎町のほうに向かって、どんどん服を脱ぎながら裸足で練り歩いていくんですよ。最初はめっちゃ着込んでるんですが(笑)。

──2番のBメロの最後に「あるがままに踊るから」という歌詞がありますが、そのあとのサビは本当にこの歌詞のように開放的な感じがありますよね。Aメロの「他人と比べて 個性もないから」「真っ暗な部屋の中 ただただ一人だった」というところから、まさに服を1枚ずつ脱いで自由になっていく……。

真田 美勇人っぽいなあというイメージでプランニングしていきました。美勇人って、基本的に自分に自信がないんですよ。ただ、踊ってる最中は自信家に見えるんです。

長妻 確かにね。

真田 あの踊ってるときの一面が、サビの「Love shower LaLaLa 愛のシャワー」というところに出ているんじゃないかな。あと歌詞の面では、心の弱さが全面的に出てるのに「降り注ぐ雨のファンファーレ」とか言葉がカッコつけてるところに美勇人らしさがあると僕は思っています。

──森田さんご自身は、この曲についてどういう印象を持っていらっしゃるんですか?

真田 そういう感じで考えたことないでしょ?

森田 (笑)。

真田 もっと言えば、この曲のイメージは「雨に唄えば」の……。

森田 ああ、そんな感じ!

真田 僕、前に舞台「雨に唄えば」を観に行ったんですよ。舞台上で主役のアダム・クーパーが雨に打たれながら「SINGIN' IN THE RAIN」を歌っていて。街灯につかまってぐるぐる回って、水たまりをパシャってやるのを観て、「これ、美勇人がいつかやったらいいのに」と思っていたんです。そういうイメージで書いているところもあります。

森田 この曲、すごく好きなんです。さなぴーの曲って、心が洗われる感じがします。

さなぴーが僕らの代弁者

──同じく舞台「27 -7ORDER-」の楽曲「27」にも言えますが、真田さんが作る曲には心の殻を剥がしてくれるような力がありますよね。温かくて優しくて、純粋で等身大で、バッドエンドに終わらない曲が多いと思うのですが、どうしてそういう曲が多いんでしょう?

阿部 ハッピーエンドの作品が好きなんですかね?

真田 というよりは、単純に曲を自分の子供だと思ってるからかな。

安井 幸せにしたいんだね。

真田 僕は何事も「暗い」って言いたくないというか。「つらいときこそ笑え」という、教えみたいなものが自分の中にあるので。

真田佑馬(G, Vo) 真田佑馬(G, Vo)

安井 さなぴーの曲ができあがって歌うと、「あ、こういうことを俺も言いたい」ってすごくさなぴーの言葉に同調するというか、自分の心にマッチするんです。それはやっぱり一緒にいるからこそ、どこかでさなぴーの感覚に近い部分を共有してるから。書いてるのはさなぴーなんだけど、この曲を書いてる人と一番近い感情で歌えるのは、たぶん僕たちメンバーなのかなという。でも、僕がすごいなあと思うのは……これを人に伝えようと思って曲にするのって、自分だったらすごく怖いと思うんです。

阿部 隠してる感情を知られたくないよね。

長妻 うんうん。

安井 そういうふうに自分の弱いところを言葉にできるのって、すごく強いなと思って。さなぴーが僕らの代弁者になってくれているかもしれないです。7ORDERには意外と口下手な人が多いんですよ。僕らはYouTubeで7人それぞれの誕生日をお祝いする企画をしていて、この前ちょうど1周したんです。1人ずつ動画を観ていくと、もちろんみんな「ありがとう」と喜んでるんですけど、やっぱりどこかで恥ずかしがって、照れ隠しをしているんですよ。でも、さなぴーだけは120%喜んでるんです。「やったー!」みたいな。

──全力で素直に喜べるという。

阿部 それってすごいなと思うんですよね。どうやってできるんだろうって。

安井 ほかのメンバーはけっこうカッコつけちゃうというか。

真田 俺だってカッコつけるときは全力でカッコつけたいけどね(笑)。

安井 (笑)。でも、7ORDERでなぜさなぴーが曲と詞を書いてるのかが、あの誕生日の動画にけっこう表れてる感じがする。もちろんさなぴーが曲作りに対してすごく努力をしてるというのが大きいんですけどね。

──自分の弱さを歌詞でさらけ出すことに対する恐れみたいなものは、真田さんの中にないんですか?

真田 いや、めっちゃありますよ。曲を聴かせるときなんていつも怖いです。メンバーにどう思われるんだろうって。レス遅いなあって、LINEに既読がついてるか逐一見ます。1、2、3、4、5、6……。

阿部 ここで言っておきたいんですけど、レスが遅いのは、家でちゃんとスピーカーで聴きたいからなんです!

真田 本当に!? 次の日の朝まで返ってこなくて、寝れないときとかありますもん。みんなの心にヒットしてないのかなって。

阿部 みんなゆっくりスピーカーで聴きたいんですよ。

長妻 そうそう。

諸星 細かいところをちゃんとしたスピーカーで聴きたい。

真田 俺は一生懸命萩ちゃんになりきってドラムを叩いたり、美勇人の感じをマネしてベースを弾いたり、仮歌も「ここはこの人が歌うだろう」と想像しながらそれっぽく歌ったり、がんばってるんですよ……。そのあとのアレンジに関しては、みんなに「はい、どうぞ。みんな好き勝手やっていいよ」って委ねてるんですけど。

安井 でも今後はさなぴーが「こういうふうにして」ってみんなに全部言ってみるパターンも、俺はやってみてもいいのかなって側から見てて思う。さなぴーは優しいからあんまり言わないけど、作ってるときにすでにそれくらい見えてるところがありそうだから。