目指すはハイパー“カオス”ポップ
──アルバムの前半5曲は狂気的な面が出た曲で固められていましたが、6曲目のアンビエントな「moonlake」から雰囲気が変わりますね。この曲もgu^2さんとの曲です。
gu^2とは日本のサウンドにも海外のサウンドにも寄せすぎず、いいバランスの曲を作りたいよねと話していて。その中から生まれた曲ですね。gu^2に参加してもらった3曲の中でも一番音数が少なくてきれいな曲で、オートチューンを使わずに素の声を生かして歌いました。この曲をライブで披露するときはちょっと面白いパフォーマンスをしようと思ってるんで、そこも楽しみにしてほしいですね。
──もうライブパフォーマンスについても考えてるんですね。楽しみです。アルバムの中盤には3月に配信されたEP「UNDEAD CYBORG」から「幸福論」と「Sugar Junky」が収録されています。この「UNDEAD CYBORG」はかなり短期間で作られたと聞きました。
はい。急にいっぱい曲ができちゃった時期があって、1週間ぐらいで作りました。アルバムのリリースも決まってたのに「すぐリリースしてください!」って頼んで出してもらった、完全にノープランの衝動EPです。私は制作についても波があって、できるときはパーッと何曲もできるんですけど、できないときは1、2カ月なんもできない、みたいな感じなんですよ。
──「UNDEAD CYBORG」はハイパーポップを取り入れたサウンドの作品で、「Sugar Junky」はSpotifyの公式プレイリスト「hyperpop」にも選出されました。4s4kiさんについてハイパーポップのアーティストとして名前が挙がることも多いように思いますが、ご自身はハイパーポップについてどのように捉えていますか?
ジャンル分けできないような音楽が集まっていて、すごく面白いシーンだと思ってます。ハイパーポップという言葉が生まれる前から、PC Music(宇多田ヒカル「One Last Kiss」にコ・プロデューサーとして参加したことでも話題のA.G.クックが設立したレーベル)は好きだし、ルーツとしてもあると思います。それを自分なりに出したのが「UNDEAD CYBORG」なんですけど、私が目指しているところを言葉にするなら「ハイパー“カオス”ポップ」かな。ハイパーポップを通りつつも、それを超えたカオスさを出していきたいと思っています。
──なるほど。Gigandectさんとコラボした9曲目の「OBON」は、まさにカオスというか、勢い重視な感じでライブで盛り上がりそうだなと思います。
ですよね。ギガデクはしょっちゅう遊んでる友達なんですけど、遊んでるときもよく音楽の話をしていて。「ハウスっぽい曲を作ろう」という話からこのトラックができました。
──「お母さんはカンカン NHKで泣いた亀の産卵」とか韻を踏んだナンセンスな歌詞も面白くて。
亀の産卵とか見たことないし、自分でも意味はわからないですけど(笑)、気持ちいい音の組み合わせと連想ゲームでできました。お盆の曲です。
居場所がない人たちに向けて歌いたい
──「OBON」のように遊び心あふれる歌詞の曲がある一方、アルバム後半にはメッセージ性が強い繊細なリリックの楽曲が続きます。4s4kiさんと数多くの曲を作っているmaeshima soshiさんがトラック制作に参加した「UNICORN」は、リスナーのコンプレックスを優しく包み込んでくれるような曲です。
この曲はアルバムの中で最初にできました。「欠けるもの」という曲(2019年9月配信)の中に「角が折れたユニコーン」という歌詞があって、そこから連想して。角が折れたユニコーンって、ただの馬じゃないですか。自分の武器をなくした没個性的なイメージなんですけど、それでも誇りを持って生きることを歌っています。コンプレックスは誰にでもあるものだけど、自分の理想が必ずしも正解なわけじゃないし、無理に改善しなくていいと思うんです。ありのままを受け入れなきゃいけないなって。
──ありのままを受け入れる、それぞれの違いを肯定するというメッセージは、KOTONOHOUSEさんとコラボしたフューチャーポップ「STAR PLAYER」にも共通するところですね。
私がアーティストとしてやりたいことの1つとして、居場所がない人たちに向けて曲を書きたいということがあって。生きづらさが生まれる原因って、それぞれの環境とか居場所にあると思うんですよね。スマートデスとコラボした「ALICE」も家庭とか会社とか学校とか、そういう1つの世界に縛られる苦しさを歌った曲で。自分の小さい世界だけでなくて、もっと視野を広げて、ほかの場所に行けたら、自分自身を変えることができるのになあって思うし。私も大人になってから新しい世界をどんどん知ることができたんです。だから、今1つの世界に縛られてる人たちも、その世界だけじゃないことに気付いてほしい。そういう気持ちを込めています。
──そして最後の「kkkk」は大切な人に向けた愛が歌われています。タイトルはどういう意味なんですか?
これは内緒です(笑)。けっこうマイルドにはしたんですけど、この曲はかなりパーソナルな内容なんですよ。だから本当はリリースもしない予定だったんですけど、すごくいい曲になったので、やっぱり聴いてもらいたいなと。アルバムで1曲だけ異色な感じで、カタカナ名義のときのアサキ感があると思うので、その頃の私を好きな人たちにも聴いてもらいたいですね。精神的には一番落ち着いていて静かな曲なので最後に持ってきました。アルバムは暗く始まって最後に救われるストーリーになっています。
初ワンマンの次が「フジロック」
──アルバムの初回限定盤には、4s4kiさんの誕生日である3月11日に開催されたワンマンライブ「4444年」から「クロニクル」のライブ音源も収録されています。
最初は弾き語りの音源を収録する予定だったんですけど、このライブ音源があまりにもよくて。ライブ音源をリリースするのはこれが初めてで、新鮮だと思うし、「こんなに迫力があるんだ」ってライブに興味を持ってもらえたらいいなと思いますね。
──これが初めてのワンマンライブだったんですよね。いかがでしたか?
ファンの子たちの熱量も再確認できてうれしかったし、悔いのないライブができて、本当に楽しかったですね。めちゃめちゃ気合いを入れて準備したライブだったので、その後1カ月くらいは喪失感がすごくて、しんどかったくらいです。
──それほど楽しかったなら、またすぐにライブをやろうとは思わなかったんですか?
ライブはすごく好きだけど、しっかり準備したからこその感動があるし、ガンガンやるものでもないのかなってことをワンマンのときに思ったんですよね。昔はスタジオに入って練習するようなこともなくライブしてたんですけど、入念に計画したワンマンライブを初めてやってみて準備の重要さがわかりました。カッコいいのをドーンと一発やりたいし、頻繁にライブがないからこそ、お客さんの側にも気合いを入れて観てほしいなって。「ポケモン」で言えばミュウ的な立ち位置になりたいです(笑)。
──なるほど。8月には「FUJI ROCK FESTIVAL '21」への出演も決定していますが、初ワンマンの次が「フジロック」ってすごいですよね。
めちゃめちゃうれしいですね。「フジロック」には観客としてもずっと行ってみたかったフェスだったんですけど、アーティストとして行けることになって。
──ワンマンライブのようにたくさんゲストを迎えるんですか?
いや、DJのギガデクと私だけですね。面白いライブにするので、とにかく当日を楽しみにしててほしいです。
──はい、とても楽しみです。「フジロック」を終えた先、アーティストとしてどのように活動していきたいと考えていますか?
ずっと音楽で食べていきたいし、息の長いアーティストでありたいですね。そのためには自分のスキルをもっと磨かなきゃなと思うし、永遠に成長し続けて進化していきたい。終わりは見えないです。