4s4ki|目指すはハイパーポップを超えたカオス

強烈な世界観を持つ海外アーティストとのコラボ

──メジャーデビューアルバムとなる「Castle in Madness」は、「『おまえのドリームランド』の進化系」という言葉通り、パペット、ジァニ、スマートデスといった海外勢ともコラボして、さらに幅の広がった作品になっています。

はい。本当に過去最高の作品だと思っていて、全曲シングルカットできるくらい気合いが入っているので、通してしっかり聴いてほしいですね。

4s4ki「Castle in Madness」“初回限定狂気ノ飛出絵本仕様”ジャケットイメージ

──アルバム初回限定盤のジャケットは、作品の世界を具現化した“城”が飛び出す絵本となっていて、世界観にも相当なこだわりがあるようですが、タイトルの「Castle in Madness」にはどのような意味があるんですか?

「アリス マッドネス リターンズ」っていうゲーム(2011年に発売されたアクションアドベンチャーゲーム。「アリス イン ナイトメア」の続編)がめっちゃ好きで、タイトルはそこからインスパイアされてるんですけど、“城”はアルバムを表していて。今回すっごくダークな曲と明るい曲があって、両極端でカオスなんです。一見きれいだけど中は真っ黒、そういう狂った城というイメージですね。

──なるほど、アルバムの前半は攻撃的な楽曲が続く一方、後半は優しい曲が並ぶ二面性がありますよね。制作はどのように進めていったんですか?

海外アーティストとのコラボが決まったので、そこを軸にして進めていきました。もともと自分がファンで「いつか一緒に曲をやれたらな」くらいに思っていた人たちなんですけど、メジャーデビューのタイミングで実現することができて。

──どういうきっかけだったんですか?

ジァニちゃんは「I LOVE ME」を聴いて気になってくれたみたいで、私のInstagramにコメントして、フォローしてくれたんですよ。それでフォローバックして仲よくなりました。スマートデスもインスタかな? やっぱりSNSがきっかけでした。パペットは、私がrinahamuとコラボした「NEXUS」という曲を気に入って「For 4s4ki」というタイトルでリアレンジカバーしてくれたんです。私と仲のいいトラックメイカーのgu^2がパペットと仲よくて、彼に音源を送ってくれたところから関係性が生まれて、一緒に曲を作る流れになりましたね。

──4s4kiさん本人のつながりだったんですね。海外アーティストとのコラボはこれが初だと思いますが、いかがでしたか?

曲はわりとトントンできましたね。パペットとスマートデスは、トラックを向こうが用意してくれたので、自分の作りたいメロディの仮歌を送ったら「OK、カッコいい!」という感じの反応をくれて、相手もその上にさらにRECしてくれて。ジァニとの曲はIimoriさんとトラックを作ったんですけど、そのトラックに歌を乗せて投げたら「めちゃいい、やったるわ」的な返信が来てカマしてくれました。私は日本語で歌っているので、向こうがどう解釈してるかなとか不安もあったんですけどね。

──歌詞もそれぞれ4s4kiさんが歌っている内容と一貫性があるというか、テーマをちゃんと意識してくれているように思いました。

そうなんですよ。テーマについてはあくまでイメージしか伝えてないんですけど、もともと私が影響を受けた人たちでもあるので、美的なセンスがマッチしていたのかなと。

──違和感のないコラボでありつつ、各曲で皆さんインパクト抜群な登場の仕方をされていて。ジァニさんはMVでのジェットスキーにも驚きました。

意味わかんなくて最高でした(笑)。しかも、ジェットスキーに乗るのはこれが初だったらしくて。挑戦的ですよね。

──4s4kiさんは3人の中でも特にスマートデスさんのファンだったそうですが、どのあたりに魅力を感じていますか?

もうすべてですね。曲だけじゃなくて、ビジュアルやアートワークもすごくカッコよくて……なんだろうな、彼はずっと髪赤いんですよ。一貫したキャッチーなビジュアルで覚えやすいし、こういう人になりたいという気持ちがありますね。アーティストとして本当に尊敬しています。

──3人とのコラボで今後の活動に生かせるような気付きはありましたか?

めちゃめちゃありました。とにかくみんな自分の世界をちゃんと持っているということが大きくて、そのこだわりの強さに衝撃を受けましたね。私はどれだけ奇抜なことをやるかというような勢い重視のネットラップがルーツとしてあって、いろんなジャンルの曲を作っているので、正反対のようですけど、どの曲を聴いても「これは4s4kiの曲だ」とわかるようにしたいと改めて思いました。あとはボーカル処理のこだわり方とかもすごかったし、参考になりましたね。原型をとどめないくらいに壊すんですけど、地の声もしっかり生かしていて。

──4s4kiさんもここ最近の作品では、ボーカルにかなりエフェクトをかけていますよね。

エフェクターを使うことによって、ピッチだけを気にしなくて良くなって、声量を上げたり、歌い方を変えたり、リアルタイムにいろんなことができるようになったんですよね。エフェクターを一切使わない曲もあるし、ボーカルトラックの幅を広げられるので面白いと思っています。

精神がヤバかったときの日記

──海外アーティストとのコラボ曲の合間に収録されている「m e l t」は、笑い声から始まる狂気的なトラップで、今までの4s4kiさんにはないような曲ですね。

これはテンション的にバカ暗くて弱っていたときにできた曲ですね。精神が不安定だったのがそのまま歌詞にも表れていて、この頃ヤバかったんだなっていうのをひしひしと感じます。私の曲は全部日記なんですよね。

──先ほどご自身でもおっしゃっていましたが、4s4kiさんは、生きづらさやここから逃げたいというような気持ちを歌った曲が多いですよね。そうした楽曲からすごく繊細で鋭い印象を持っていたんですが、今日はとても明るくお話しいただいて、ちょっとギャップがありました。

波がすごいんですよね。1人で考え込んで「ダメだ……」ってなっちゃうときがあって。それはそれで曲ができることもあるからいいんですけど。

──なるほど。「m e l t」のトラックはgu^2さんとの共作で、gu^2さんのツイートによれば、制作にあたって、かなり話し合ったそうで。

gu^2はめっちゃ多才で、今回3曲に参加してもらってるんですけど、どれも全然違う感じなんですよね。「m e l t」に関しては、ベースとドラム以外の上ネタの部分をどうするか、けっこう話し合いました。最初はかわいくて明るい上ネタだったんですけど、歌詞がダークだから最終的に上ネタもすごく暗い感じになりました。一発撮りしたMVも含めてゴシックホラーなイメージ。攻撃力があるので強くなりたいときに聴いてほしい中二曲です。

──この曲と6曲目の「moonlake」は、 チャーリーXCXなども手がけるジェフ・スワンがミックスエンジニアを担当したそうですが、違いは感じましたか?

はい。ミックスの時点でもうマスタリングしたような音の厚みと立体感があって。全然違う聞こえ方になって感動しました。

念願の釈迦坊主

──5曲目には4s4kiさんにとって縁の深い釈迦坊主さんをゲストに迎えた「天界徘徊」が収録されています。楽曲でコラボするのはこれが初めてですか?

はい。出会った頃から挨拶代わりに「一緒に曲作ろう」と言い合うような感じだったんですけど、5年越しくらいでようやく作れました。

──メジャーデビューアルバムには、4s4kiさんにとってのルーツである釈迦さんを絶対迎えたいというような気持ちがあったんですか?

もちろんずっと一緒に曲を作りたいと思っていましたけど、今作を作るにあたっては最初から考えていたわけではないんです。でも海外勢に続いて釈迦さんが出てきたら面白い!と思って。これはもともとスマホゲームに提供するために作って、気に入っていたけどボツにしたトラックがあって、それを掘り起こしてブラッシュアップしたんです。それで釈迦さんと遊んでるときに「ヤバい曲できました、これは釈迦さんしか乗れないっすよ」って聴かせたら「めっちゃいい」と言ってくれて。

──釈迦さん自身の楽曲とも近い世界観のトラックですよね。

海外勢と同じで、私はもともと釈迦さんのファンだったし、共通点が多いんですよね。周りからも性格が似てるみたいに言われるし。釈迦さんはたまに何言ってるかわかんないようなところもあるんですけど(笑)、言いたいことはだいたい理解できる感じ。好きなゲームやアニメ、映画とか、いいなと思うものも一緒で。食の好みも近くて、ご飯に連れて行ってもらうこともあります。音楽で言えば、2人ともロシアの暗い曲にハマってて。中でも私はIC3PEAKというアーティストが好きなんですけど、「天界徘徊」にはその影響が出ていると思います。