ナタリー PowerPush - 1966 QUARTET×槇原敬之

クラシックとポピュラー音楽のヒミツの関係

女性クラシカルユニット・1966 QUARTETが3作目のThe Beatlesカバーアルバム、その名も「Abbey Road Sonata」を発表した。今作は名盤「Abbey Road」をソナタ形式で再構築した「Abbey Road Sonata」を筆頭に、The Beatles楽曲をクラシックの手法で料理した13トラックが楽しめる。

この特集では発売を記念して、1966 QUARTETと槇原敬之の対談をお届け。槇原は花井悠希(Violin)とフジテレビ系「新堂本兄弟」での共演をきっかけに知り合い、1966 QUARTETのアルバムを愛聴するようになった。対談の場では、槇原から1966の魅力やクラシックのよさが語られ、1966は新たに見つけたThe Beatles楽曲の奥深さや、今作のレコーディングを行ったアビーロードスタジオのエピソードを披露。クラシックとポップス、遠いようで近い2つの道をそれぞれ極めるプロが、互いにリスペクトを持ち合いながら意見を交わした。

取材・文 / 鳴田麻未 撮影 / 宮腰まみこ

僕は一方的にすごくいいなあと思ってました

1966 QUARTETと槇原敬之の対談の様子。

槇原敬之 いやー、今日はホントうれしいです!

──まず2組の接点から触れておくと、槇原さんと花井さんが「新堂本兄弟」でレギュラーメンバーとして共演したことからお知り合いになったそうで。

花井悠希(Violin) そうなんです。収録のとき、登場していく順番が前後で。

槇原 ね。それで待ってる間ずっとしゃべってたんだよね。花井ちゃんはいつもすごいかわいい衣装を着てるんで、「靴はそういうふうになってるんだ」「脚がちょっとセクシーだね」みたいな話を。

花井 セット裏で毎回してましたね(笑)。

槇原 もちろん彼女の弾くバイオリンも素敵だったんで、僕は一方的にすごくいいなあと思ってましたね。

花井 ありがとうございます。

──花井さん以外の3人は今日が初対面ということで、この場を借りて自己紹介していただけますか?

松浦梨沙(Violin) リーダーをしてます、バイオリンの松浦梨沙です。

花井 このグループはみんなまとめるのが苦手なタイプなので、しっかりきちっと締めてくれる存在です。

林はるか(Cello) いつも連絡を回してくれるし、コンサートのプログラムも毎回やってくれるんですよ。

槇原敬之

槇原 へー! 先生みたい。ある種1966の雰囲気を作ってる人かな、みんなに伝わるように。

松浦 雰囲気はむしろ花井とかで、木で言うと葉っぱ。私は幹ですね。じゃあ次、どうぞ(花井に目をやる)。

花井 花井悠希です。

槇原 改めて言うとちょっと照れるね(笑)。

花井 そうだなー、このグループでどうでしょうね……(笑)。

江頭美保(Piano) みんな、この天真爛漫さがすごい好きで。

槇原 そうだよね。僕も花井ちゃんの一番気に入ってたところが、少女のような感じを持ってるところ。

松浦 そうなんですよ。何か悪いことをしても、この人がやったら悪いと思えないみたいな。何やってもしゃーない、花井ちゃんやからねって誰もが思えるっていう。

槇原 そうそう。そこはね、素敵なとこだと思う。

 リーダーと同じ楽器なんですけど、性格も全然違くて、キレキレで元気のいいしっかりした梨沙さんとは対照的なんですよ。おっとりした感じで情緒的。

槇原 うん、確かに。伸びやかですよね。そして……。

江頭 ピアノの江頭美保です。

槇原 もうホントすごい上手ですよね。素晴らしい。

江頭 いえいえいえいえ!

松浦 全力で否定してる(笑)。

槇原 今日はちょっとそれについていろいろ聞こうと思ってたんです。

──ピアノ弾き同士として。

槇原 いや、僕はやめてください!(笑) もうほんとにごめんなさーい!

江頭美保(Piano)

江頭 なんでですか(笑)。めちゃくちゃピアノ弾いてるじゃないですか!

槇原 弾けてないです! 一番長く続いた楽器がピアノで、しょうがなく弾いてるだけなんです。憧れますね、ああいうピアノを聴くと。

江頭 ありがとうございます。うれしいです。

槇原 このバンドでピアノって意外と大事なんですよね。曲の雰囲気を決めていて。

花井 そうなんです。彼女自身もみんなを癒しまとめてくれる性格っていうか。彼女(松浦)はキュッと締めてまとめるタイプで、ちゃんと見て冷静な判断をする。彼女(江頭)はみんなキャラが立ってる中で、癒しという誰も持ってない部分で……。

槇原 持ってないんだ。さみしいじゃん(笑)。

1966全員 あはは(笑)。

槇原 楽器の特性かもね。全音階を網羅する感じが、なんかそういうところにつながってるのかも。

──では最後に林さん。

 チェロの林はるかです。

松浦 うちの音楽監督です。はるちゃんはほんとにしっかり弾いてくれるし、揺るぎないというか。この子に付いていけば大丈夫。なんとかなる。

槇原 あー、じゃあバンドで言うとベーシスト的な?

 そうですね。下で支えて。

槇原 この人がグルーヴを作る?

松浦 そうなんです。で、それに乗っかっていく。だからはるちゃんがズッコケたときの全員のズッコケ方もひどい(笑)。どうすんのこれ!みたいな(笑)。

1966 QUARTETと槇原敬之。

槇原 そんなはるちゃんが緊張するときってどういうときなの?

 いつも緊張してるんですけど、でも極力表には出さないようにしてて……。

花井 違う。私たちの緊張からしたらそんなのは緊張とは呼ばない!

 なんかたぶん……心に迷いがあるとき。

松浦 あはははは!(笑) どうした!?

槇原 でもわかる!(笑) 同じ曲を演奏するにしても迷う日ってありますよね。僕もあるよ!

ニューアルバム「Abbey Road Sonata」/ 2014年6月18日発売 / 3240円 / 日本コロムビア / COCQ-85069
収録曲
  1. Abbey Road Sonata:1st movement
  2. Abbey Road Sonata:2nd movement
  3. Abbey Road Sonata:3rd movement
  4. Abbey Road Sonata:4th movement
  5. Yesterday
  6. A Hard Day's Night
  7. All My Loving
  8. Please Please Me
  9. Penny Lane
  10. Lady Madonna
  11. Across The Universe
  12. The Long And Winding Road
  13. Hey Jude
1966 QUARTET(イチキュウロクロクカルテット)
1966 QUARTET

The Beatlesの初代担当ディレクター・高嶋弘之が送り出す、クラシックのテクニックをベースに洋楽をカバーする女性カルテット。現メンバーは松浦梨沙(Violin)、花井悠希(Violin)、江頭美保(Piano)、林はるか(Cello)。The Beatles来日の年である「1966」をユニット名に冠し、2010年11月「ノルウェーの森 ~ザ・The Beatles・クラシックス」で日本コロムビアよりCDデビュー。2011年11月にQUEENをカバーした2ndアルバム「ウィ・ウィル・ロック・ユー ~クイーン・クラシックス」を発売したのち、メンバー交代を経て2012年11月にマイケル・ジャクソンをフィーチャーした「スリラー ~マイケル・ジャクソン・クラシックス」を完成させる。2013年6月、再びThe Beatlesに回帰した4thアルバム「Help! ~Beatles Classics」を発表。これが好評を博し、2014年6月に3作目のThe Beatlesカバー集「Abbey Road Sonata」をリリースした。

槇原敬之(マキハラノリユキ)

1969年大阪府生まれのシンガーソングライター。1990年にデビューし、1991年の3rdシングル「どんなときも。」がミリオンセラーを記録。その後も「冬がはじまるよ」「もう恋なんてしない」「僕が一番欲しかったもの」などヒット曲を連発し、2004年にはアルバム総売上枚数が1000万枚突破の快挙を遂げる。2010年11月には自主レーベル「Buppu Label」を立ち上げ、リリースを続けている。2014年は1月にカバーアルバム「Listen To The Music 3」、2月にシングル「Life Goes On~like nonstop music~」をリリースした。また他アーティストへの楽曲提供も多数あり、代表作はSMAPの「世界に一つだけの花」など。