また旅に行きたくなるエンディング曲を
──Yuさんが「18TRIP」に楽曲制作に参加することになったきっかけを教えてください。
僕はもともと「18TRIP」と同じチームがやっている「A3!」に関わっていたので、それもあってオファーをいただいたんだと思います。今回はゲームの立ち上げから参加させてもらったんですが、そういう段階から携わるのは初めてだったので、まだ何もないところから一緒にゲームに色を付けていくことに責任を感じながらも、すごくワクワクしました。
──ゲームの設定自体にはどんな印象を持ちましたか?
僕はもともと旅行が好きで、いつか47都道府県全部を回りたいと思ってるような人なので、旅行がテーマのゲームに携われるのはとてもうれしかったです。
──メインエンディング曲「Shall we travel?」は、どんなイメージから制作がスタートしたんでしょう?
ゲームの終わりに流れる曲だけど、前向きに終わって「また旅に行きたいな」と思ってもらうことが大事だと考えていました。なので、旅で感じる切なさや寂しさを込めたかった。あと総勢20名で歌う曲なので、パンチを効かせたメロディというよりは派手ではないメロディにしてキャラクターたちが歌唱で壊していくアプローチがいいかなと思いました。
──まさにまた旅に行きたくなる温かさやにぎやかさのある曲になっていますが、曲先で書いたんですか?
曲先ですが、0.5歩先ぐらいですね。曲ができて少し歌詞を付けてまた曲の続きを作るみたいなやり方で進めていて。
──作詞はvagueのメンバーであるshieさんとの共作です。shieさんと相談しながら作詞を進めていったんですか?
はい。shieも旅行が好きなんですよ。この曲を作り始めた時期に共通の旅行好きの友人と一緒に遊んでいて、その友人が旅行の話をたくさんしてくれたんです。大変だったことがあっても、笑える話として人に話すんですよね。「旅行をすると誰かに話したくなるものなんだな」と思って、自分の中にあった「また旅に行きたい」と思えるような前向きな曲っていうこととつながりました。あとは「意を決して旅行に行くというより『近場でいいからちょっと旅行してみない?』みたいな感覚になれる曲がいいな」っていう話をshieにしたら、彼女が「Shall we travel?」というタイトルと歌詞の大枠を持ってきてくれて。僕がそれに合わせて作品のカラーを加えていくという流れでした。
大人数でもキャラの声が聞こえてくるように
──総勢20人が歌う曲ということで、どんなことを意識をしましたか?
最近、大勢で歌う曲を作る機会が多いんですが、総じて心がけていることは、1曲を20人が歌うのではなくて、20曲が1曲になるっていうことですね。小さい差に思われるかもしれませんが、僕としてはすごく大事なことなんです。
──1人ひとりの個性を大事にするということですか?
そうですね。「Shall we travel?」の場合、HAMAツアーズのみんなが歌う「Shall we travel?」という認識になりがちだと思うんですが、僕としては大黒 可不可と誰と誰と誰と誰が歌っている曲、というような認識なんです。そういう認識で曲を書いていくと、「どこでどのキャラを目立たせようか」ということがどんどん見えてくる。20人いたとしても、できるだけ推しのキャラの声が聞こえてくる方がいいじゃないですか。個が見えたほうがいいと思いながら作っています。
──それを達成するのは技術的に大変なことなんでしょうか?
そうですね。はしゃぐキャラはいろいろとやってもらえるんですが、中には性格的に叫べないキャラもいるので、そこを目立たせるには技術がいるかもしれないです。そういうキャラには声を張らせたくないし、ボソッと言ってもらいたい。ライブをクリエイトする感覚に近いかもしれません。全員で歌っているけど、飛び跳ねてるキャラもいれば、クールにしているキャラもいる。そういう光景が曲からも見えてほしいんですよね。そのためには歌割りやレコーディングのやり方にも工夫が必要です。
──歌割りはどういうふうに決めていったんでしょう?
僕が希望を出しました。「HAMA NICE TRIP」という掛け声はできるだけみんなが好き勝手できるメロディにしました。サビ前の「Shall we travel‼」も同じくで、なるべく音も消してみんなにわちゃわちゃしてもらってばらけさせる。「R1ze!! Day2!! Ev3ns!! L4mps!!」のところもそうです。20人いるとどうしてもソロパートを作るのが難しいので、なるべく音が少なくなったときに「みんな出ておいで」という気持ちで歌割りは考えていますね。
──声優さんたちの歌唱が入った「Shall we travel?」の音源を聴いたときはどう思いましたか?
歌入れは大変でしたし、プレッシャーもあったので、完成したものを聴いたときは感動しましたね。まさに1つ旅を終えてまた次に行こうという気持ちになりました。20人の声優さんたちが、ちゃんと楽曲を理解したうえでレコーディングに臨んでくれたんです。だからこそレコーディングにはかなりこだわりました。どこまで崩すのか、どこまで歌わないでいるものかみたいなことは相当話し合いましたね。キーの問題もありますし、例えば掛け声ひとつとっても、元気に叫ぶということをベースに作ってはいるけれど、キャラ的にそこまで元気に叫ばないキャラの声優さんとはしっかり話して、微妙な塩梅を探りながらレコーディングしていきました。レコーディング現場に持ってきていただいたキャラクター表がすごく役に立ちましたね。そこに載っているキャラの表情を見て、「こういう表情をするんだったらもっと叫んでもいいんじゃない? メロディはもう気にしなくていいよ」というやりとりをしながらレコーディングを進めました。
──そのキャラがどんな人物なのかを理解したうえで、どこまではみ出してOKかというすり合わせを行ったんですね。
そうですね。真面目な方が多いので、皆さんちゃんと歌を歌ってくれるんですが、僕としては枠からはみ出してもらうのがポイントなんです。うまい歌を聞きたいというより、ちゃんとそのキャラが存在していた方が楽曲的にも歌的にもいいものになると考えています。だから、丁寧に歌うよりはキャラクターを全開に出してもらいました。
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社歌は異質でキャッチーなものに