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SAKANAMON「unique」ジャケ写

SAKANAMON unique

“違いを抱えたまま生きること”への確かな答えを内包した、新作ミニアルバム「kodomo to otona」リード曲

文 / 黒田降憲

タイトル通り「子供」と「大人」をコンセプトに据えた通算7枚目のミニアルバム「kodomo to otona」は、SAKANAMONならではの遊び心とユーモアをたっぷり織り交ぜ、子供らしい無邪気さと大人の現実を音楽で違和感なく絡み合わせた意欲作。ファンクやボサノバ、アンビエントからエスニックまで、曲ごとに音の表情を変える本作の最後を飾るのはリード曲「unique」だ。

疾走感あふれる痛快なパワーポップを骨格に据えつつ、グランジやヘヴィロックなどの影響も感じさせるザラついたギターサウンド。空へ抜けていくような浮遊感のあるメロディに乗せ、藤森元生(Vo, G)の素朴なボーカルと掛け合い気味のコーラスが重なり、荒々しさの中にも叙情性が光る。さらに、バンドならではの縦横無尽なアレンジと緩急自在のダイナミズムが曲展開にスリルを与え、ライブでも観客を熱狂させるエネルギーを蓄えている。

そうした荒々しくも開放感あふれるサウンドとは裏腹に、歌詞では極めて冷静かつ誠実に「個」と「社会」の関係を見つめている。「あなたが笑っても誰かは泣いてる / あなたが泣いても誰かは笑ってる」という冒頭のフレーズが示すのは、世界が常に誰かの感情と同期するわけではないという現実だ。そこから「当たり前の事が出来ないと駄目なのかい / 当たり前の事しか出来ないのは良いのかい」と、「普通」や「平均」を無自覚に価値基準としてきた社会の在り方へと疑問を投げかけていく。出る杭は打たれる──そうした同調圧力の構造を直視しつつ、この曲は安易な怒りや断絶へと向かわない。

「変わりはいないさ 僕は僕だけ / あなたは あなただけなんだ」というサビのフレーズは、他者との比較から自由になるための、静かで強い肯定である。さらに後半では、「その手を離したとしても 例えば僕は側にいる」と歌い、個を肯定することが孤立を意味しないことも示される。違いを抱えたまま、それでも誰かと並走できる。その距離感こそがSAKANAMONの優しさであり成熟だろう。子供と大人、その両極を往復してきた「kodomo to otona」は、最終曲「unique」によって「違いを抱えたまま生きること」への確かな答えを提示しているのだ。

SAKANAMON「kodomo to otona」Trailer

SAKANAMON「unique」
2026年1月21日(水)配信開始 / murffin discs
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作詞・作曲:藤森元生

SAKANAMON「kodomo to otona」
2026年1月21日(水)発売 / murffin discs
[CD] 税込2500円

SAKANAMON(サカナモン)

SAKANAMON

専門学校の同級生だった藤森元生(Vo, G)と森野光晴(B)が2007年12月に結成。バンド名には「聴く人の生活の肴になるような音楽を作りたい」という思いが込められている。2009年に木村浩大(Dr)が加入。2010年9月に1stミニアルバム「浮遊ギミック」、同年12月にビクターエンタテインメントより1stアルバム「na」をリリースした。2017年5月にmurffin discs内のレーベル・TALTOに移籍し、ミニアルバム「cue」を発表。結成10周年を迎えた2018年には、フェイクドキュメンタリー映画「SAKANAMON THE MOVIE ~サカナモンは、なぜ売れないのか~」を制作し、全国ツアー「延々々」を行った。2022年に7thアルバム「HAKKOH」、2024年3月に“ライブ”と“ラリー(回復)”をテーマにしたEP「liverally.ep」を発表。2025年1月に新作ミニアルバム「kodomo to otona」をリリースした。