ディン・ユーシーとポン・シャオランの芝居がマッチしている(小酒)
──ディン・ユーシーとポン・シャオランの息の合った掛け合いによって、寧鈺軒と聶桑榆はベストカップルとして視聴者から愛されました。特に相性のよさを感じた場面があれば教えてください。
小酒 酔っ払った聶桑榆がベッドの上で寧鈺軒に飛びかかるシーンは面白かったです。下手したら気まずくなるような場面ですけど、これだけコミカルにできたのは相性のよさゆえかと思います。それまで余裕ぶっていた寧鈺軒が、聶桑榆にキスされた途端、うぶな反応をするじゃないですか。押しが強くても嫌な感じのないポン・シャオランと、ディン・ユーシーの受けのうまさがマッチして、最終的に聶桑榆をす巻きにして部屋から追い出すところまで笑えました。
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島田 寧鈺軒と聶桑榆の関係性で言うと、赤い珠と青い珠のエピソードもすごくよかったです。
──まだお互いにツンケンしていた頃、珠を銀子(金銭)に見立てて「相手にいいことをしたら珠を1つもらえる。害を与えたら1つ没収。離縁する日に珠の数を精算する」というルールで始めた取引ですね。
島田 最初は珠の取り合いに笑っていたけど、のちのち“2人の約束”になっていくのが泣けました。徐々にラブラブモードになっていって、クルクル回りながら抱っこしたりするマンガっぽさもかわいらしかったですよね。
──話が進むうちに、このカップルをどんどん好きになっていきました。
小酒 よくある展開ではありますが、困難を乗り越えてこそ愛が深まるという共通認識ってあるじゃないですか。だから後半に2人の関係を揺るがす危機や波乱があっても楽しめました。スイカに塩を振ったらさらに甘く感じるみたいなことですよね。
島田 2人の愛を阻むものにハラハラして、どうにか解決できないかって、観ているこちらも一生懸命考えちゃう。そういう没入感が楽しかったです。
ライバル役のイー・ダーチェンにも注目(島田)
──サブキャラも濃い人物ばかりでしたが、お二人が気になったキャラクターやキャストは?
島田 袁朗 / 阿狼(えんろう / あろう)役のイー・ダーチェンですね。「夢幻の桃花~三生三世枕上書~」などの人気作で活躍してきましたが、今回はメインに匹敵する重要な役に挑戦していて、さらに見応えがありました。袁朗は誰が見ても結婚相手にぴったりのナイスガイで、私もこのキャラを推したいところですけど……今回は対する相手がディン・ユーシーだったので、寧鈺軒のほうを応援しました(笑)。聶桑榆をめぐって寧鈺軒と張り合うところがよかったですね。
小酒 イー・ダーチェンは、ヒット作に脇役としてたくさん出演していますよね。これから絶対に“来る”予感がします。私は、寧鈺軒に仕える鬼白(きはく)役のホー・チャンシーが気になりました。澄ました顔で毒舌ツッコミをするキャラがツボでした。あと背が高くて、主人公の隣にいるには無駄に存在感がありすぎる(笑)。
島田 そのコントラストもギャグっぽくて面白かったですね。
小酒 あと鬼白が侍女に変装するシーンがあって、こんな侍女いないだろ!っていうゴツさなんですけど、そこも本人の澄まし顔が笑えました。本人が意図しているかわからないけど、けっこうコメディが合うんだと思います。期待の若手ですね。
島田 注目のキャラだと、ワン・ズールイ演じる陶(とう)将軍には「まさか!」という驚きがいくつもありました。いくら幼なじみでも、“毒婦”と呼ばれる聶桑榆に心底惚れ込む不思議さだったり、闇落ち展開もあったり……。
小酒 ドS女にハマるドM将軍みたいな(笑)。中国ドラマって尻に敷かれることをひそかに喜んでいる男性キャラ、意外と多くないですか?
島田 いますね(笑)。
小酒 そういう意味では、中国ドラマならではの楽しめるキャラだと思いました。
島田 あとはジァン・カイ演じる檀(だん)王も印象的。「ゴッドファーザー」のドン・ヴィトー・コルレオーネのような凄味を感じました。猫をかわいがってるところも(笑)。もしかして、パロディだったとか?
小酒 狙ってる?と勘繰ってしまいますね。ジァン・カイは悪役をやっていたかと思えば、別のドラマでは優しいお父さん役だったり、いろいろな作品で見かける“イケオジ俳優”じゃないですか?
島田 本作でも若手俳優がたくさん出ている中、引き締め役として効いていましたね。
ポン・シャオラン=崖落ち?(島田)
──以前、小酒さんが“中国ドラマあるある”の1つとして「崖からやたら落ちる」と挙げていましたが、本作もまさに崖のシーンから始まります。本作の崖落ちはいかがでしたか?
島田 ポン・シャオランは今回崖から2回落ちますし、「東宮(とうぐう)~永遠(とわ)の記憶に眠る愛~」でも落ちていました。ポン・シャオラン=崖、みたいな……もはや“ポン・シャオランの崖落ち”があるあるになってもおかしくない(笑)。フワッとなる姿が美しくて映えるんですかね。
小酒 カメラワークもすごくなかったですか? 寄りと引きでグングン動いたり。シエ・ゾー監督はカメラマン出身なんですよね。「さあ崖落ちだ!」とドラマチックさを逆手に取ったような演出が面白くて、中国ではこれを「インド式カメラワーク」と呼んでいた人もいて笑ってしまいました。
──崖落ちにもいろいろ工夫があるのですね……。ほかに本作ならではの注目ポイントはありましたか?
島田 ディン・ユーシーの衣装チェンジがたくさんあったので、大満足です(笑)。ヒロインのポン・シャオランよりも、いろいろなスタイルで登場していたかもしれないですね。
小酒 衣装を手がけたのは「武則天-The Empress-」のチェン・ミンジェン(陳敏正)。だから素敵なスタイルが楽しめましたね。
島田 朝廷での朝服、船着き場での作業着、それにエプロンまで。「月光変奏曲」でもエプロン姿があったけど、今回も見られてよかった!
小酒 美術もかわいかったです。聶桑榆が開業したコスメショップの内装も乙女チックなキラキラした感じで。
島田 実際にありそうなお店でしたね。陳列の仕方だったり、アンバサダーの写真が飾ってあるのも。
小酒 時代劇でも架空の設定なので、衣装やインテリアに現代的なセンスを盛り込むのもアリというのが面白いです。
──ドラマの魅力をたっぷりお話しいただきありがとうございました! 目の肥えた中国ドラマファンもきっと満足できる作品ですね。
小酒 ディン・ユーシーが好きな人は絶対にハマると思います。そして時代劇と言っても現代的センスのあるラブコメなので、中国ドラマ初心者でも十分楽しめるはずです。ミステリーも物語の重要な柱なので、先の読めない謎や、衝撃展開が待ち受けるメロドラマが好きな人にもお薦めです!
島田 小酒さんのおっしゃる通り、ディン・ユーシーが好きで「花の都に虎(とら)われて」や「月光変奏曲」を楽しんだ人、ラブコメ好きな人、ライトテイストな作品を求める人は特に楽しめると思います。笑って泣けてスカッとするので、楽しい作品でパワーチャージしたい人にぜひ観ていただきたいです!
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プロフィール
小酒真由子(コサカマユコ)
フリーライター。アジアから欧米までドラマについて執筆。「韓国TVドラマガイド」(双葉社)にて「熱烈推薦!! 中華ドラマはこうハマる!」を、Cinem@rtにて「アジドラ処方箋」を連載中。ぴあMOOK「2023年 見るべき中国時代劇ドラマ」にて編集協力・執筆を担当した。
島田亜希子(シマダアキコ)
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆するほか、中文翻訳もときどき担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「アジア俳優名鑑」「中国エンタメニュース」を連載中。「中国時代劇で学ぶ中国の歴史」(キネマ旬報社)、「見るべき中国時代劇ドラマ」(ぴあ)などにも執筆している。
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