中国ドラマ「今宵、若様は恋におちる」特集 | ディン・ユーシーの真骨頂!ポン・シャオランと“ワケあり夫婦”演じたラブコメ時代劇はファン必見 ライター対談で太鼓判

中国ドラマ「今宵、若様は恋におちる」がU-NEXTで独占先行配信されており、DVDが11月3日より毎月順次リリースされる。

本作は「花の都に虎(とら)われて~The Romance of Tiger and Rose~」のディン・ユーシーと「東宮(とうぐう)~永遠(とわ)の記憶に眠る愛~」のポン・シャオランがダブル主演を務めたラブコメ時代劇。“毒婦”と呼ばれながら事故によりチャーミングな性格になった妻・聶桑榆(じょうそうゆ)と、そんな妻を不審に思いつつ惹かれていく侯爵・寧鈺軒(ねいぎょくけん)……冷え切っていた夫婦関係が変化していくさまを軽快に描く一方、後半には波乱の運命が待ち受ける。

この特集では、ディン・ユーシーのファンであるライター・小酒真由子と島田亜希子の対談により、本作の魅力を掘り下げていく。

取材・文 / 金須晶子

中国ドラマ「今宵、若様は恋におちる」予告編公開中

2つのドラマを観たような満足感(島田)

──「今宵、若様は恋におちる」は中国で配信前から注目度が高く、いざ配信が始まると、Weiboのドラマ影響力ランキングなど数々のランキングで1位を獲得しました。お二人も本作の評判は耳にしていましたか?

小酒真由子 もともとディン・ユーシーが好きで、このドラマにも期待していたので、リアルタイムで観ていました。中国ドラマはクランクアップしてから放送・配信まで期間が空くので、よく「待機ドラマの期待度ランキング」が発表されるんですけど、いつもランクインするぐらい注目されている作品でした。いざ配信が始まると、中国の視聴者も盛り上がって、みんなSNSでツッコミを入れたりしながら楽しんでいました。

島田亜希子 私も前評判のいい作品として注目していました。中国では2023年3月21日に配信が始まり、4月3日付けのデータランキングで時代劇ジャンル1位を獲得したそうです。この時期は話題作が多くて、本作の開始後、4月6日から始まったレオ・ロー出演のファンタジー時代劇「長月燼明(原題)」が大ヒットしたのですが、同じ時代劇ジャンルにおいて、本作も大変健闘したと思います。

左からポン・シャオラン演じる聶桑榆(じょうそうゆ)、ディン・ユーシー演じる寧鈺軒(ねいぎょくけん)。

左からポン・シャオラン演じる聶桑榆(じょうそうゆ)、ディン・ユーシー演じる寧鈺軒(ねいぎょくけん)。

──なぜ、ここまで注目されていたのでしょうか?

小酒 ここのところ主演作が続いているディン・ユーシーとポン・シャオラン、今勢いがある2人の初共演というのが大きいですよね。

島田 “ディン・ユーシーのラブコメ”というのも強かったと思います。

小酒 最近は、軽く楽しめるラブコメが人気なので、そのあたりも支持される要素だったかもしれません。シリアスな歴史劇に脇役として出るのではなく、ラブコメ時代劇で主演というのが大きな期待を集めたのかなと。

島田 そうですね。実際、ユーモラスで明るくて軽やかな作品スタイルが、視聴者の高評価につながったようです。

左からポン・シャオラン演じる聶桑榆(じょうそうゆ)、ディン・ユーシー演じる寧鈺軒(ねいぎょくけん)。

左からポン・シャオラン演じる聶桑榆(じょうそうゆ)、ディン・ユーシー演じる寧鈺軒(ねいぎょくけん)。

──ドラマをご覧になってみていかがでしたか? 期待度が高いとハードルも高くなりそうですが……。

小酒 ラブコメとして期待通りの面白さ。そして思いのほかミステリー展開も盛り上がるのが面白くて、うれしいサプライズでした! 主演2人以外の脇役も個性的で、さまざまなキャラクターを楽しめたところも満足度が高かったです。切なくて苦しい方向にストーリーが進んでも、必ずちゃんと笑えるシーンがあって毎回飽きることなく観られました。

島田 ディン・ユーシーの活躍をフルで堪能できて私も大満足です。伏線がいろいろあるんですけど、ちゃんと最後へと続く流れになっていたのもよくて。前半は明るく、後半からシリアスになってテイストが異なるのも、2つのドラマを観たような満足感を得られました。

ツンツンするほどかわいさが増すディン・ユーシーの真骨頂(小酒)

──ディン・ユーシーは「花の都に虎(とら)われて~The Romance of Tiger and Rose~」「月光変奏曲~君とつくる恋愛小説~」でもツンとデレのギャップでファンの心をつかんできましたが、今回演じた寧鈺軒(ねいぎょくけん)は「ディン・ユーシーのツンデレキャラの決定版」だとうたわれています。ファンであるお二人は、本作のディン・ユーシーをどうご覧になりましたか?

ディン・ユーシー演じる寧鈺軒(ねいぎょくけん)。

ディン・ユーシー演じる寧鈺軒(ねいぎょくけん)。

島田 ディン・ユーシーの魅力を伝えるということで、がんばってプレゼンさせていただきます……! まず中国では、本作において「寧鈺軒の心情が変わっていく過程を微妙な変化で見せて、複雑な側面を細やかに表現した」と評されていました。まさにその通りで、視聴者を没入させる演技が高く評価されたのだと思います。また“ツンデレ”と言っても、かっこつけたり照れ隠しするのがいわゆる“ツン”だと思いますが、寧鈺軒の“ツン”は自分を守るため心を閉ざして、他人と距離を取るもの。そして、あたかも少年に戻ったかのように、素直になって感情が全開になった状態が“デレ”というように、よくあるキャラではなく、多面性のあるツンデレを演じていたと感じます。

小酒 寧鈺軒は子供時代のトラウマを抱えているから、人に対して素直でないし、妻をめとっても心を許さない。でも話が進み、彼のトラウマや自己防衛が剥がれていくと、かわいらしくて素直な人柄が見えてくる。島田さんのおっしゃるように、ディン・ユーシーが段階的な変化をうまく演じるから、心にグッと来ました。ツンツンすればするほどかわいさが増してくるのも、ディン・ユーシーの真骨頂。強気なふりをしているのに、女性にグイグイ来られると恥ずかしがっちゃうところとか、完全に乙女心をつかみにきていますよね(笑)。ちょっと癖があるというか、イケメンだけど独特の味わいがある。

島田 ファニーというか、キュートというか。崩壊すればするほどいいキャラになりますよね(笑)。不思議な魅力があると思います。

自ら開業したコスメショップの商品を販売するため、男装して踊り子たちの店に潜り込む聶桑榆(左)。そんな彼女にあきれ気味の寧鈺軒(右)。

自ら開業したコスメショップの商品を販売するため、男装して踊り子たちの店に潜り込む聶桑榆(左)。そんな彼女にあきれ気味の寧鈺軒(右)。

──寧鈺軒は、押しの強い妻の聶桑榆(じょうそうゆ)に振り回されがちでしたが、そのような場面でよりいっそう輝くと。

小酒 受けの演技がうまいんですよね。何かされたときのリアクションが面白い。ポン・シャオランはディン・ユーシーより5歳上のお姉さんなので、そういう意味でも歳上のお姉さんに振り回されるディン・ユーシーを楽しめました(笑)。

島田 中国では、「ディン・ユーシーの演技には魂が宿っている。だから繰り返し味わう価値がある」とも評価されていたようです。

小酒 ソウルフルってことですよね……! ラブコメって通り一遍の演技だと安っぽく見えてしまうこともありますが、ディン・ユーシーのラブコメは心に残る作品が多いし、軽いだけではない見応えがありますよね。演技の基本がしっかりあるうえで、本人のセンスを感じさせるというか。ただ消費されてしまう演技とは一線を画す何かがある気がします。

島田 本当に印象に残る表現をしますよね、彼は。

──ポン・シャオランが演じたヒロインの聶桑榆は、もともと冷徹で悪名高い女性でしたが、アクシデントによって明るく気遣いのできる性格に“キャラ変”しました。彼女のコメディエンヌぶりは新鮮だったのでは?

島田 私は「九齢公主~隠された真実~」で演じたようなクールなイメージがあるので、どちらかと言えば記憶をなくす前の聶桑榆にぴったりのイメージでした。

ポン・シャオラン演じる聶桑榆(じょうそうゆ)。

ポン・シャオラン演じる聶桑榆(じょうそうゆ)。

小酒 私も、ここまではっちゃけてコミカルな彼女は初めて見ました。「東宮(とうぐう)~永遠(とわ)の記憶に眠る愛~」でも、もう少し落ち着いた役だったので。ご本人はもともとアナウンサー出身で、口が回ってサバサバしている印象です。だから楽しんで二面性を演じたのでは。

島田 聶桑榆が記憶を失ってからの暴れっぷりは爽快でしたね! クールなイメージのポン・シャオランだからこそ、意外性もあってハマり役だったんじゃないでしょうか。一方で、ただ明るいだけじゃなく「この人、何か隠してるんじゃない?」というダークな雰囲気もうまく醸していました。「何かのきっかけでまた前のキャラに戻ってしまうかも?」みたいな。

小酒 確かに。本当に記憶をなくして人格が変わったのか、実はまったくの別人に入れ替わったのか……どちらの設定だとしてもポン・シャオランの演技に説得力があるから、「どうせオチはこうでしょ?」とか余計なことを考えずにハラハラできました。聶桑榆が自分の店を開業してサクセスストーリーをたどっていくのも最近の中国ドラマらしい展開で、ヒロインとしても魅力的でした。