Netflix映画「パレード」長澤まさみ×リリー・フランキーインタビュー | 撮影現場の“不思議な多幸感”を回想、交換日記で作り上げた信頼関係も語る (2/2)

1人に対して作ったものは、大勢の人に向けたものよりも強い(リリー)

──お二人はこれまで舞台や映画「モテキ」(2011年)などたくさんの作品で共演されています。

リリー そうですよ。(「モテキ」では)ナタリーの編集長という屈辱的な役を……。

リリー・フランキー

リリー・フランキー

一同 (笑)

長澤 懐かしいですね(笑)。

リリー 共演は意外と、そのあとの「海街diary」(2015年)以来ですかね?

長澤 そうなのか。覚えてないんですよね、普段会いすぎてて(笑)。

──お芝居中の顔も普段の顔も知っていると思うんですが、お互いをどんな人だと思っていますか?

リリー 普段会ったりごはんを食べたりしている人とお芝居をするのはちょっと照れくさいときがあるんですけど、まーちゃんはあまりないかな。

長澤 ないですね。舞台(2011年上演の「クレイジーハニー」)であれだけ密にやったからかもしれないですね。

リリー 一緒にお芝居をしていない俳優の知り合いとかもいるじゃないですか。例えば、(池田)エライザは3年間一緒に音楽番組の司会をしたけど、初めてお芝居するとき「うっわ、セリフ言ってるコイツ」みたいになった(笑)。

長澤 ははは(笑)。それはわかる気がする。

リリー それはまーちゃんには全然なかったですね。

Netflix映画「パレード」より、左からマイケル役のリリー・フランキー、美奈子役の長澤まさみ。

Netflix映画「パレード」より、左からマイケル役のリリー・フランキー、美奈子役の長澤まさみ。

──なぜないのでしょうか?

長澤 舞台で演じたのが親友の役。私たちは親友になるために毎日交換日記をしたり、2人で役作りを積み重ねて信頼関係を作っていったところから始まっているんです。お互いに信頼感があるってことなんじゃないですかね。リリーさんが提案してくれたんですけど、すごくいい時間でした。

──長澤さんにとってリリーさんはどういう存在なんですか?

長澤 うーん……友達(笑)。

リリー 会うのは今年になって今日が初めてだったんですけど、連絡が来ないときのほうがまーちゃんは調子いいんだなって思ってる。だいたい調子よくないときに連絡があるから。

長澤 私としては“心を開いている”っていう意味で友達って言ったんですけどね。芝居がうまくいかなかった悩みとかも全部話すんですよ。

リリー でもそんなになれ合っている感じもないし、ちょうどいい距離感だと思う。最後に会ったのはBLACKPINKのライブを一緒に観に行ったときだよね(笑)。

──意外な場所でした(笑)。そんなお二人が久しぶりに共演された作品「パレード」は、どんなふうに楽しんでほしいですか?

長澤 自分の人生のその先をのぞき見したい気持ちが、この映画の中に詰まっている感じがします。思い残したことを振り返る時間でもあるだろうし、もしかしたらまだまだその先の何かを求めている感情だったりするかもしれない。そういう自分の知りたい欲みたいなものが満たされるような作品なのかなと思います。このファンタジーな世界にどっぷりハマっていただけたらうれしいです。

リリー 今の若い子たちって生き急いでいるっていうか、刹那的な部分があると思います。自分の人生を逆算して考えたりするじゃないですか。でもこういう映画を観て、“人は形がなくなってもそこにいなくなるのではない”と思って人と接していけば、いろんな後悔が減っていくのかもしれない。藤井監督は河村さんへのオマージュやレクイエムを映画に込めていますけど、1人に対して作ったものって大勢の人に向けたものよりも強いんですよ。この映画の世界のように、自分の亡くなった大切な人たちもあの店で寺島しのぶに注がれたビールを飲んでるといいな、なんて思ってもらえれば。

左から長澤まさみ、リリー・フランキー。

左から長澤まさみ、リリー・フランキー。

プロフィール

長澤まさみ(ナガサワマサミ)

1987年6月3日生まれ、静岡県出身。2000年に第5回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞。2003年公開「ロボコン」で映画初主演を飾る。翌年の「世界の中心で、愛をさけぶ」では、第28回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞など数々の賞を受賞した。主な出演映画は「モテキ」「海街diary」「50回目のファーストキス」「コンフィデンスマンJP」「MOTHER マザー」「すばらしき世界」「マスカレード・ナイト」「シン・ウルトラマン」「百花」「シン・仮面ライダー」「ロストケア」など。2022年10月より放送されたドラマ「エルピス―希望、あるいは災い―」でも話題を集めた。2024年3月22日公開の「四月になれば彼女は」では佐藤健、森七菜と共演。同年9月13日には主演映画「スオミの話をしよう」が公開される。

リリー・フランキー

1963年11月4日生まれ、福岡県出身。武蔵野美術大学卒業後、イラストやデザイン、文筆、音楽など多彩な分野で活躍する。実体験をもとにした長編小説「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」は映画、テレビドラマ、舞台化された。2008年に公開された「ぐるりのこと。」での演技を高く評価され、第51回ブルーリボン賞新人賞などを受賞。2013年公開の「凶悪」「そして父になる」でも多数の賞を獲得した。そのほかの出演作に「野火」「美しい星」「パーフェクト・レボリューション」「blank13」「万引き家族」「その日、カレーライスができるまで」「ちひろさん」「アナログ」「アンダーカレント」などがある。主演を務めた日英合作映画「コットンテール」は全国で公開中。