TELASA タイ・ドラマ特集|愛って肉眼で見えるんだ!さまざまな恋の形を描く6シリーズ

動画配信サービス・TELASA(テラサ)ではテレビ朝日の人気番組をはじめ、ドラマ、バラエティ、アニメ、特撮を配信中。さらに国内外の映画、ドラマ、K-POPコンテンツなどが楽しめる。

今回タイ・ドラマ「SOTUS S The Series」が3月20日に見放題で日本初配信、「2gether」が4月1日に見放題最速配信、「TharnType/ターン×タイプ」が4月18日に見放題配信となることに加え、タイのバラエティ作品も今後充実していくことを記念して、映画ナタリーではタイ・ドラマ特集を展開。対談コーナーではジャンルにどっぷり浸かったファンと、恋愛ものが大好きなライターが、タイBLドラマの魅力やファンの熱狂ぶりを語る。特集後半には配信中、配信予定の6作品をご紹介。

文 / 七夜なぎ(インタビュー)、田尻和花(作品紹介)

さわやかでキラキラ…タイドラマの魅力をディープなファンとライターが語り尽くす

Profile
芙美
思春期をBLとともに過ごす。「男と男の関係性」が大好きで、愛も憎しみもBLと感じるタイプ。ここ数年は舞台ジャンルにハマっていたが、「2gether」をきっかけにタイドラマにハマる。推しキャラは「TharnType/ターン×タイプ」のタイプ。
Profile
七夜なぎ
インタビューライター。コンテンツとお金について考えるのが好き。恋愛マンガや恋愛ドラマが大好き。推しキャラは「2gether」のタイン。

コロナ禍でハマったタイのドラマ

七夜なぎ タイドラマ、いつ頃から観始めましたか?

「2gether」より、ブライト演じるサラワット。

芙美 私は「2gether」から入りました! 2020年3月頃、タイBL好きの方の布教ツイートがバズって、SNSで突如タイBLの話が盛り上がったのを覚えていますか? そこからドラマに触れた人も多いと思うんですが、私も例に漏れず。「そういうのもあるのか……」と「2gether」を観て、サラワットを演じているブライトくんがあまりにもかっこよくて驚きました。

七夜 私も「2gether」です! 芙美さんよりももう少し後追いで、「気になる……」「でもドラマ観る時間そんなにないな」「でも気になる………」「やっぱり観る!」という感じで(笑)、遅れて一気見しました。

芙美 ドラマが話題になったタイミングって、新型コロナが急速に広がっていって、コンサートや舞台などすべての“現場”が止まりましたよね。私はここ数年は現場のあるジャンルに心血を注いでいたのですが、コロナの影響で全部止まって……。そこにタイドラマが現れて、持て余していたオタクとしてのエネルギーの注ぎ場所が見つかりました!

「2gether」より、ウィン演じるタイン。

七夜 「2gether」を初めて観たとき、どんなことを思いました? 私は「なんというキラキラの恋なんだ!」です。登場人物がみんな白シャツを着ているのもあって(※タイの大学生は制服を着用する)、画面がすごくさわやかでキラキラしている……。

芙美 途中からどんどんもどかしくなって「もう両思いだよ!」「いけえっ! いけえっ!」「お願いだから付き合って!」と応援しながら観ました。私は「2gether」に興味を持った人の98%くらいは、サラワット(ブライト)のかっこよさが玄関になって入ってきていると思っていて(笑)。でも入り口は顔だとしても、観ていくと演技に引き込まれるんですよね。「お前が好きだ」という気持ちが、言葉がなくても表情で伝わる。タイン役のウィンくんは「2gether」がほぼ初演技なんですが、そうとは思えないくらいその恋心に応えています。

七夜 ほぼ初演技なんですか! 全然そう思いませんでした。

「TharnType/ターン×タイプ」より、ガルフ演じるタイプ。

芙美 タイでは、出演作の多くない人や演技経験のない人を大抜擢することがあります。「2gether」だとブライトは下積み期間が長かったですし、ウィンはほぼ演技未経験。「TharnType/ターン×タイプ」ではタイプ役のガルフが本格的な演技初挑戦です。とはいえ、そういう役者さんが技術的に劣るというわけではなくて。オーディションの時点から2人の「コンビ感」というのは重視されるんですが、さらに撮影前にワークショップをたくさんやるんですね。そこでの稽古を経て「2人の恋心」の空気感が醸成されるみたいです。

七夜 おおー、「恋をしている2人」をそのまま見せてもらっている感覚があったのはそのワークショップ効果だったのかも。

芙美 それもあるし、日本の視聴者はタイの芸能界の知識が少なくて役者さんの素顔の印象がない分、キャラクターとして見えるということなのかなと! 日本の役者さんだと、どんなにハマり役でも頭のどこかにその役者さんのイメージやプロフィールがよぎるところがありますよね。「2gether」を観たとき、サラワットはサラワットだし、タインはタインという“キャラクター”に見えて、2人の物語に自然に入っていきました。2.5次元ジャンルだと、フレッシュな役者さんを起用してキャラクターを“憑依”させるということがありますが、ちょっと近いものを感じました。

七夜 役者1人ひとりのSNS更新もすごいですよね。オフショットやプライベートショットがInstagramでガンガン更新されている……。推しの情報をもっと知りたいと、突如としてタイ語を勉強し始める人も周りにいました。

芙美 SNSってすごいな……と思ったのは、NHK「あさイチ」で推し特集があったときですね。スタジオの壁にさまざまなジャンルの“推し”の名前が書かれていたんですが、MCの博多大吉さんが偶然「TharnType/ターン×タイプ」のガルフくんのフルネームを目に留めて、読み上げたことがあったんです。日本のオタクが興奮してTwitterで「#カナウットトライピパタナポン」とハッシュタグにしてつぶやきまくっていたら、タイのオタクが「ガルフが日本で話題になっているみたいだぞ!?」と気が付いて。「タイのTwitterトレンド1位にしよう!」というムーブメントが起きたんです。そして実際に1位になった!

七夜 タイで日本語のカタカナが1位になったんですか!

芙美 タイと日本のオタクが一体となった感じがありましたね……(笑)。ガルフ本人にも届くという“大事件”でした。

日本のカルチャーの影響も大きい?

七夜 「おっさんずラブ」(単発版2016年、シリーズ版2018年、2019年)や「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(通称チェリまほ)」(2020年)など、日本でも男性同士の恋愛ドラマが盛り上がってます。

芙美 「おっさんずラブ」、すごかったですよねー! ただ突然無から生まれたわけではなくて、いろいろな流れがあるんじゃないかな。出発点として挙げられるのは、BL原作だけどドラマ版はその要素がかなりカットされた「アンティーク~西洋骨董洋菓子店~」(2001年)だと思っています。「アンティーク」はアジア圏での人気があって、リメイク作品も多いですし、タイでの実写化も決まっているんですよ!

七夜 よしながふみ先生の傑作BLは世界に届く……! 同じくよしなが先生の「きのう何食べた?」は、食を中心にカップルの生活を描いた作品で、主人公2人のセクシュアリティは外せません。そちらは2019年に忠実にドラマ化されていますね。

芙美 「アンティーク」後にも、「BOYS LOVE」(2006年)、「プリンセス・プリンセスD」(2006年)、「タクミくんシリーズ」(2007~2012年)など映像作品が生まれていましたが、もともとBL好きな人をターゲットにしているような作品で、商業的なヒットにはつながっていなかったように思います。

七夜 実写BL黎明期というか。

芙美 ヒットした「おっさんずラブ」「チェリまほ」は、どちらかというと国内BL作品のお約束や雰囲気を踏まえている方向性。一方で、この流れとは少し違うところで、ゲイの登場人物が出てくる作品もあります。ドラマだと「クレオパトラな女たち」(2012年)や、「隣の家族は青く見える」(2018年)、映画だと「メゾン・ド・ヒミコ」(2005年)や「怒り」(2016年)が思い出深い! こういった作品群は、現代社会におけるセクシャルマイノリティやその生きづらさをストレートに描こうとしている方向性が強いのかな。

七夜 タイドラマは、日本の実写ドラマと重ね合わせてみると、どちらかというと「おっさんずラブ」「チェリまほ」のほうに近いんでしょうか?

芙美 本国では「Yシリーズ」と称されているように(※YはやおいのYから来ている)、日本のBLカルチャーの影響は大きいみたいですね。でもそれだけではなくて、タイにはLGBTQ+であることをオープンにしている人が多いという文化背景や、K-POPなどのアジアのポップカルチャーといった、いろいろな文化が混ざっている気がします。タイではクィアドラマとして放送されているわけでは必ずしもないし、ストーリーにツッコミどころがないわけではないけれど、現代社会と接続した部分があるなと。

七夜 観ていていいなと思ったのが、「男同士の禁断の恋愛」といった表現をしていないところでした。ゲイやバイの人々が社会にいることを大前提として、キャラクターの恋のゆくえを追いかけている感じというか。

芙美 私は「同性カップルがいるのは当たり前なんだなー」と改めて思いました。自分が観てきた日本の作品では、同性カップルが出ている作品を進んで選ばないとなかなか役として登場しないけれど、現実では異性が好きな人と同じように同性が好きな人がいて、きっとこんなキラキラした恋愛をしている人や、したい人がいる。そういう「当たり前」を乗せているので、当事者の方が感情移入できる作品としても愛されるのではないかなと思います。

タイドラマが描くさまざまな「恋」の形

芙美 現実の恋って、全部が全部キラキラしているわけじゃないですけど……でも「2gether」は、「恋をすることで、いつも通りの毎日が特別になって、見るものすべてがキラキラと輝く」という幸福な錯覚を描いていて、恋の特別さが伝わってきます。もちろん「2gether」に限らず、タイBLはいろいろな方面から「恋」を描いていると思います。

七夜 「2gether」を入り口に、ほかのタイドラマにハマっていく人もいますよね。

「TharnType/ターン×タイプ」
「SOTUS/ソータス」

芙美 人が恋によって変わっていくいろいろな面白さがあるんですよ! 私は中でも「TharnType/ターン×タイプ」にハマりました。「犬猿の仲」からスタートした2人が、徐々に恋で頭がメタメタになっていくんですよ……! 激しめのラブシーンがあることで知られていますが、「この監督は、男性同士の恋やセックスを美しいと思って撮っているぞ!」とビシビシ伝わってくるくらい画面から愛がしたたり落ちています。

七夜 愛がしたたり落ちる!

芙美 「愛って肉眼で見えるんだ……」と思いましたからね。カップルであるターンとタイプの愛が指先と視線からしたたって、画面からあふれてくるんですよ…………。「恋っていいな!」のきらめきが「2gether」なら、「好きだから落ち込むし、死んでもいいくらい幸せ」という激しいアップダウンが「TharnType/ターン×タイプ」。長い付き合いのオタク友達も一緒にタイのドラマにハマったんですが、ある者は「SOTUS/ソータス」、ある者は「ラブ・バイ・チャンス/Love By Chance」……とドハマリする作品がみんな違うのが面白かったですね。

七夜 「こういう恋が好き」というツボの違いによってそれぞれの沼に落ちていくというわけですね!

芙美 1シリーズを観て「タイの恋愛ドラマっていいな……」と思ったら、違う作品ものぞいてほしいですね。TELASAのような見放題配信だと、国内ドラマや映画好きの人も観る機会が増えるのかなと思っていて。ふらっとやってきた人にドラマの世界に首まで浸かってほしい気持ちでいっぱいです!