TELASA「ドクターY~外科医・加地秀樹~」|気楽さと変化、肩ひじ張らない程度の真面目さ 勝村政信が語る人気の秘訣 満島真之介、武田玲奈、脚本・林誠人、演出・山田勇人のコメントも掲載

連続ドラマシリーズ「ドクターX~外科医・大門未知子~」のスピンオフ「ドクターY~外科医・加地秀樹~」第6弾がテレビ朝日系24局で10月7日(木)20時よりオンエア。本作では帝都医科大学付属横浜分院を舞台に、“腹腔鏡の魔術師”こと加地秀樹が自身の限界と向き合いながら、巨万の富を持つ青年実業家・六車航平の病に立ち向かう。

「ドクターX」「ドクターY」全シリーズ配信中のTELASA(テラサ)では本作も地上波放送終了後から見放題配信。これを記念し、映画ナタリーでは加地を演じる主演の勝村政信にインタビューを実施。ドラマの見どころや、シリーズが長く続く秘訣を聞いた。また六車役の満島真之介のほか、江頭早苗役の武田玲奈、脚本を手がけた林誠人、演出を担当した山田勇人のコメントも掲載している。なお勝村が特別出演を果たしたスピンオフ「ドクターエッグス~研修医・蟻原涼平~」の特集も映画ナタリーで近日公開予定だ。

取材・文 / 橋本達典(インタビュー)撮影 / 谷俊政

ナタリー限定30日クーポン ドラマ「ドクターY~外科医・加地秀樹~」はTELASA(テラサ)で配信中

勝村政信インタビュー

見どころの1つは、加地の“老い”

──「ドクターY~外科医・加地秀樹~」第6弾の2時間スペシャルドラマが10月7日に放送されます。今のお気持ちはいかがですか?

勝村政信

「まさか!? ここまで!」というのが正直な心境ですね。普通、スピンオフって1、2本くらいじゃないですか? それが今回で6本目をやらせていただくことになり、本編(「ドクターX~外科医・大門未知子~」)と作品数も並び始めて。回を重ねるごとに物語性も深まっていって。まさかここまで続くとは思わなかったので、最初からやっている(山田勇人)監督や僕なんかは驚きが隠せないです。ふと気付いたら恐ろしいことになっていました(笑)。

──2016年に配信で始まり、2019年の第4弾より地上波で放送。かつて勝村さんは「スピンオフは、本編ではなかなかできない“無理なこと”ができます」とおっしゃっていましたが、今回はよりドラマ性が増した印象です。

中身も本編に近付いていますね。配信の頃は、例えば医療ホラーコメディに挑戦した2作目のような冒険作もあったんですけど、地上波で放送されるようになってからは、どんどん骨格がしっかりしてきて……あ、それまでがしっかりしていなかったというわけではないですよ(笑)。経年とともに、より大人の物語になってきたな、という印象です。

──第6弾の台本を拝見すると、医師としての“限界”を感じた加地の苦悩や難病を患う青年実業家との交流など、物語の広がりを感じました。

勝村政信演じる加地秀樹。

今回の見どころの1つは、加地の“老い”です。僕自身も40代で「ドクターX」(2012年)が始まって、今は50代も後半に差し掛かっています。海老名(敬)先生役のエンケン(遠藤憲一)さんは先日、還暦を迎えられました。そうした俳優の実生活の老いを、脚本家の林誠人さんが面白おかしく書いてくださって。なおかつ、それをどう乗り越えるか……まあ、老いなんて結局は乗り越えることはできないんですけど、どう肩を組んでともに歩いていくか? 林さんは「ドクターX」本編や「ドクターY」の第3、4弾を書かれているから、今回もキャラクターの経年・加齢を上手に取り入れてくださいました。

──林さん脚本の第3弾でもぎっくり腰になったり、老眼が進んでいるのを実感したり、加地の変化が描かれていました。

もしかして、林さんご自身の老いを加地に投影させているんじゃないかな(笑)。で、迫りくる老いを笑い飛ばす、というか。今回も林さんならではの爽快な脚本になっていました。同時に、スピンオフだけど、本編の骨太な雰囲気も感じてもらえると思います。基本的には面白おかしく。でも、決してふざけすぎず、かと言って真面目すぎず。スタートから6年を掛けて次第に“「ドクターY」らしさ”が出てきた気がします。

太陽のように周りを明るく照らしてくれます

──今回のメインゲストは、満島真之介さんです。若くして財を築いた通販サイト社長・六車航平を演じていますが、現場ではどんな様子ですか?

8年前に舞台(2013年「祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹~」)で共演したのですが、その頃から全然、変わっていないです、いい意味で。何も囲ってるものがないというか、常にオープンで、裏表がないですし、常にみんなのことを考えて行動してくれます。いつも笑顔で、彼がいると太陽のように周りを明るく照らしてくれます。今回は難病を患う役ですが、そのキャラクターが暗くなりがちな雰囲気をそうならないようにしてくれた。本当に助けられましたね。

──普段はどんな話を?

8年前から本当に仲良くしてもらっているので、相変わらずたわいもない話を。顔が似ているとよく言われるものですから、親子のような気持ちで接していました。で、本番になると、真之介と僕でまだ撮影に慣れていないスタッフに仕事を教えたり(笑)。真之介は裏方の経験(※映画作品で演出助手の経験あり)もあるから現場が停滞すると全体を引っ張ってテンポを上げてくれたり。助けられたのと同時に頼もしくなったなあと、感激しました。

──「ドクターY」には、「ドクターX」でおなじみの面々も、たびたびゲストで登場します。今回はどんなレギュラー陣が出演されるのですか?

内田有紀ちゃん演じる(城之内)博美とエンケンさんですね。相変わらず加地に厳しい博美をはじめ、東帝大学病院を解雇された海老名先生が今、何をやっているのか? 手術の下手な先生が今回は……など、限界に挑む加地ともども見どころ満載です。

──今回のテーマの1つは、先にもあった「限界」です。医師も役者も基本的には定年のない仕事ですが、ご自身は限界を感じたことはありますか?

そりゃ、ありますよ。50歳を過ぎた頃から、いつも限界。40歳を過ぎたときに、冗談で「江戸時代なら死んでる」と言っていたけど、ここ数年で同級生が何人か亡くなっています。歳を取ることのよさと怖さを体験しています。これは誰にでも訪れることですからね。変に抗わず、老いと付き合っていこうと。

──では、勝村さんが役者の仕事を長く続けるうえで行っていること、心がけていることは?

それが、ないんですよ。特に体にいいこともしていないですし、鍛えるとかもしていないです。

──傍から見ると、何年もお変わりなく映りますが……。

それよく言われるんですけど、見た目はなんとかごまかせても、中身はちゃんとおじいさんですからね(笑)。歳相応にガタがきてますから。体力、記憶力、集中力……若いときとは全然、違う。そのへんの自分の老いと加地の老いを重ねて、うまく表現できたら、と思っています。

奇跡的な出会いとチームワークがあったからこそ長く続いた

──「ドクターX」が9年、「ドクターY」が6年。司会を務めていらっしゃるテレビ東京の「FOOT×BRAIN」が10年。長く続けるためにはご苦労も多いと思います。長寿の秘訣はあるのでしょうか?

勝村政信

そこは“運”としか言いようがないです。あとは、いいスタッフ・共演者に恵まれたこと。誰か1人欠けてもうまくいかない奇跡的な出会いとチームワークがあったからこそ長く続いたんだと思います。「ドクターX」も、お互いをリスペクトしつつ、昨年のように1年放送が空いた期間も、近況報告をし合ったり。この間も(鈴木)浩介のところに第1子が誕生したので、みんなで祝いました。お子さんの写真を送ってもらって。だから10月に始まる「ドクターX」も2年ぶりになりますが、皆さんと久しぶりに会った気がしない。取材などでよく言うのですが、僕にとっての「ドクターX」は、そんな実家のような存在なんです。スタッフ・共演者は家族とか親戚ですね。

──「ドクターY」の人気の理由はどこにあると思われますか?

手前みそでなんですが、先日あるテレビ局の方に「2時間のドラマを作る際『ドクターY』を参考にさせてもらっています」と言われたんですね。いわく「繰り返し観ているけど、こんなに飽きないドラマはないです」と。それを聞いて皆さん、きっちり作ろうとしているところを、僕らは本編から離れよう離れようと冒険してきたので、それがよかったのかなと思ったんです。そして、だんだん骨太な物語になって、物語やキャラクターの幅も広がっていった。そういういい意味での気楽さと変化、肩ひじ張らない程度の真面目さのあんばいが、支持していただけた理由なんじゃないかと思います。

──現在、テレビ朝日の動画配信プラットフォームTELASA(テラサ)では「ドクターX」、「ドクターY」全シリーズを配信中です。本作の配信を機にシリーズを見始める視聴者に、改めて作品の魅力を教えてください。また、さかのぼって作品を楽しむうえで注目のポイントもお願いします。

繰り返しになりますが、「ドクターY」に関しては、こんなに何も考えずに観られるドラマもないんじゃないかと思うので、気を楽にご覧ください。「ドクターX」は、最初から観るとまるで違う作品ですからね。メンバーも違いますし、病院も権力者の規模もどんどん大きくなる。そういう変化を楽しみに観ていただくのも一興かなと思います。あとは、シーズンの最後に僕らがみんな必ず、東帝大学病院の分院なんかに飛ばされますから。終わりで始まって始まりで終わる──。シェイクスピアの史劇と同じメッセージが……と、適当なことを言っておりますが(笑)、ともあれ、「ドクターX」も肩の力を抜いて、繰り返し観ていただけるドラマですので、ぜひTELASAにて、ご覧ください。地上波放送の「ドクターX」新シーズン、「ドクターY」の最新作もお楽しみに。

勝村政信
勝村政信(カツムラマサノブ)
1963年7月21日生まれ。埼玉県出身。演出家の蜷川幸雄のもとで修業を積んだ後、劇団・第三舞台で人気を博す。その後、舞台やドラマ、映画はもとよりバラエティ番組や教養番組などジャンルを問わず活躍。近年の出演作に映画「七つの会議」「バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~」「地獄の花園」や、ドラマ「BG~身辺警護人~」「アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~」などがあり、サッカー関連番組である「FOOT×BRAIN」ではMCを務めている。