スターチャンネルEX 特集|米大統領選挙直前!海外ドラマで知るアメリカの政治とリアル

11月3日に控えたアメリカ大統領選挙が佳境を迎えている。現職ドナルド・トランプの再選か、バラク・オバマの政権下で副大統領を務めた民主党ジョー・バイデンによる政権奪還か。どちらが勝利しても、これから先の世界の動向を大きく左右することは間違いない。

2016年、多くの人が予期しなかったトランプの当選は、アメリカの映画やドラマといったエンタテインメント業界にも多大な影響を及ぼした。本特集では海外ドラマを中心にAmazon Prime Videoチャンネル「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」で配信中の4作品をピックアップ。時の社会や政治と切っても切り離せない関係にある作品群を通して、アメリカが置かれた現状に迫る。また2ページ目では、在ロサンゼルス日本国総領事館勤務経験を持ち、現在もアメリカ在住のライター・平井伊都子が、ドラマシリーズを手がかりに昨今の政治とエンタテインメントを取り巻く情勢を解説。白熱する大統領選のポイントにも触れてくれた。

文 / 前田かおり(P1作品紹介)、平井伊都子(P2コラム)

スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-とは

テレビ初放送の最新映画や不朽の名作、話題の海外ドラマなどを届けてきたBS10 スターチャンネル。2019年に始動したスターチャンネルEXは、月額制で楽しめるAmazon Prime Videoの配信チャンネルだ。「ゲーム・オブ・スローンズ」「チェルノブイリ」など、スターチャンネルが国内で“独占最速放送”を行う米国HBOの作品をいち早くラインナップ。ここで最速配信された「ウォッチメン」「キング・オブ・メディア2」「バッド・エデュケーション」が、それぞれ第72回エミー賞で作品賞を獲得するなど、良質なコンテンツが目白押しだ。「ゲット・アウト」のジョーダン・ピールが製作総指揮を務めたドラマ「ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路」の配信を控えており、今、もっとも目が離せない配信サービスとなっている。

大統領選直前!今観たいスターチャンネルEXの4作品

「ウォッチメン」 全9話 (HBO製作・2020年)

「ウォッチメン」ビジュアル
「ウォッチメン」

歴史上の出来事の裏にはスーパーヒーローたちの存在があった……というパラレルワールドを描き、映画化もされた原作コミック。この世界観を引き継ぎ、「LOST」のデイモン・リンデロフが新たに紡ぐSFアクションドラマだ。2019年、人種対立が激しいもう1つのアメリカを舞台に、人類のために戦うヒーローたちの苦悩や葛藤を描く。主人公は黒衣をまとった覆面の女性ヒーロー“シスター・ナイト”ことアンジェラ・エイバー。実際に300人もの黒人が虐殺されたという1921年の「タルサ人種暴動」を物語の鍵にして、今を生きるアンジェラをはじめ登場人物たちが抱える悲劇や憎悪の歴史を紐解いていく。シリアスかと思えば、シニカルな笑い、ギャグもあり、壮大なストーリーの中にグイグイと引き込まれてしまう。主演のレジーナ・キングをはじめ、ジェレミー・アイアンズ、ドン・ジョンソンなど映画、ドラマでおなじみの豪華キャストが続々出演。先頃発表されたエミー賞では作品賞など最多11部門を受賞。人種差別問題によって国中が混乱の極みにある現実のアメリカと合わせ鏡のような作品、まさに今、観るべき一作だ。

「ビカミング・ア・ゴッド」シーズン1 全10話 (Showtime・2019年)

「ビカミング・ア・ゴッド」ビジュアル
「ビカミング・ア・ゴッド」

舞台は1990年代のフロリダ州オーランド。夫が遺したネットワークビジネス「FAM」のせいで、破産寸前、貧乏の泥沼にハマり込んだ主婦が起死回生を狙って、そのネットワークビジネスでのし上がっていく。ジョージ・クルーニーが製作総指揮を務めるブラックコメディ。主人公のクリスタルを演じるのは製作総指揮にも名を連ねるキルスティン・ダンスト。「ヴァージン・スーサイズ」「マリー・アントワネット」などかつては可憐な姿で観る者を魅了したが、ドラマ「FARGO / ファーゴ」に続いて、体重を増やし、乳飲み子のためにたくましく生きるママになりきった。友人、知人にFAMの商品を売りまくり、さらには見知らぬ人間にまでなりふり構わず、売り込みをするクリスタル。舞台となったフロリダ州はホワイト・トラッシュと呼ばれる貧困層の白人も多いと言われ、何をやっても暮らしは楽にならない。そんな人々が詐欺まがいのネットワークサービスに夢を見たくなるのも納得。

「プロット・アゲンスト・アメリカ」 全6話 (HBO製作・2020年)

「プロット・アゲンスト・アメリカ」ビジュアル
「プロット・アゲンスト・アメリカ」

チャールズ・リンドバーグといえば、1927年に大西洋単独無着陸飛行を成功させた英雄的飛行士。その一方で、反ユダヤ主義者で親ヒトラー派でもあった。そんな人物が第2次世界大戦中の1940年にアメリカ合衆国大統領選で勝利していたら……という設定のもと、あるユダヤ人一家の目を通して急速に変貌するアメリカ社会を描く。製作総指揮・脚本を手がけたのはHBO作品の中でも傑作シリーズとして名高い「THE WIRE/ザ・ワイヤー」で知られるエド・バーンズとデヴィッド・サイモン。リアルな描写がうまい彼らは、親ナチスの大統領が誕生することによって悪化するユダヤ人の迫害やファシズムの台頭、ポピュリズムがもたらす恐怖を浮き彫りにする。映画、ドラマで活躍するウィノナ・ライダー、ジョン・タトゥーロにゾーイ・カザンといった実力派キャストがまさにその時代を生きた人々を熱演。特にレヴィン家の次男を演じたアジー・ロバートソンには注目だ。映画「マリッジ・ストーリー」でも素晴らしかったが、不穏な空気を嗅ぎ取り、つぶらな瞳で不安を訴える表情は、歴史改変ドラマなのにまるで現実かのごとく観る者の心に警鐘を鳴らす。

「WE'RE HERE ~クイーンが街にやって来る!~」 全6話 (HBO製作・2020年)

「WE'RE HERE ~クイーンが街にやって来る!~」ビジュアル
「プロット・アゲンスト・アメリカ」

カリスマ的人気を誇る3人のドラァグクイーンが全米各地の田舎街を巡り、一夜限りのドラァグショーをプロデュース。LGBTQの人々に寛容でない地域にあえて乗り込み、依頼人やその家族との対話を通して、自己表現の手段としてのドラァグを一緒に作り上げるHBO初のリアリティ番組だ。「“自分らしさ”を身にまとい、真実へと踏み出すことが何より大事なの。それがドラァグよ」──これは番組に登場するクイーンの1人、シャンジェラの言葉。人間の強さや自信を引き出し、それを周囲へと波及させるドラァグの魅力とパワーを体感できる1作だ。キリスト教の価値観が政治と分かち難く結び付いたアメリカでは、白人が多く住む保守的な街ほどトランプ支持者が多い傾向にある。ド派手な格好で街を闊歩する3人が地元住民から暴言を吐かれたり、警察に通報されたり、劇場探しに一苦労したりと、いまだLGBTQへの強い偏見の残る田舎町の現状も垣間見ることができる。