あけすけにやったらこんなに面白いんだ(大貫)
──本編では生理の症状もいろんな形で表現されています。生理ちゃんが眠気を誘うアロマをたいてきたり、腹パンをしてきたり……。
北澤 眠くなるやつは本当にわかります。病気なんじゃないかってくらい眠いじゃないですか、何回寝ても。普段はそんなことありえないのに。
──生理ちゃんはこういうこともしてきそうだなと考えつくものはありますか?
北澤 すごく食べたくなるので……。
大貫 ポテチね!
北澤 じゃあ生理ちゃんが目の前にポテチを無限に出してくるとかはどうでしょう。
石渡 お菓子食べたくなるよね。
北澤 ね! あと私すごいむくんじゃうんで、生理ちゃんが水分過多にしてくるようなバージョンも小山さんに考えてもらいたいです。
──いろんなバリエーションが見たくなりますね。そのほか劇中で印象的だった場面についても聞かせてください。
大貫 最初のほうで小さい生理ちゃんを持つ人もいれば、大きい生理ちゃんを持つ人もいるシーンはよく覚えてます。
──人によって連れている生理ちゃんの大きさが違うというシーンですね。大きいとそれだけ体に負担がかかって。
大貫 それがめちゃくちゃリアル! 普段はそんなに見えないところだから、ああやって可視化されると、うう……ってなります。
北澤 私は童貞くんが印象的で……。
一同 (笑)
大貫 あと性欲くんも! 名前からしてちょっと……という感じもありますけど、あけすけにやったらこんなに面白いんだっていう。フォルムも素晴らしいと思います(笑)。
──一筋縄ではいかない恋をしているバリキャリの米田青子、恋に臆病で夢をあきらめ趣味に走る山本りほという主人公2人についてはどうでしょう。共感するのはどっちですか?
北澤 青子のほうかな。リスクがあったり自分が傷付いたりと面倒になることはわかってて、踏み止まることもできる。だけど最終的には頭じゃなく心から出る指示に従っちゃうみたいな性格はわかるなって。
石渡 私はりほですね。自信が持てないところとか、たまに自暴自棄になっちゃうところに共感します。それがさらに生理の時期と重なっていたりすると、そのせいにしてしまったり……(笑)。
大貫 (かなり悩んでから)……両方です! 生理だけど弱い状態を周りに見せない青子のこともわかるし、何も予定がない生理の日はベッドから出なかったりするので、りほのこともわかるなって。ずっと布団から出ずにマンガを読んだりNetflixを観たりしてます。
イラストに小山さんの魅力がすべて詰められている(石渡)
──なるほど。では続いて主題歌についてお聞きしたいのですが、そもそもどういった経緯で決定したのでしょうか。
北澤 映画に携われるかもというお話をいただいていたタイミングで私たちがフルアルバム(「Hell like Heaven」)を制作していて、その中から映画製作サイドで「する」という楽曲を選んでいただいたと聞いています。
──書き下ろしではないんですよね。歌詞が映画にあまりにもぴったりだったので驚きました。もともとこの曲をどのような思いで作られたのか聞かせてください。
北澤 私はいつも自分自身の思いをそのままっていうよりは、自分以外の主人公のような人を作って、その人の気持ちを考えて1歩引いた状態で歌詞を書くことが多いんです。ただ今回はフルアルバムの中の1曲というのもあって、シングル曲ではできないアプローチをしたいなと。自分の気持ちを客観視するというよりは、自分の気持ちにそのまま正直に向き合ったうえで書いた歌詞でした。そういう試みができたという意味でここ最近リリースしてきた楽曲の中でも最初からすごく特別な曲でしたね。
──なるほど、もともと特別な思い入れのある曲だったんですね。ちなみに小山健さんはthe peggiesさんのCDジャケットを描いており、本作の主題歌に決まる前からつながりがあると聞いています。皆さんは実際に小山さんにお会いになりましたか?
北澤 会いました。デビューのタイミングでジャケットをお願いしたときからのお付き合いですね。
──どんな方なんですか?
一同 めっちゃ不思議……!
北澤 ふわふわとした雰囲気の方ですが、曲げられないところがはっきりしているのでやっぱりクリエイターなんだなと思わされます。本当に人として面白い方です。あとは娘さんのことが大好きなので、その話を振った瞬間に超笑顔になるんですよ。
大貫 顔がパアーッて(明るく)なるから!(笑)
石渡 イラストに小山さんの魅力がすべて詰められてるよね。
大貫 ね、生理ちゃんをこんなフォルムで生み出せないよ! 童貞くんもすごいかわいいし。
北澤 童貞くんがマンガに出てきたときは本当に衝撃で! なんて目がキラキラしてるんだ!って(笑)。
わかり合うことをあきらめたらわかり合える(北澤)
──小山健さんは男性ですが、女性の生理について描いていますよね。簡単ではないかもしれませんが、男性にも一緒に考えてもらうにはどうしたらいいと思いますか?
北澤 女子は「絶対にわかってほしい」みたいな気持ちをあまり持っちゃいけないなとは思いますね。お互い違う体の作りをしていて、違う人生を今まで歩いてきたわけですから、全然違った生き方をしてきた人に同じ痛みを味わってほしいって考えてもなかなか難しいと思います。100わかり合うことは不可能だとあきらめること。わかり合うことをあきらめたらわかり合えるような気がします。
──同性同士でもすべてをわかり合うのは難しいでしょうし、異性ならなおさら。
北澤 それと、女性から「痛い、しんどい、イライラする」とだけ言われても、男性はよくわからないですよね。こういうときはこうなるという情報を男性にシェアできればもう少し歩み寄れるのかなと感じています。ただ生理中だとイライラして説明できないので、そうでないときに!(笑)
──男女ともに少しずつ歩み寄りができたらいいですよね。そのためには……。
大貫 「生理ちゃん」を観ましょう!(笑)
北澤 そうそう、男性にも観てみてほしいですね。でも、私たちの痛みをわかってほしいということじゃなくて、こういう世界がみんなのすごく近くにあるんだよっていうことを知ってほしいなと。それと、生理はつらいよねっていうのが映画のテーマじゃないと思うんです。みんなそれぞれ見えないところに悩みや痛みがあって、それをうまく伝えられない、周りも気付けないということってありますよね。生理についてではなくても、日々の悩みやつらいこと、痛みにも重なるんじゃないでしょうか。
石渡 あと思春期の男の子は絶対恥ずかしいとは思うんだけど、それを恥ずかしいと思わずに1つの作品として観てほしいですね。何を感じるかは人それぞれでいいわけですし、思ったことを心に留めておいてくれれば……。
北澤 恥ずかしいと思う空気がなくなればいいなと思います。こういうタイトルでドン!とやるって素晴らしいこと。生理を恥ずかしいと思う雰囲気は、完全にはなくならなくても少しでも薄まっていってくれたらいいですよね。
大貫 あとは、生理ちゃんとの仲良くなり方って人それぞれだから、そういう意味でも若い女の子に観てもらえたら。本当に悩んでる子も多いと思うので、いろんな付き合い方があるんだよって感じてくれればいいし、ほかの人もみんな生理ちゃんを抱えながら生きているんだということをわかってほしいですね。
- 「生理ちゃん」
- 2019年11月8日(金)より全国順次公開
- ストーリー
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女性ファッション誌の編集部員・米田青子は仕事に恋に充実しながらも、恋人の娘とのぎくしゃくした関係が悩みの種。青子が働くビルの清掃員・山本りほは“煮え湯飲み子”という名でSNSに投稿をし、うっ憤を晴らす日々を送っていた。そんなとき、コラム執筆者として煮え湯飲み子をずっと探していた青子は編集部の後輩とともについにりほの正体を突き止める。青子がスカウトを試みるも、自信を持てないりほは逃げ出してしまい……。
- スタッフ
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原作:小山健「生理ちゃん」(ビームコミックス / KADOKAWA刊)
監督:品田俊介
脚本:赤松新
主題歌:the peggies「する」(Epic Records Japan)
- キャスト
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二階堂ふみ / 伊藤沙莉、松風理咲、須藤蓮、狩野見恭兵、豊嶋花、藤原光博(リットン調査団) / 岡田義徳ほか
©吉本興業 ©小山健/KADOKAWA
- the peggies(ペギーズ)
- 北澤ゆうほ(Vo, G)、 石渡マキコ(B)、 大貫みく(Dr)で編成された3人組ガールズバンド。中学校の同級生で結成し、高校時代から東京都内のライブハウスを中心に本格的な活動をスタートした。2017年5月に小山健がジャケットを描き下ろした「ドリーミージャーニー」でメジャーデビューし、2019年2月にメジャーファーストフルアルバム「Hell like Heaven」をリリース。テレビアニメ「さらざんまい」のエンディングテーマに「スタンドバイミー」、HondaのテレビCMに「そうだ、僕らは」を提供するなど注目を集めている。2019年10月から12月にかけては全国ツアー「the peggies tour 2019 - YELLOW -」を開催。
- the peggies 公式サイト
- the peggies (@the_peggies) | Twitter
- 北澤ゆうほ the peggies (@poppoexpress) | Twitter
- 石渡マキコ the peggies (@mega_makiko) | Twitter
- the peggies official (@the_peggies) | Instagram
- the peggiesの記事まとめ
- the peggies「Hell like Heaven」
- 発売中 / Epic Records Japan
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通常盤 [CD]
税込3056円 / ESCL-5166
- 小山健(コヤマケン)
- 会社員時代に趣味でブログに描いたマンガ「手足をのばしてパタパタする」をきっかけにさまざまなメディアでマンガ家・イラストレーターとして活躍。近年の著書に「お父さんクエスト」「ありがとう さち子」がある。「生理ちゃん」は月刊コミックビームで連載中。単行本2巻目となる「生理ちゃん 2日目」が2019年7月に発売された。
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