ブラックホールみたいな好奇心にあらがえなかった(池田)
──さまざまな人の転機が描かれる本作ですが、お二人の人生の転機はいつでしたか?
羽賀 僕は子供の頃からマンガ家っていう職業に憧れがあったんですけど、初めて出版社に投稿できたのが「インチキ君」っていうマンガだったんです。
池田 (実物を読みながら)象に牙が生えてる!
羽賀 (笑)。それまで「絶対マンガサークルとか入るもんか」みたいに、自分のオリジナリティを追求したいと思ってたんです。そう思うが故に、なかなか人に見せられない。だから家族や友人にもマンガ家になりたいって言ってなかったんです。大学4年生のときにこの作品を投稿して担当編集が付いて、じゃあマンガ家になろうということだったので、「インチキ君」を描けてなかったらずっと一歩を踏み出せずにいたと思います。
池田 私は物心ついた頃からこういうお仕事はなんとなくしていたんですけど、実際のところは小説家になりたくて。あんまり表に出たくなかったんです。なんとなくこのまま、福岡に居続ければ自分の好きなことだけを選択して生きていけるんじゃないかと思ってた時期もありました。
──そうだったんですね。
池田 でもそのとき18歳で、ブラックホールみたいな好奇心が常に湧き上がってくるんですよ。それにあらがえなくて、10万円握りしめてかばん1つで東京に出てきて。そこが転機だったのかなって。あのときいろいろ振り切って東京に出てきた自分がいなかったら、いろんな人に出会ってこんな豊かな気持ちになれなかったですし、お芝居ってものにも触れてなかったかもしれないです。「この人たちともっともっとお仕事したいな」って思える人たちとも出会えてなかったかもなと思うと、18のときの自分には「ありがとう」って言いたいですね。
友人・彼氏なし、人生こじらせ真っ最中の女子
八雲御子(池田エライザ)
自殺や殺人の起きた事故物件を浄化する「ルームロンダリング」が職業。幽霊とコミュニケーションを取ることができるため、この世に未練を残した彼らに振り回されている。
明らかにカタギじゃない不動産屋
雷土悟郎(オダギリジョー)
御子の叔父で、不動産屋を営む。浄化する物件を御子に斡旋しルームロンダリングを続けさせているものの、内心では御子の将来を案じている。何やら後ろ暗い副業も行う。
津軽弁のパンクロッカー
春日公比古(渋川清彦)
自殺したパンク歌手。明るく気さくだが、生前成し遂げられなかったあることに未練を残し、成仏できずにいる。日本酒が好物で、テンションが上がるとお国言葉の津軽弁が飛び出す。
「ルームロンダリング」の世界を作る3つの要素
カラフルで女の子らしいモチーフにあふれた御子のスケッチブック。動物や草花のコラージュや、淡い水彩画が目を引く中で異彩を放つのは、これまで事故物件で出会った幽霊たちのイラストだ。関わった幽霊たちの姿をいたわるように描き出すイラストは、作中でも思わぬ形で活躍し、御子の人生にも影響を与えていく。
まるで部屋に人格が投影されたかのような、個性的なインテリアも本作の特徴。つぎはぎのカーテンや、レトロなキャリーバッグなど、短期間で引っ越しを繰り返す御子の家具は、数が少ないながらもしっかりと御子のこだわりが反映されている。本であふれた亜樹人のマンション、どこかうさんくさい悟郎の事務所など、住人のキャラクターを思い浮かべながら楽しんでは。
- 「ルームロンダリング」
- 2018年7月7日(土)全国公開
- ストーリー
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いわく付きの物件を渡り歩く八雲御子の職業は、自殺・殺人などでワケありとなった部屋に住み込み、事故の履歴を帳消しにする“ルームロンダリング”。隣人との交流がご法度となるこの仕事は、人付き合いが苦手な御子にとって好都合、のはずだった。行く先々で御子を待ち受けていたのは、この世に未練を残して幽霊になった元住人たち。幽霊が見えてしまう御子は、彼らの絶え間なく続く悩み相談に振り回されていく。
- スタッフ / キャスト
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監督:片桐健滋
脚本:片桐健滋、梅本竜矢
出演:池田エライザ、渋川清彦、健太郎、光宗薫、オダギリジョーほか
- 「ルームロンダリング」公式サイト
- 「ルームロンダリング」公式 (@roomlaundering) | Twitter
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- 「ルームロンダリング」作品情報
©「ルームロンダリング」製作委員会
- 池田エライザ(イケダエライザ)
- 1996年4月16日生まれ、福岡県出身。2009年にニコラモデル・オーディションでグランプリを受賞し芸能界デビュー。女優としても活躍しており、2011年公開作「高校デビュー」で映画初出演を飾る。ほか出演作に「チェリーボーイズ」「となりの怪物くん」などがあり、2018年8月31日には「SUNNY 強い気持ち・強い愛」、10月19日には「億男」の公開を控える。
- 羽賀翔一(ハガショウイチ)
- 1986年生まれ、茨城県出身。2010年に「インチキ君」で第27回MANGA OPEN奨励賞受賞。2011年に「ケシゴムライフ」をモーニングで短期集中連載し、2014年には同作が単行本化された。「漫画 君たちはどう生きるか」(原作:吉野源三郎、マガジンハウス刊)で注目を集める。現在はTwitter上で「お題マンガ」として1ページマンガを公開している。