この映画はどこまでも人を見捨てない(池田)
──パンクロッカーの公比古、コスプレブロガーの悠希など個性豊かな幽霊たちがたくさん登場しますが、お二人は幽霊たちのお気に入りのシーンはありますか?
池田 公比古と悠希がいい感じになっているシーンですね。御子としては癪でしたけど(笑)。でも、希望があっていいなって思いました。幽霊同士が自分と近い人たちを見つけて仲良くしてるっていうのは、前向きになれるポイントだなと。そういうのもありだよね!と思わせてくれる、かわいらしい要素だったと思います。この映画は、生きてても亡くなってても関係なく、どこまでも人を見捨てないんだなと思わせてくれました。
──いつもカニの扮装で現れる小学生の幽霊・はぐむはいかがでしたか? 見た目は子供ですが、幽霊になったまま20歳を迎えているので、愛らしい見た目とは裏腹にませた言動が特徴的でした。
池田 でも20歳の割には社会とのコミュニケーションが足りてないので、「おっぱい! おっぱい!」って言っちゃう少し経験が足りてないところも、はぐむのかわいいところですよね。たぶん道に落ちてるエロマンガを拾って読んじゃうタイプだと思うので、そこでの知識しか知らない(笑)。
羽賀 (笑)
──あとは路上でミニカーを探し続ける男性の幽霊もいましたね。
羽賀 短いシーンなんですけど、僕もあのシーンは印象的でした。
池田 あそこは本当に大好きです。
羽賀 なんか背景が不思議な動き方したな、って思って。
池田 あれは、カメラががんばってワー!って引いてたんです。フォーカスは御子に当てたままズームするもので。エフェクトでもなんでもなく、技術がすごく必要な撮影でした。
羽賀 あ、だからなんですね。不思議な映像だなって思ってました。
池田 御子が自分の記憶をちゃんとたどるっていう象徴的なところですね。御子は何かを振り返ってそこから学ぶっていうタイプじゃなくて、ずっとどこかにしがみついたり依存しているような女の子だったので。とてもわかりやすい演出だったと思っています。
羽賀 僕は公比古がすごく好きで。大好物の日本酒を見つめながら「死ななきゃよかった……」っていうシーンが心に残ってます。死んでる人たちが出ることによって生きてる側の生き方を突き付けられるというか、劇中にも「幽霊に生き方学ぶ気はねえ」みたいなセリフがあったと思うんですけど、そこを公比古が一番印象的に表現していたと思います。あ、でも津軽弁のロック、聴いてみたかったですね。
池田 流れましたよ、エンディングで! エンディングテーマが公比古の「ヘバ!GOODBYE」なんです。
羽賀 そうだったんですか!
池田 キーくんが嫌々録ったという「ヘバ!GOODBYE」。無理やり歌わせた曲です(笑)。
──(笑)。渋川さんのこと「キーくん」って呼んでらっしゃるんですか?
池田 キーくんと呼んだり、呼ばなかったり(笑)。キーさんのときもあれば渋川さんって呼ぶときもあります。たまに渋川さんの国籍がわからなくなるときがあって。もちろん公比古をやってるときは誰よりも親しみやすくて、距離感が近いのでキーくんって呼びたくなるんですけど、撮影が終わると渋川さんに戻る、みたいな。
成長する人のそばにいる人もまた、成長していく(羽賀)
──「漫画 君たちはどう生きるか」の主人公“コペル君“が友人を助けられなかったことを悔やむ姿と、本作で健太郎さん演じる亜樹人が、隣人だった悠希との関わりで罪悪感に苛まれる様子が重なるように感じました。亜樹人というキャラクターについてどうご覧になりましたか?
羽賀 助けられなかった後悔があって、それをどうやって償えるのか、どう前に進んでいくのかということで言うと、この映画は御子の成長物語だけじゃなくて亜樹人が成長する物語でもあったんだなと思いました。僕、悟郎さんがお墓の前で言う「みんな御子の成長を、御子のそばで見届けたかったんだよな」というセリフにグッときて。「成長する人のそばにいる人もまた、成長していく」という点が魅力的だなと思いました。
──御子の成長する様子が、亜樹人にもいい影響を与えていたということですね。
羽賀 でもこれって、映画の外からのセリフでもあるのかなと勝手に思っていて。池田さんが女優として成長する様子を、この映画を作った人たちがそばで見ていたいっていう空気があるからこそ、全編を通して心地いい気持ちで観られたのかなと思いました。
池田 ありがとうございます、精進いたします……。私はコぺル君と亜樹人から、自分の過ちに気付いてくじけてしまうことはあっても、自分の成長を見守ってくれる人たちが近くにいれば大丈夫だよっていうメッセージを感じるんです。「今からでも遅くないよ」とか、「自分の心を浄化してあげることもできるんだよ」っていう思いも。そして、それはこれからの自分の行いだったり、物事の捉え方だったりで変えられるものなんだと思います。そのことが観てる人に伝わるっていうことは、コペル君と亜樹人の2人が教えてくれることは似てるんだなと思いました。
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ブラックホールみたいな好奇心にあらがえなかった(池田)
- 「ルームロンダリング」
- 2018年7月7日(土)全国公開
- ストーリー
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いわく付きの物件を渡り歩く八雲御子の職業は、自殺・殺人などでワケありとなった部屋に住み込み、事故の履歴を帳消しにする“ルームロンダリング”。隣人との交流がご法度となるこの仕事は、人付き合いが苦手な御子にとって好都合、のはずだった。行く先々で御子を待ち受けていたのは、この世に未練を残して幽霊になった元住人たち。幽霊が見えてしまう御子は、彼らの絶え間なく続く悩み相談に振り回されていく。
- スタッフ / キャスト
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監督:片桐健滋
脚本:片桐健滋、梅本竜矢
出演:池田エライザ、渋川清彦、健太郎、光宗薫、オダギリジョーほか
- 「ルームロンダリング」公式サイト
- 「ルームロンダリング」公式 (@roomlaundering) | Twitter
- 「ルームロンダリング」公式 (@roomlaundering) | Instagram
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- 「ルームロンダリング」作品情報
©「ルームロンダリング」製作委員会
- 池田エライザ(イケダエライザ)
- 1996年4月16日生まれ、福岡県出身。2009年にニコラモデル・オーディションでグランプリを受賞し芸能界デビュー。女優としても活躍しており、2011年公開作「高校デビュー」で映画初出演を飾る。ほか出演作に「チェリーボーイズ」「となりの怪物くん」などがあり、2018年8月31日には「SUNNY 強い気持ち・強い愛」、10月19日には「億男」の公開を控える。
- 羽賀翔一(ハガショウイチ)
- 1986年生まれ、茨城県出身。2010年に「インチキ君」で第27回MANGA OPEN奨励賞受賞。2011年に「ケシゴムライフ」をモーニングで短期集中連載し、2014年には同作が単行本化された。「漫画 君たちはどう生きるか」(原作:吉野源三郎、マガジンハウス刊)で注目を集める。現在はTwitter上で「お題マンガ」として1ページマンガを公開している。