誰も観たことのないものを観ることになる(大友)
──今回、モロッコの砂漠で高橋さんが「芝浜」を披露するシーンもあります。大友監督、モロッコでの撮影はいかがでしたか?
大友 モロッコは2人のルーツでもあるので、作品的に絶対行かなければならないところだったんです。3カ月後に控えていた国内の撮影でのヒントをとにかく得よう!と思って、めちゃめちゃカメラ回してたんですよ! ね?
佐藤・高橋 はい(笑)。
大友 スケジュールがきつかったんですが、その「芝浜」のシーンは2人の“卒業式”のようなシーンなので、いきなりそこを撮るわけにもいかなくて。一番いいコンディションで「芝浜」を撮りたいと思っても、砂漠で落語っていうシチュエーションを観たことないから、イメージができない。だから誰も観たことのないものを観ることになるわけです。で、撮影監督の山本(英夫)さんと2人で場所を探しに出かけて。
──はい。
大友 そうしたら「ここ! ここ!」っていう場所が見つかって! まず一生さんのほうを撮ってたら、スタッフが感動してボロボロ泣き出しちゃったんです。そしたら、健くんもけっこうキちゃってて(笑)。
佐藤 (笑)
大友 カメラは2台あったので「両方押さえればよかった!」と思って、途中で「動け! 動け!」って言ったんですけど、砂漠だから動くと跡がついちゃうんですよね……。だから一度カメラ置いたらもう動けないんですよ。いつもは「動け! カメラ、動けー! 畜生っ!」とか大騒ぎしてるんですけど、そうもいかずで(笑)。でも、あのシーンは2人の絆が撮れたと思っています。
──とても幻想的なシーンで見入ってしまいました。佐藤さんと高橋さんは今回が初共演ということですが、もともと面識はあったんでしょうか?
佐藤 「初めまして」でしたね。
高橋 そう、初めましてでした。モロッコにいる間は、大友さんがずっとライブでカメラを回してくださっているので、一男くんと九十九そのものでいることができました。自分に戻っている時間のほうが少なかったんじゃないかと思えるぐらい。
──1月にモロッコで撮影されて、そのあと国内の撮影が3月下旬に始まるまで2カ月半ほど時間が空きましたが、すぐに一男と九十九の関係に戻れたんでしょうか?
佐藤 国内の撮影まで時間があったことで、大学卒業以来会ってなかった一男と九十九のように、物語とリンクする形で時間が置けたことが逆によかったですね。2人は大学時代とはまた違った関係になってるので、時間が空いたのがうまく作用したと思います。
──なるほど。先ほどお話にもありましたけど北村さんら元バイカムのメンバーとは、撮影中どういったお話をされましたか?
佐藤 北村さんがものすごくモコモコした格好をされてたので「暑そうですね……」と声をかけましたね。口に詰め物もされてましたし。
大友 セリフの邪魔をしてやろうと思ってね(笑)。
一同 (笑)
佐藤 でもフォルムがかわいかったですよね。まん丸い感じで(笑)。新しい北村さんが観られるんじゃないですかね。
高橋 ね、かわいかった。
──とても強烈で印象に残るビジュアルでしたね(笑)。
3億円が手に入ったら一生さんに相談する(佐藤)
──本作は、お金について示唆に富んだ内容でした。映画のように、いきなり3億円が現金で手元に来たらどうしますか?
佐藤 うーん……ちょっと困っちゃうんで、とりあえず一生さんに相談に行きますね。
高橋 任せてください。
──(笑)。高橋さんはどうされますか?
高橋 僕は投資します!
──お二人とも堅実に使い道を考える方向ですね。大友監督はいかがですか?
大友 今回の撮影を終えてから「3億円あったら映画作りますか?」と聞かれることもあるんですが、作りません。映画は人のお金で作るのが楽しいんだから!
一同 (笑)
大友 だから僕は「ハゲタカ」で得た知識と人脈を使いながら、手堅く運用します(笑)。
佐藤 正解ですね(笑)。
大友 でも今回、3億円の量を目で見るっていうポイントが面白かったですね。原作の発明だと思います。お金に対して、1辺の長さがこれぐらいで、重さがこれぐらいでっていうアプローチはあんまりないじゃないですか。
高橋 ええ、あれはすごい視点でした。
大友 僕らはいつもお金を口座の数字とかでしか認識してないけど、物として見るってポイントが面白い。3億円分の現金をバッグに詰めて現れた一男に、九十九が「どうだった?」って聞いて、一男が「重かったよ」って答えるシーンとか。
高橋 生々しい感じがするんです、あのシーン。やっぱりリュックとダッフルバッグっていうのが、実際にありそうな感じでよかったです。
一生くんがねずみ男みたいになってる(大友)
──最後に公開を心待ちにしている皆さんのために、見どころをお聞きしてもいいでしょうか?
佐藤 大友組の最大の魅力は役者陣がスパークする、つまりほかの現場じゃなかなかできない芝居を見せてくれることだと思います。今回はみんなスパークしてるので、役者陣の芝居にぜひ着目してほしいですね。
大友 僕ね、ずっとうつうつとしてた一男が競馬場で「行けー!」って叫んだときと、パーティでめちゃくちゃに狂ったときが、見ててすごくうれしかった(笑)。
一同 (笑)
大友 一男がようやくスパークしたシーンでした。健くん、大丈夫?って思うぐらい(笑)。
高橋 僕はこの映画はとてもいいバランスを保っていると思っているんです。娯楽性を十分に踏まえながら、ドラマの部分もしっかり描いている。普通はなかなかできることじゃないので、その点の面白さをじっくり見てほしいです。
大友 電車の中で一男と九十九が会話する重要なシーンですね。普通は、電車の中みたいにガチャガチャした場所ではやりにくいデリケートなシーンのはずなんです。いろいろ試行錯誤して「これじゃなきゃ成立しない」という着地点にたどり着けたというか、綱渡りでなんとか成立させられたのがうれしかったです。このシーンを堪能してほしいですね。
佐藤・高橋 (うなずく)
大友 あとモロッコね、死にそうになりながら撮ったモロッコ。いろいろ大変だったから、もう二度と行きたくない!
一同 (爆笑)
大友 あ! モロッコの民族衣装を着てる一生くんがねずみ男みたいになってるところも。エンドロールで観られます!
高橋 そう! ねずみ男みたいになっているんです。そこは注目してほしい。本当に着ちゃいましたから!
- 「億男」
- 2018年10月19日(金)全国公開
- ストーリー
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図書館司書の一男は、兄が残した借金3000万円の返済に追われていた。妻の万左子は愛想を尽かし、娘とともに家を出てしまう。しかし、そんな踏んだり蹴ったりの一男が突然、宝くじで3億円に当選。戸惑う一男は、億万長者の親友・九十九に相談するが、その3億円を持ち逃げされてしまう。愛、友情、3億円。すべて失った男がさまざまな億万長者たちと出会い、最後にたどり着くのは? お金とは何か? 幸せとは?
- スタッフ / キャスト
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監督:大友啓史
脚本:渡部辰城、大友啓史
原作:川村元気「億男」(文藝春秋)
主題歌:BUMP OF CHICKEN「話がしたいよ」(TOY'S FACTORY)
出演:佐藤健、高橋一生、黒木華、池田エライザ、沢尻エリカ、北村一輝、藤原竜也ほか
©2018映画「億男」製作委員会
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TOHOシネマズ
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ユナイテッド・シネマ / シネプレックス
- 佐藤健(サトウタケル)
- 1989年3月21日生まれ、埼玉県出身。「ROOKIES」「龍馬伝」「天皇の料理番」などのテレビドラマや、「るろうに剣心」3部作、「バクマン。」「世界から猫が消えたなら」「何者」などの映画で活躍する。2018年には「いぬやしき」、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」、ドラマ「義母と娘のブルース」に出演し、11月23日には「ハード・コア」の公開を控える。
- 高橋一生(タカハシイッセイ)
- 1980年12月9日生まれ、東京都出身。ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。近年の出演作に「嘘を愛する女」「blank13」「空飛ぶタイヤ」、ドラマ「カルテット」、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」など。現在、ドラマ「僕らは奇跡でできている」にて主演しており、2019年には「九月の恋と出会うまで」「引っ越し大名!」が公開される。
- 大友啓史(オオトモケイシ)
- 1966年生まれ、岩手県出身。NHKでドラマ「ハゲタカ」、大河ドラマ「龍馬伝」などを手がけたあと、独立。2009年「ハゲタカ」で映画監督デビュー。2012年から2014年にかけて「るろうに剣心」3部作を監督し、2016年公開作「秘密 THE TOP SECRET」「ミュージアム」や2017年公開「3月のライオン」2部作を手がける。