ドラマ「オールドファッションカップケーキ」のBlu-ray / DVDが9月28日に発売された。
佐岸左岸の同名マンガを加藤綾佳がドラマ化した本作。アラフォー癒やし系上司・野末とアラサー番犬部下・外川がスイーツ巡りをきっかけに距離を縮めていくさまが描かれる。単調な日々にどこか憂うつさを感じる野末を武田航平、無愛想ながらひそかに野末に思いを寄せる外川を木村達成が演じた。
映画ナタリーでは、Blu-ray / DVDの発売を記念して、武田と木村にインタビューを実施。2人は本作の魅力や、役を演じるうえで意識したことなど、撮影時の思い出をたっぷり振り返り、さらに印象深いシーンや大切にしていたセリフについても明かしてくれた。
取材・文 / 尾崎南撮影 / 曽我美芽
日常的な部分を大切に(武田)
──「オールドファッションカップケーキ」のドラマ化は、配信・放送前から多くの反響を呼びました。その理由をどうお考えですか?
武田航平 僕もSNSをやらせていただいてるんですけど、原作の人気という点で注目度が高いことを感じていましたね。
木村達成 原作の力はとても大きいですよね。それこそランキングで1位(※編集部注)を獲った愛されている作品なので、期待値もかなり高まっていたと思います。
※原作の同名マンガは「第12回BLアワード2021」のBESTコミック部門で第1位を獲得した。
──「オールドファッションカップケーキ」は、人間ドラマの魅力も満載ですよね。お二人はこの物語をどのように捉えて、役を演じられましたか?
武田 ラブストーリーではありますが、(2人が)上司と部下として触れ合い、友人のように距離を縮め、家族のようにお互いの思いをぶつけ合う部分が魅力的。派手に何かが起きるわけではない、日常的な部分を大切にしていきたいと思いました。心情の変化や、会話にはないところの心のキャッチボールを丁寧に見せたいと考えましたね。
木村 僕は、長く野末さんを想い続けた外川の気持ちを理解しながら演じることを意識しました。自分に備わっていない感覚を表現する必要があり、たくさん勉強させていただきましたね。外川がどれだけ、悩みや言葉を発するときの葛藤を抱えていたか。それでいてまったく気付いてくれない野末さんに対しての気持ちとか……。いろんなものを考えながら取り組んだこの時間は、とても有意義でした。楽しくもあり、苦しくもありでしたね。
このセリフを言うための役作りだった(木村)
──役作りはどのようにしたのでしょうか?
武田 野末さんのやわらかい雰囲気や優しいところ、包容力をどうやって表現していくかは大切だと思いました。(マンガは)文字なので、読者の皆さんが脳内で音に変換していると思うんですよね。なので、ドラマで違和感なく野末のキャラクターを受け入れていただくために、声のトーンを意識しました。声は作るものではなく、生活の中から生まれてくるものだと思うので。あとは仕事ができる上司のしぐさ、立ち居振る舞いに気を付けました。
木村 原作ものを実写化する意味は、各々がキャラクターを読み解いた芝居をすることで成立すると思うんです。外川というキャラクターは、自分のこれまでの経験を超えて、もっともっと悩める男性。僕も彼と同じ葛藤を味わわないといけないと考えました。僕の一番大切にしていた「残念ながら僕にはそれが常識で」という外川のセリフは、簡単に言える言葉ではない。ありがたいことにこのセリフは後半の撮影だったので、それまでの過程がとても大切でしたし、このセリフを言うための役作りだったと思います。
──Blu-ray / DVDには、カップルになった2人の日常を描いたエピローグのショートドラマ「#アップルパイ」が収録されます。撮影はいかがでしたか?
武田 撮影期間の中盤から後半に入ったくらいの時期だったので、楽しく日常の時間が流れている感じになっているんじゃないかな。目に見えないものですけど、距離の縮まった2人の空気感とか、大事な部分が収録されていると思います。楽しみにしていただけたらうれしいですね。
木村 キャラクターが自分になじんできた状態で、付き合ったあとのストーリーを楽しく作ることができたのは、ある種救いでした。順番って大切だなって思って。エピローグの撮影があることで、かなり心が解放されました。