蝉川夏哉のライトノベル「異世界居酒屋『のぶ』」(宝島社刊)を実写化したドラマが、5月15日夜にWOWOWプライムで放送スタート。「ドロップ」「漫才ギャング」で知られる品川ヒロシが監督・脚本を担当する本作は、異世界の古都・アイテーリアと入口がつながってしまった居酒屋「のぶ」を舞台とする新感覚のグルメドラマだ。異世界の住人たちにとっては見慣れない日本の料理を通じて、「のぶ」に集う人々の物語が展開していく。
映画ナタリーでは、第1話まるごと無料配信と放送スタートを記念し、本作の見どころを解説するコラムと、品川と蝉川の対談を展開する。見ているだけでお腹が空く料理と、心和む温かな会話──。家飲みのお供にぴったりな本作を、オンエアに先駆けて予習するのはいかがだろうか。
文 / 佐藤希
小説投稿サイト「小説家になろう」で生まれたグルメファンタジー「異世界居酒屋『のぶ』」。2012年に同サイトで連載がスタートし、2014年に書籍化すると瞬く間に話題を呼び、今やシリーズ累計300万部を超える大人気作品となった。近年ライトノベル業界で流行の“異世界もの”でありながら、メインの舞台となるのは居酒屋の店内。おでん、からあげなど現代日本人になじみ深いメニューが続々と登場し、読者の食欲を存分に刺激する。コミカライズ版は英語をはじめとする4カ国語に翻訳され、2018年に放送されたアニメ「異世界居酒屋~古都アイテーリアの居酒屋のぶ~」の再生数は、全世界で2000万回を突破した。スピンオフ作品や公式レシピ集も発売され、“異世界グルメ”というジャンルを牽引している。
「異世界居酒屋『のぶ』」を語るうえで欠かせないものは、なんといっても料理。大将こと矢澤信之が異世界の住人たちにふるまうのは、前述のからあげや、湯豆腐、ナポリタンなど極めて庶民的なメニューばかりだ。しかし、舞台は中世ヨーロッパ風の古都・アイテーリア。キンキンに冷えた生ビール「トリアエズナマ」と、現地ではお目にかかれない料理を堪能した住人たちは、たちまち「のぶ」に魅了されていく。ときに幻覚を見てしまうほど居酒屋料理に心奪われる人々を描く本作だが、我々視聴者も安心できない。深夜に約30分間、だしの香りが漂ってきそうなおでんや、ジューシーなからあげの映像をたっぷりと見せつけられるため、“飯テロ”に苦しむ恐れがあるのだ。「トリアエズナマ」である必要はないが、酒とつまみを用意して観ることを強くオススメする。
魅惑的な料理とあわせて注目したいのは、監督・脚本を担当した品川ヒロシが、原作をきっちりと反映した世界観。古びた石造りの道が走り、鎖かたびらを身に着けた兵士たちが佇むアイテーリアの街並みには、原作者の蝉川夏哉も「異世界が来た!」と舌を巻いたといい、本作に「いい実写化だ」と太鼓判を押している。次項には品川と蝉川が撮影の裏側を語り合う対談を掲載しているので、チェックしてほしい。また、物語を彩るキャストたちも見逃せない。食に一途な職人気質の大将・矢澤信之を大谷亮平、「のぶ」の給仕で看板娘・千家しのぶを武田玲奈が演じるほか、「のぶ」の常連となる衛兵に、白洲迅、小林豊(BOYS AND MEN)、阿部進之介が扮した。彼ら以外にも個性的なキャストが異世界の住人として登場。堀田茜、新谷ゆづみ、八木アリサ、早霧せいなといった多彩な女優陣や、波岡一喜、梶原善、田山涼成、篠井英介らベテラン俳優が脇を固める。また「のぶ」の料理が魅力的すぎるあまりに繰り広げられる妄想シーンでは、ロバートの秋山竜次が毎回変わったいでたちで登場するので楽しみにしていよう。
-
矢澤信之(大将) / 大谷亮平
元は料亭の板前だった職人気質の料理人で、突然異世界のアイテーリアにつながってしまった「のぶ」の調理場を守っている。口数は少ないものの、時折ジョークを飛ばすお茶目な一面も持つ。
次のページ »
品川ヒロシ×原作者・蝉川夏哉インタビュー