「ディストラクション・ベイビーズ」の真利子哲也が新井英樹の同名マンガを映画化した「宮本から君へ」が、本日9月27日に公開された。本作で描かれるのは、2018年に放送されたドラマ版に続く物語。池松壮亮、蒼井優らが続投し、井浦新、一ノ瀬ワタル、佐藤二朗、ピエール瀧が新たに出演している。
映画ナタリーでは、主題歌「Do you remember?」を手がけた宮本浩次にインタビューを実施。ドラマ版にもエレファントカシマシとして主題歌「Easy Go」を提供した彼に、映画の感想、そして横山健、Jun Gray、Jah-Rahとの共同作業で生み出した「Do you remember?」について聞いた。
取材・文 / 大谷隆之 撮影 / 伊藤元気
主題歌が映画の方向性に影響した部分もあったのかな
──映画「宮本から君へ」、ご覧になっていかがでした?
熱量が、やっぱりすごかったですね。私は演技については素人ですけど、でもなんだろう……優れた俳優さんたちが、とんでもなく集中力の高い芝居でもってね。作り手もみんな一丸となって、1つの目的に向けて突っ走っている。そういう熱を、非常に感じさせる映画だなと。
──とりわけ心に残ったシーンはありますか?
そうですね……今回、ハードな描写もたくさん出てきますけど、私はむしろ、なんでもないシーンっていうのかな。もちろん作り手にとっては、なんでもないシーンなんて1カ所もないと思うんだけど。いわゆる日常の中で、ヒロインの靖子さんがふと口にするセリフに、グッとくる言葉がけっこうありました。
──中野靖子を演じた蒼井優さん、さすがの存在感でした。
あとは自分の作った「Do you remember?」という主題歌が、もしかしたら映画の方向性に影響した部分もあったのかな、とかね(笑)。これは私の勝手な想像なんだけど。歌詞の中の言葉がいくつか劇中のセリフに生かされたりしていたので。そんな妙なことは、考えたりしましたね。
──これはドラマ版にも言えることですが、確かに物語と主題歌が尋常じゃないレベルで響き合っている。そう感じる人は多いと思いますよ。
そうですかね。
作品の中にあるテーマが色褪せていない
──役者や作り手たちが、「宮本から君へ」という物語を通じて描こうとしたことが、宮本さんの歌にそのまま凝縮されている。あるいは、宮本さんの歌があって初めて、作り手が物語に込めたメッセージが完結する。そういった印象を強く受けました。宮本さんご自身は、どんなふうに感じましたか?
うーん……それはやっぱりね、この映画が完成するまでの、時間の重みというものがあると思うんです。今から30年近く前に、「宮本から君へ」という非常にアクの強いマンガがあった。原作者の新井(英樹)さんは、当時まだ20代です。今回、映画にもちょこっと出ておられましたけど。
──主人公・宮本浩の父親役ですね。
そのマンガが、世代を超えて読み継がれてきて。そして今回、真利子哲也監督が素晴らしい俳優さんたちと一緒に、30年という時間の経過をまったく感じさせない……いやむしろ、熱量が上がってるんじゃないかと思えるドラマと映画を作ってみせた。そうやって生き生きと躍動する作品を観るにつけてね、やっぱり自分も、大人の青春ソングを作りたいし。作らなきゃいけないなと。
──ああ、なるほど。
去年、ドラマのために書いた「Easy Go」という曲もそうだし、今回の「Do you remember?」もそうなんです。「宮本から君へ」の連載が始まった頃、私自身、主人公と同じく20代でした。でも、作品の中にあるテーマが、いまだにまるで色褪せてないように、自分の中にある色褪せない何か……まあ、青臭さって言ってもいいと思うんだけれど。男も女も持っている、動物的な切迫感みたいなものを自分も出したかった。だから、さっき物語と主題歌が響き合っているという言い方をしてくださったけれど……。
──はい。
映画を観てくださった方や、作品に関わった人たちが少しでもそう感じてくれたのなら、これ以上の喜びはないし。「宮本から君へ」というマンガが30年越しで映像化されて、見事に躍動する中で自分の楽曲も一役買っているとしたら、それは私にとっても非常に幸せな30年だったのかなと。まあ、個人的な感慨になっちゃうけど、それはすごく感じますね。
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根っこは何かを一途に大切にする気持ち
- 「宮本から君へ」
- 2019年9月27日(金)全国公開
- ストーリー
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文具メーカーで働く営業マン・宮本浩は、人一倍まっすぐで超不器用な男。会社の先輩・神保の仕事仲間である中野靖子と恋に落ちた宮本は、彼女の元彼・裕二と出会う。怒りで靖子に手を出した裕二に対して、「この女は俺が守る」と言い放つ宮本。この事件をきっかけに、宮本と靖子は心から結ばれる。しかし幸福な時間も束の間、宮本と靖子を待っていたのはあまりにも過酷な試練だった。宮本は愛する人のため、“絶対に勝たなきゃいけない喧嘩”に挑む。
- スタッフ
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監督:真利子哲也
脚本:真利子哲也、港岳彦
原作:新井英樹「宮本から君へ」(百万年書房 / 太田出版刊)
主題歌:宮本浩次「Do you remember?」(ユニバーサルシグマ)
- キャスト
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宮本浩:池松壮亮
中野靖子:蒼井優
風間裕二:井浦新
真淵拓馬:一ノ瀬ワタル
田島薫:柄本時生
小田三紀彦:星田英利
岡崎部長:古舘寛治
大野平八郎:佐藤二朗
真淵敬三:ピエール瀧
神保和男:松山ケンイチ
※R15+指定作品
- 映画「宮本から君へ」公式サイト
- 映画「宮本から君へ」 (@miyamoto_kimi) | Twitter
- 映画「宮本から君へ」 (@miyamotomovie) | Instagram
- 映画「宮本から君へ」 | Facebook
- 「宮本から君へ」作品情報
©2019「宮本から君へ」製作委員会
- 宮本浩次(ミヤモトヒロジ)
- 1966年生まれ、東京都出身。1981年にロックバンド・エレファントカシマシを結成し、1988年にシングル「デーデ / ポリスター」とアルバム「THE ELEPHANT KASHIMASHI」でデビューする。以後、バンドで22枚のオリジナルアルバム、1枚のミニアルバム、50枚のシングルをリリース。2017年には第68回NHK紅白歌合戦に出場した。2018年、シンガーとして椎名林檎や東京スカパラダイスオーケストラの作品に参加。2019年にソロ活動を開始し、シングル「昇る太陽」を7月24日にリリースした。12月28日から31日に開催される「COUNTDOWN JAPAN 19/20」に出演する。
- 宮本浩次「Do you remember?」
ユニバーサルシグマ - 2019年9月27日(金)先行配信
2019年10月23日(水)発売 -
初回限定盤 [CD+DVD]
税込2200円 / UMCK-7033 -
通常盤 [CD]
税込1210円 / UMCK-5681
記事内に記載されている商品の価格は、公開日現在のものです。