「君の名は。」配信記念特集|いのうえひでのり、新海誠への共鳴と郷愁誘う風景語る

新海誠はただもんじゃない

──ストーリーはどうでしたか?

こういうふうにつながるんだ!って驚きがありました。前情報を持たずに観たので余計に新鮮で。これが最先端のアニメーションのセンスなんだなと。

──時間軸の作り方が特徴的ですよね。

「君の名は。」より。

観ているときは「ああ、これは大林宣彦監督の『転校生』だな」って思っていたんです。ところがそこから物語が、一捻りどころか、二捻りぐらいしていって。時間のズレ方もほかの作品では感じたことがないような絶妙さで、いい意味で観客をだますのがうまいですよね。

──さまざまなエピソードが回収されていく展開が気持ちよかったです。

いのうえひでのり

口噛み酒のエピソードが印象に残ってます。若い人をターゲットにした青春ドラマでこんなモチーフが入ってくる作品は、ほかにちょっと考えつかない。エロティックで、妙な生々しさがありますよね。このモチーフを持ち込んでくる新海監督は、ただもんじゃないなと(笑)。しかもただのサブストーリーではなく、物語に大きく絡んできますし。

──モチーフの選択にも繊細な注意が払われていますよね。

そうですね。震災もテーマの1つに選ばれていて、青春ドラマとしての楽しさだけでなく、日本の現状を意識させられる物語でした。あと主人公の2人が素直ないい子で、少し昭和の香りがするようなところが、僕らやもっと上の層にも響いたんじゃないかな。

日本人が郷愁に浸れる風景とキラキラした東京

──本作は、若い人を中心に爆発的な人気を集めましたが、その理由はどこにあったと思いますか?

難しいな……なんなんでしょうね。青春映画の約束事をしっかり丁寧に守りながらも、ミステリアスな要素がふんだんに盛り込まれているからかな。

──ミステリアスですか?

三葉の御神楽のシーンなどにそれを感じました。横溝正史の小説のようにノスタルジーな気分をくすぐり、日本の原風景を思い出させるような要素がちりばめられているなと。「おおかみこどもの雨と雪」の里山、あとはやっぱり「となりのトトロ」で描かれた風景との類似を感じました。僕はそこの出身ではないけど懐かしかったし、多くの日本人が郷愁に浸れるのではないかな。あとは、新宿はこんなにきれいじゃないぞって思いました(笑)。

──(笑)。

「君の名は。」より。

でも三葉の目から見たら、東京もあれぐらいキラキラしてるのかもね。あと僕、家が新宿に近いんですけど、中国人の方々がよく聖地巡礼していて、人がすごかった。四ツ谷駅の前で写真を撮っている人もたくさんいて、普通の駅だよって思いつつ(笑)、作品の力を改めて感じましたね。

新海監督の「髑髏城の七人」が観たい

──新感線ファンの方々に本作をオススメするとしたらどう言いますか?

もともとアニメみたいな演劇を目指していたこともあり、新感線のお客さんはアニメ好きが多いと思います。だからコアなファンはこの作品も観てるんじゃないかな。オタク心をくすぐるようなモチーフがたくさん出てくるので。2.5次元を作っているつもりは僕にはないんですが(笑)、そのジャンルのファンの方々にも評価してもらっているみたいです。

──同じ作り手として新海監督に聞いてみたいことはありますか?

いのうえひでのり

お芝居とか観ますか?って聞いてみたいかな。新感線は過去にアニメーションでオープニングを作ったりしていたんです。「直撃!ドラゴンロック・轟天大逆転~九龍城のマムシ」という舞台で森川滋(紅優)さんに演出してもらったんですけど。アニメーション関係の人とも交流があったので、新海監督にもぜひ観にきてもらいたいですね。

──新海監督と一緒にお仕事をしてみたいですか?

舞台のOPとか作ってもらえたらうれしいですけど……それよりも新海監督にうちの戯曲で作品を作ってもらいたいですね。今やってる「髑髏城の七人」とか、どんなふうになるかすごく観てみたいです。

「君の名は。」
2017年7月26日(水)配信開始
「君の名は。」
ストーリー

1000年ぶりとなる彗星の来訪を1カ月後に控える日本。山深い田舎町に暮らす三葉は、町長である父の選挙活動や家系の神社の風習に縛られた生活にうんざりしていた。都会への憧れを強くしていく日々の中、三葉は自分が東京の男の子になる夢を見て、念願だった都会での生活を満喫する。一方、東京で生活する瀧は、山に囲まれた町で自分が女子高生になっている夢を見る。不思議な夢を繰り返し見る中で、記憶が抜け落ちていることに気付いた2人は、お互いが入れ替わっていることを理解する。残されたメモなどを通してケンカをしながらも入れ替わりを楽しみ、相手のことを気遣い始める三葉と瀧。そんな2人だったが、ある日を境に入れ替わりが発生しなくなり、連絡が取れなくなってしまう。瀧は三葉に会う決心をし、山奥の町を目指すが、そこには驚愕の事実が待ち構えていた……。

スタッフ

脚本・監督:新海誠
キャラクターデザイン:田中将賀
音楽:RADWIMPS

キャスト

立花瀧:神木隆之介
宮水三葉:上白石萌音
勅使河原克彦:成田凌
名取早耶香:悠木碧
藤井司:島﨑信長
高木真太:石川界人
宮水四葉:谷花音
奥寺ミキ:長澤まさみ
宮水一葉:市原悦子

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いのうえひでのり
1960年1月24日生まれ、福岡県出身。大阪芸術大学芸術学部舞台芸術学科に入学し、在学中の1980年に劇団☆新感線を旗揚げ。つかこうへいの戯曲からスタートした後、オリジナル作品を上演するようになる。「髑髏城の七人」「SHIROH」の演出が評価され第14回日本演劇協会賞を獲得。その後も第9回千田是也賞、第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞、第50回紀伊國屋演劇賞の個人賞などを受賞し、演劇界に地位を築く。2017年9月1日までIHIステージアラウンド東京にて「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season鳥」を上演中。その後、同館にて「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season風」「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月」が開幕する。