「最後の決闘裁判」|歴史を変えた<実話>ミステリー!巨匠リドリー・スコットが今なお物議を醸す“世紀のスキャンダル”に挑む

「ブレードランナー」「グラディエーター」など数々の名作を生み出してきた名匠リドリー・スコットの監督作「最後の決闘裁判」が10月15日に日米同時公開される。

本作は世紀を越えたスキャンダルとして、今なお歴史家たちの間で物議を醸す実話をもとにしたミステリー。キャストにはジョディ・カマー、マット・デイモン、アダム・ドライバー、ベン・アフレックらが名を連ね、デイモンとアフレックは「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」以来となる共同脚本も手がけた。

映画ナタリーでは本作の見どころを紐解く特集を展開。イラストレーター・チヤキによる描き下ろしイラストに加え、本作を深く味わうための3つのポイントも紹介している。

イラスト / チヤキコラム / 折田千鶴子

決闘裁判とは?

一向に解決を見ない争いの決着を神に委ね、命を賭けた決闘で解決する方法。戦いの強さによって決まるのではなく、真実を知っているのは神だけであり、その神が“正しい者”を勝利へと導く。究極の裁判=神判として、中世ヨーロッパで正式な法手続きとして広く認められていた。

チヤキが相関図&見どころ描き下ろし!

イラスト / チヤキ

チヤキによる描き下ろしイラスト。
チヤキによる描き下ろしイラスト。

リドリー・スコット~3つの注目ポイント~

先日の第78回ヴェネツィア国際映画祭では、質疑応答に白熱したリドリー・スコットが「もう一度映画を観たまえ!」と記者を一喝する場面も。そんな本作の見どころをさらに掘り下げていく。

1目撃者なし…迷宮入りの歴史的スキャンダルを映画化

左からアダム・ドライバー演じるル・グリ、マット・デイモン演じるカルージュ。

物語のベースは、14世紀のフランスで実際に起きた事件。戦地から戻った騎士ジャン・ド・カルージュは、愛妻マルグリットから衝撃的な告白を受ける。かつてともに闘った旧友ジャック・ル・グリから、乱暴されたという。しかしル・グリは無罪を主張し、目撃者はいない。ついにカルージュは、生死を賭した“決闘裁判”での決着を直訴する。果たして真実は、そして裁判の行方は──。3人の関係やそれまでの日々、当のコトの次第が、カルージュ、マルグリット、ル・グリそれぞれの視点を通して「羅生門」形式でつづられる。同じ出来事や瞬間が、こうもおのおのの主観でブレるのか。相手の言動に対する受け止め方が、こうもゆがめられるのか。それはもう衝撃的! 判決については諸説あり、600年以上経った今も歴史家の間で物議を醸している。

2名匠リドリー・スコットのもとに豪華キャストが集結

キャストの中でも一番の注目は、「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」でアカデミー賞脚本賞を受賞したハリウッドを代表する仲良しコンビ、マット・デイモン&ベン・アフレックがまたも共同で脚本を執筆し、再共演を果たした点だ。劇中デイモンは決闘に挑むカルージュを、アフレックは彼を嫌い陥れようとル・グリに加担する伯爵を演じ、敵対して火花を燃やす。「スター・ウォーズ」シリーズのカイロ・レン役で知られ、2度のオスカーノミネートを誇るアダム・ドライバーが、疑惑を掛けられるル・グリに。「フリー・ガイ」で注目を集めた美貌の新星ジョディ・カマーが妻マルグリットに。「デュエリスト 決闘者」でデビューした名匠による、オスカー5冠に輝いた「グラディエーター」にも通ずる迫力ある決闘シーンも必見だ。

3男女不平等の時代に声を上げたヒロイン像

ジョディ・カマー演じるマルグリット。

中世ヨーロッパが舞台でありながら、権力や周囲の圧力に屈せず、自身の不名誉をそそごうと声を上げた、気高き強い女性=マルグリット。この時代の理不尽な権力構造や男女不平等の実態は「夫が決闘で敗れたら偽証罪に問われる」など、その信じがたいほど残酷な厳罰や処遇にも表れている。これでは多くの女性は、不名誉も怒りも飲み込むしかない。「女性は夫と家のために犠牲を払うのは世の常」「常に夫の希望・欲望を満たすべき」等々の描写が劇中にはあふれる。だが、当初は苦悩と怒りを覚えつつ甘んじるしかなかったマルグリットに、共感を覚える女性は今も多いハズだ。だからこそ不当な暴力に抗い、ひるまず声を上げたマルグリットの勇敢さ、その強さや信念は、不穏な情勢が世界に広がる現代でなお、強いメッセージ性を伴って我々に突き刺さるのだ。

自身の名誉や地位のため、命を賭けて決闘裁判に挑んだ者たち──。今なお語り継がれ“胸をざわつかせる”裁判の決着を、あなたはどう受け止めるか。真実を見抜けるか、裁かれるべきは誰だと確信するか。世紀の決闘裁判の行方を、映画館で見届けてほしい。