宮沢りえの演技は、大したもんだよ(ふくちゃん)
──本作では、宮沢りえさんが本格コメディに初挑戦ということで、周りを振り回す自由奔放な役柄に挑まれました。
ふくちゃん 大したもんだよ。2世で、わがままで、自由奔放という役の演技もさることながら、自分の正しさをしっかり貫いて進んでいくさま。その両面を見事に使い分ける宮沢りえさんの演技は秀逸だよ!
上田 うん、確かに。
サイトウ 確かに……だけど、なんで上から目線なんだ?(笑) 宮沢りえさんが演じた有美さんって、熱意はあるけど政界のことを何もわかっていなくて周囲からあきれられるキャラクターじゃないですか。僕、居酒屋の社長をやっているんですけど、有美さんを見ていたら、自分も同じだなあと思ってしまったんです。名ばかりの社長になって、周りに全部サポートしてもらって、でも気に入らないことはガンガン言うから「そうは行かないんですよ」と従業員たちに説得されて。有美さんも熱量だけはあるけど、すべて空回りしてしまうから、周りの秘書たちがうまいことカバーする。重なるところあるじゃんと思って、そういう視点でも楽しめました。
上田 まさかのりえさん側に共感!? なるほどね。いつも周りが動いてくれるっていうことね。
──この映画は政界が舞台ですが、働いたことのある人なら共感できる部分があると思います。有美はいわば異動してきた上司で、現場のことをわかっておらず理想ばかり押し付ける。でも何かを変えることって難しかったり労力が掛かるので、部下たちは「今までそうやってきたから」とあきらめる。そんな“ことなかれ”な現状が、有美の「本当にそれでいいんですか?」という問いで変わっていくという……。多くの観客は、有美に背中を押されることはあっても、秘書側に共感するのかと思っていました。
サイトウ そうですよね、僕はずっと「有美さんがんばれ!」でした(笑)。あと笑ったのは、有美さんが秘書の谷村から駄目出しされるところ。有美さんが「気になることがあったらなんでも言って!」と促すから、谷村は正直に世間の声を伝えるんですよね。「今の振る舞いではただの不愉快な素人に見える」「やる気があるのはいいが、やり方をはき違えている」、さらに「スマホのカバーダサすぎ」まで。「何言ってもいいですよ」と言ったのは有美さんなのに、最終的にキレて立ち去ってしまう。僕が(谷村役の)窪田さんだったら「チェだぜ!!」ですね(笑)。
ふくちゃん 今日はもう以上でよろしいですか?
サイトウ これで締めるのは嫌だよ!
──(笑)。窪田さんと宮沢さんはもちろん、とにかくキャストの皆さんが芸達者だからこそ笑えるという部分もあると思います。ほかに印象的だった登場人物はいますか?
上田 やっぱり小市慢太郎さん(演じる濱口祐介)かな。秘書として本当にいろいろなトラブルをかいくぐって来たんだろうなというのが、佇まいから伝わる。テキトーなこと言ってるっぽくても説得力あるし。
サイトウ 本当に20年、30年と秘書をやってきた人の佇まいだよね。言ってることはめちゃくちゃなのに、ボケに見えない。
上田 有美さんがビルの屋上から「出馬をやめる!」と飛び降りる勢いで抗議したときも、小市さんは「なんか川島さんって政治家に向いてるんじゃない?」と冷静に眺めていたのがいいですよね。俯瞰というか、他人事っぷりが笑えました。あとこの映画って拍手のシーンが何回もありますけど、拍手っていっぱい種類があるんだなというのも印象的でした。支持者の熱狂的な拍手もあれば、秘書たちのうわべだけっぽい拍手もあって。
サイトウ 選挙特番の見え方が変わりそうだよね。この人、心からの拍手?とか勘繰ってしまいそう(笑)。
政治いじりをうまく笑いに落とし込んでいる(上田)
──海外では実話をもとに政治の汚職事件などをテーマにした作品が多く作られています。日本で、しかもコメディでこのような題材を取り扱うのは珍しいのではないでしょうか。
上田 日本はシリアスな作品だったらOKという空気がありますよね。真面目に描けばいいと。ちょっと茶化す雰囲気になったとたん、怒る人たちも出てくるので。
サイトウ 茶化したほうが絶対いいのにな!
上田 政治とお笑いって、日本だとタブーな感じになるじゃないですか。僕はそれにずっと引っかかっていて。漫才やコントで政治的なテーマを取り入れたりすると、笑える笑えない以前に「え、政治の話してるじゃん!」という空気になってしまうんです。僕、アニメの「シンプソンズ」が大好きなんですけど、政治色が強いエピソードもたくさんあって。
サイトウ 「シンプソンズ」ってそうなんだ?
上田 ガンガンいじるのよ。昔、ブッシュ元大統領(第41代米大統領のジョージ・H・W・ブッシュ)が「シンプソンズみたいな家族になるのはいけません」みたいに番組を批判したとき、そのお返しとしてシンプソンズの近所にブッシュさんが引っ越してくる回が放送されたんです。めちゃくちゃ面白いけど、日本ではできないんじゃないかな。その点、「決戦は日曜日」は政治いじりをうまく笑いに落とし込んでいて、これ茶化していいのかな?というギリギリのラインも丁寧に扱っていると思いました。
ふくちゃん これを観てみんなが笑える日本になってほしいものですね!
上田 そうだね、ふくちゃん。
──笑いもありながら、「最後は爽快さもあった」とおっしゃっていましたね。
上田 この映画が「大人になろうよ系映画」じゃなくてよかった。「しょうがない」とか「大人になろうよ」と言われて、黙って我慢することってけっこうあるんですよね。みんな自分も我慢してきたからって、そういう意味のないバトンをつなげてしまう。でも、いざやってみるとうまくいくこともあって。僕らもコント番組をやりたいとずっと言ってたんですけど、「無理だよ」と却下され続けて……でも誰かが思い切ってGOを出したら実現したんです。お笑い界でも世間でも「そういうものだから」で済ませることって多いと思うんですけど、一番根深いのが政界だと思っていて。だから映画の中で、谷村が動き出したときはグッと来ました。「大人になろうよ」で終わらなくてよかった!
──ありがとうございます。最後はふくちゃんに締めていただいてもよろしいですか?
ふくちゃん 政治に関心のない人でも、十分に楽しめる映画です! そして何より、今新しいことにチャレンジしたい方、何かに憤っている方、ぜひご覧ください! この映画を観に行かないやつはバカだ!!
上田 その通り。「決戦は日曜日2」「3」と続いたら、きっとみんな積極的にニュースを観るようになるよね。時事ネタを予習しておきたいから。
サイトウ 「2」「3」と作れますよ、これ。そのときは僕らもどこかに登場させてください! 「謝罪しろー!」とか叫ぶ役でいいので!
プロフィール
ゾフィー
左 / 上田航平(ウエダコウヘイ)
1984年12月17日生まれ、神奈川県出身。
右 / サイトウナオキ
1980年3月26日生まれ、青森県出身。
2014年に結成。「キングオブコント2017」「キングオブコント2019」にて決勝進出を果たし、後者では腹話術人形の“ふくちゃん”を交えたコントが話題となる。テレビ朝日のコント番組「お助け!コントット」「東京BABY BOYS 9」に参加。ネタ作り担当の上田はNHKラジオ第1「東京03の好きにさせるかッ!」にて不定期でコント台本を手がけている。サイトウは居酒屋チェーン店社長という顔も持つ。2021年12月17日、18日に第8回単独ライブ「あられもないポジティブ」を東京・ユーロライブで開催。
ゾフィー上田航平 (@zoffy_ueda) | Twitter
ゾフィー サイトウ ナオキ (@zoffy_x) | Twitter
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