北村一輝さんが「本当のスナックを教えてやる」
──瀧本監督は、役者を追い込んでいい画を撮るタイプの方ですよね。
そうかもしれません。現場ではいつも追い込まれていました。同じテイクを何回もやったり、次の日の表情に影響してくるから「寝ないよね」ってプレッシャーをかけられたり……。でも監督はそういうことを一緒にやってくれるので、みるみる痩せてしまったんですよね。
──瀧本監督が痩せてしまったんですか?
はい。毎朝5km走ってるそうで、どんどん痩せていってしまって心配でした。朝イチから頭を使う仕事だから、気持ちの整理をつけて、フレッシュな状態で現場に立ちたいそうで。とにかく瀧本さんはそんな人で、僕よりもストイックなんです。そういう意味ではスタンスが合いましたし、瀧本さんを暑苦しいと思ったことなんて一度もないですね。プレッシャーをかけられても、もちろんそれは芝居のために言ってくださっていること。僕も同じくらいの熱さでやりたかったし、「寝ないよね」って言われても「そんなの当たり前じゃないですか、何言ってるんですか!」と返せる自分でいたかったというか。それだけ追い込んでくださる監督なんて、ほかにいないと思うんですよね。
──共演者の方々との思い出はいかがですか? 斎藤工さんと北村一輝さんと、3人で飲みに行ったと伺いましたが。
僕は毎日現場にいたんですけど、共演者の皆さんは入れ替わりが多くてなかなかスケジュールが合わなかったんですよ。でもちょうど主要キャストが全員そろう日に早く撮り終わったので、「明日みんな休みになるから」と言って3人で飲みに行きました。4、5軒ははしごしましたね。
──朝までコースですか?
はい、朝までコースですね。工さんと北村さんは長いお知り合いなんですけど、ゆっくり食事に行くのは初めてで、積もる話があったみたいで。最後にスナックへ行ったら、北村さんがずっと「今度、俺が本物のスナックを教えてやる!」っておっしゃっていて(笑)。実現してないですけど、いつか連れて行ってもらいたいですね。
──(笑)。そんな場では、お芝居の話で盛り上がるんですか?
この作品の話はまったくしていなくて、完全にプライベートな雰囲気でした。ただお二人とも根っからの映画人なので、最近観た映画だったり、自分がやりたいことだったり、自然と映画の話にはなりました。僕はそれを聞いている立ち位置だったんですけど、すごくいい会でしたね。
──お三方の中で、一番お酒が強いのはどなたでしょう?
強いのは……北村さんじゃないかなあ。飲んでもあんまり変わらないので。
──その会に限らず、本作の現場を通してお二人から刺激を受けた点はありますか?
お二人とも、全然タイプが違うんです。工さんは、現場では淡々としているけど、出番のときにガッとスイッチが入る方。ご飯を食べに行くときは普通に接しましたが、現場では耶雲と木原坂としてあえて距離を置いていたので、あまり会話しませんでした。北村さんは、ベテラン俳優さんならではの余裕があって、飄々としていましたね。僕は集中して視野が狭くなっちゃうほうなんですけど、北村さんはいい意味でヘラヘラされているというか(笑)。本番が始まったら一気に切り替えて、カットがかかった瞬間にまたおしゃべりが始まるような、メリハリがはっきりしている方でした。演技に関しては、目で見ればテクニックを盗めるなんてことはないですけど、素晴らしいお芝居を目の前で見せていただいたなと感じました。
いまだにドキドキしてます
──今回は単独初主演を果たされましたが、現場で座長として意識したことはありますか?
“座長として”なんて言えるほどではなかったかもしれませんが、自分なりになるべくコミュニケーションを取るようにしたつもりです。自分の役のことばかりに集中して、共演者の皆さんに対してまったく気も使えないなんてことは、絶対にしたくなかったですし。セリフを覚えることだとか、現場に入る前にできることは最低限やって、ある程度余裕をもって撮影に臨もうという気持ちでした。
──そんな現場をクランクアップしたときは、どんな心境だったのでしょう?
スタッフさん含め大変だったのはみんな一緒なので、たたえ合いたいような気持ちでしたね。その場でプロデューサーさんや監督とビールで乾杯したんですけど、「いやあ、すごい現場でしたね」みたいな話をしながら1時間くらいはその場にいて、去りがたい感覚がありました。
──では、初めて完成作を観たときの感想は?
結末も知っているし、もちろん撮影しているからなんとなく画の予想もついているけど、仕上げるのが本当に難しい映画だと思っていたんです。だから完成版を観たときは、監督の手腕は本当に素晴らしいと思いました。監督が明確に描いていた画のパズルが、きれいにはまった作品になっているんじゃないかなと。初号では中村文則さんも近くで観てくださったんですが、終わってからすごく感動されていて、うれしかったですね。やっぱり僕は客観的に観られないので、みんながどんな顔をして観ていたのか気になりました。周りの方々の反応を見て、まあ……大丈夫だったのかな?って。
──安心できました?
まだ公開されていないので、全然安心はできなくて。今でもそんな感じです。この映画はプロモーションも難しいですし。
──ネタバレになるので、ストーリー的に話せない部分が多いですもんね。
そうですね。だから観客の皆さんからどんな反応が返ってくるのか、いまだにドキドキしてます。
- 「去年の冬、きみと別れ」
- 2018年3月10日(土)全国公開
- ストーリー
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結婚を控える記者・耶雲恭介は、“最後の冒険”としてあるスクープに狙いを定めていた。その相手とは、世界的に有名な天才カメラマン・木原坂雄大。猟奇殺人の疑いで一度は逮捕されたものの、姉・朱里の尽力により事故扱いとなり釈放されていた。真実を暴く本を出版しようと、担当編集者・小林良樹の忠告も聞かず木原坂に接近する耶雲。取材にのめり込んでいく耶雲をあざ笑うかのように、彼の婚約者・百合子にまで木原坂の魔の手が迫り……。
- スタッフ / キャスト
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監督:瀧本智行
原作:中村文則「去年の冬、きみと別れ」(幻冬舎文庫)
主題歌:m-flo「never」(rhythm zone / LDH MUSIC)
出演:岩田剛典、山本美月、斎藤工、浅見れいな、土村芳、北村一輝ほか
- 映画「去年の冬、きみと別れ」オフィシャルサイト
- 映画「去年の冬、きみと別れ」公式 (@fuyu_kimi) │ Twitter
- ワーナー ブラザース ジャパン (@warnerbrosjpn) │ Facebook
- 「去年の冬、きみと別れ」作品情報
©2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会
- 岩田剛典(イワタタカノリ)
- 1989年3月6日生まれ、愛知県出身。三代目 J Soul Brothersのパフォーマーとして2010年にデビューし、2014年にEXILEへ加入。俳優としても活躍し、2016年には高畑充希とダブル主演した「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」で第41回報知映画賞新人賞、第40回日本アカデミー賞新人俳優賞と話題賞、第26回日本映画批評家大賞新人男優賞に輝いた。主な出演作に「HiGH&LOW」シリーズ、ドラマ「ワイルド・ヒーローズ」「砂の塔~知りすぎた隣人」などがある。2018年には出演した河瀨直美監督作「Vision」が6月8日に、杉咲花とダブル主演を務める「パーフェクトワールド」が10月5日に公開されるほか、民放連ドラ初主演作「崖っぷちホテル!」の放送が日本テレビ系列にて4月にスタートする。