「去年の冬、きみと別れ」岩田剛典インタビュー|“負けず嫌い”と“向上心”───俳優・岩田剛典を作るキーワード

ありがたくも身一つな状態

──先日出演が発表された「Vision」の河瀨直美監督が、岩田さんに対して「国内の人気者なだけでなく、世界の映画スターへの道を獲得してゆけばいいよ」とコメントされていました(参照:河瀬直美「Vision」に岩田剛典、美波、森山未來、田中泯、夏木マリが出演)。今後俳優として、目標や挑戦したいことはありますか?

岩田剛典

はい。ありがたいお言葉をいただいて……。今回の瀧本智行監督ももちろんですし、河瀨監督のもとでお芝居させていただけたというのは自分のキャリアにとってもすごく刺激的な経験でした。今後は自分の固定概念というか、パブリックイメージにとらわれずに、幅広い演技ができる役者を目指していきたいですね。

──そういう意味では、この「去年の冬、きみと別れ」の耶雲恭介という役柄は、まさに岩田さんのパブリックイメージを裏切るような役柄ですね。

そう思います。だからいいタイミングでこの作品に出会えたと思うし、自分にとってすごくチャレンジングな役柄だった分、チャンスでもあったと感じています。

──結婚を控える耶雲は、独身のうちに大きなことを1つ成し遂げたいという気持ちから、婚約者よりも仕事を優先して没頭していきますよね。ご自身の仕事や家族のような大切な人に対するスタンスと比べていかがですか?

「去年の冬、きみと別れ」より。左から山本美月演じる松田百合子、岩田剛典演じる耶雲恭介。

僕は家庭を持っていないので、守るものもそう多くはないんです。たぶん家庭を持つと、生きる意味や目標のベクトルが自分以外のところに向かうのかなという気がします。だから今は、そういった意味であまり深く考えなくていい、ありがたくも身一つな状態で自分の好きなことを追求させてもらっていて。まあ両親がまだ元気なうちに、恩返ししたいなっていう気持ちはありますね。職業柄、一緒に過ごすのはなかなか難しいですけど、親も自分の活動を応援してくれています。僕にできることは、自分の仕事を観てもらって「元気だよ」ってアピールすることぐらいなのかな。

撮影中は、自分の生活を閉ざしていた

──では作品の話に移りましょう。まずは中村文則さんの原作を読んだときの感想を教えてください。

一人称がどんどん変わっていくというか、どの時系列で誰が話している文章なのかわからないのがこの原作の面白さだと思いました。小説ならではのトリックがちりばめられているというか。なので最初はなんとなくしか理解できなくて、何回も読み直すことで予想していきました。冒頭のイニシャルの意味もなかなかわからなかったのですが、映画の脚本では明確な答えが書かれていたので、「これなら!」と把握して。読者にゆだねる部分は原作の文学的な素晴らしさであり、映画ではそれがより噛み砕かれていると思います。小説では耶雲恭介という人物が必ずしもメインとしてフィーチャーされているわけではないのですが、映画は耶雲目線でストーリーが進んでいくので、若い方々にも理解しやすい仕上がりになっているんじゃないかなと。

──実際に耶雲という人物を演じるにあたって、大事にした部分は?

緻密な伏線によって成り立つパズルのような作品なので、その設計図を一番理解している瀧本監督が欲しい芝居、欲しい画にいかにフィットさせるかを大事にしました。もちろん役作りもしましたが、自分の感情に任せて芝居するというより、はっきりと決まっている結末へ持っていくために、逆算する芝居を求められていたんです。自分だけではさじ加減が計り知れないところもあったので、監督の頭の中を追いかけているような感覚でしたね。

──とはいえ怒りや愛情など、繊細な感情を表現しなければいけない部分もあったのではないでしょうか。

「去年の冬、きみと別れ」より、岩田剛典演じる耶雲恭介。

そのためにこの作品の撮影期間中はずっと、自分の生活を閉ざしていました。作品以外のところでは感情が揺さぶられないように、すべてにふたをして、世界をシャットダウンして。そこまでする俳優さんはなかなかいないと思うんですけど、自分はきっとそういうタイプなんでしょうね。

──これだけ多忙なスケジュールをこなされている中、そこまで作品に没頭されていたんですね。

何かしら複数の仕事を並行して進めることが多いのですが、その期間はたまたまこの映画に没頭できる環境だったので、集中できたのは幸せでした。やり残したことへの後悔は一生残ってしまうし、こういう作品だからこそ自分も妥協したくなかったですし。未熟なりにも現段階の自分が持っているポテンシャルはすべて出せたかなって思ってます。

「去年の冬、きみと別れ」
2018年3月10日(土)全国公開
「去年の冬、きみと別れ」
ストーリー

結婚を控える記者・耶雲恭介は、“最後の冒険”としてあるスクープに狙いを定めていた。その相手とは、世界的に有名な天才カメラマン・木原坂雄大。猟奇殺人の疑いで一度は逮捕されたものの、姉・朱里の尽力により事故扱いとなり釈放されていた。真実を暴く本を出版しようと、担当編集者・小林良樹の忠告も聞かず木原坂に接近する耶雲。取材にのめり込んでいく耶雲をあざ笑うかのように、彼の婚約者・百合子にまで木原坂の魔の手が迫り……。

スタッフ / キャスト

監督:瀧本智行

原作:中村文則「去年の冬、きみと別れ」(幻冬舎文庫)

主題歌:m-flo「never」(rhythm zone / LDH MUSIC)

出演:岩田剛典、山本美月、斎藤工、浅見れいな、土村芳、北村一輝ほか

羽田圭介が語る「去年の冬、きみと別れ」
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岩田剛典(イワタタカノリ)
1989年3月6日生まれ、愛知県出身。三代目 J Soul Brothersのパフォーマーとして2010年にデビューし、2014年にEXILEへ加入。俳優としても活躍し、2016年には高畑充希とダブル主演した「植物図鑑 運命の恋、ひろいました」で第41回報知映画賞新人賞、第40回日本アカデミー賞新人俳優賞と話題賞、第26回日本映画批評家大賞新人男優賞に輝いた。主な出演作に「HiGH&LOW」シリーズ、ドラマ「ワイルド・ヒーローズ」「砂の塔~知りすぎた隣人」などがある。2018年には出演した河瀨直美監督作「Vision」が6月8日に、杉咲花とダブル主演を務める「パーフェクトワールド」が10月5日に公開されるほか、民放連ドラ初主演作「崖っぷちホテル!」の放送が日本テレビ系列にて4月にスタートする。