1日1回は“吉田パニック”が(吉田)
──監督の三木康一郎さんは、ワンシーンの中の感情の変化を大事にされる方なのかなと感じました。三木さんから受けた演出で印象に残ったことはありましたか?
吉田 僕はすごくたくさん……死ぬほどありました。
竹財・猪塚 あははははは!
吉田 これまでは舞台に出演することが多くて、カメラに寄られる芝居というものの経験がなかったので、「目の動きだけで心情を体現して」と何度も言われました。数十年分の経験を監督に積ませてもらったなという気持ちです。
──前作では木島と久住のベッドの中でのキスシーンが大変だったそうですが、今回苦戦した場面は?
竹財 (吉田のほうを向きながら)いっぱいあるね!
吉田 たくさんありすぎて、どのシーンの話をしようかなと思ってる……。
猪塚・丸木戸 (笑)
吉田 一番は城戸と木島がタクシーの中でキスをするシーンですね。
竹財 大変だった?
吉田 あれ? 撮影の序盤だったからそう感じたのかも。
竹財 そうだっけ? 三木さんは、役者が感情の変化をちゃんと表現することを求めていて、カメラ前で“生きて”いないとOKをくれない方なんです。すんなりいかないときはモニターの前から走ってくるよね。
吉田 何度走ってこられたことか!
竹財 今回は僕は“受け”の演技が多かったので、苦労はあまりないかもしれません。ただ、城戸がたまにテンパるのでそれは大変でした。
猪塚・丸木戸 城戸がテンパる(笑)。
吉田 城戸パニック……吉田パニックが1日に1回は起きてね。
猪塚 そうなんだ。僕はそのパニックに気付きませんでしたけどね。
吉田 (竹財に)今回一番の吉田パニックはなんだったと思う?
竹財 絡みのシーンの吉田はすごかったね。芝居をしてはいるけど、集中しすぎたのかセリフを言わないから次の段階へ行けないんですよ。
吉田 すごく身に覚えがあります。極寒の中で素っ裸だったので、気持ちが飛んでたんでしょうね(笑)。
竹財 変なテンションになってたんだろうね。
猪塚 激しい絡みのシーンですもんね。ほかに考えなきゃいけないことや、やることがいっぱいあると確かにパニックにはなりやすいです。
吉田 なるよね。ボタンを外すのにこんなに神経を使ったのは生まれて初めてだと思った。
猪塚 “ボタン外し問題”ありますよね! 焦れば焦るほど外せない!
吉田 画角の中に体を収めなきゃいけないと思うと、第1次吉田パニックが起きてセリフが出てこなくなって……。本当にご迷惑をおかけしました!
竹財 城戸を演じるのは大変だったと思う(笑)。
丸木戸 そういえば、今回は服にテープが付いていなかったんですか?
竹財 今回はテープを一切使わなかったんですよ。冬服で厚い生地だったから、僕はボタンは外しやすかったですね。
猪塚 「ポルノグラファー」のときは薄い綿の生地だったし、ボタンも小さくて苦戦しました。
竹財 ちょっと大変だったね。
吉田 そうだね。……なんの話をしているんだ(笑)。
丸木戸 こういうディテールがいいんですよ! ドラマを観ているだけではわからない話ですしね。
吉田 そこも含めて楽しんでほしいです!
──猪塚さんは撮影日数は短かったのではと思いますが、現場に参加してみていかがでした?
猪塚 僕の撮影日は1日だけで、作品がクランクインしてから1週間くらい経っていたんです。現場の雰囲気はだいぶできあがっているだろうなと思いつつ、その1日にすべてを懸けるつもりで僕なりに意気込んでいました。
竹財 春彦は前作より包容力を増してましたね。
吉田 包容力……!?
竹財 城戸にはない包容力ね。
吉田 やめなさい!(笑)
猪塚 共演シーンの前に現場で竹財さんを待っていたのですが、前の仕事の関係で全然現れなくて。満を持して竹財さんが入られたとき、“猪塚”の部分で、やっと会えた!という気になったんです(笑)。それが今回のシーンにリンクしていたので、僕の中ではやりやすかったです。
竹財 前作では木島が春彦を翻弄してリードする関係でしたが、今回は春彦とのシーンは彼に包んでもらった気がします。個人的には、今回は背徳感があって春彦の目が見れなかった。あと、そわそわしたというか妙な空気感があったよね。こんなに距離あったっけ、俺は何か悪いことしたかな?みたいな気持ちになって。でも、猪塚くんは本番が始まると一瞬で昔の関係性に引き戻してくれました。
猪塚 そう言っていただけるとうれしいです。こんなことをご本人の前で話すのは恥ずかしいんですけど、キスシーンも普通にできた感じがあって。気持ちの持ちようなんですかね?
竹財 そうだね。すんなりチュッとした気がする。
2人の関係が変わるキスシーンが楽しみ(猪塚)
──丸木戸先生は本作でも撮影を見学されたそうですね。
丸木戸 「ポルノグラファー」のときはほぼワンシチュエーションだったので現場にいやすかったのですが、今回はロケが中心で、実はあまり滞在できなかったんです。3回現場にお邪魔したうち、2回は喪服のシーンでしたね。
竹財 喪服が好きなのかなと思いました。
丸木戸 (笑)。最初のお通夜と、最後の仏前でのやり取りの手前、病室、あとは蒲生田先生のお家を見てみたいという思いがあったので、その日に行かせていただきました。色っぽいシーンは見学していないので、まっさらな気持ちで映像を観たいと思っています。
──前作に比べて、キャストの皆さんが変わったと感じたところはありました?
丸木戸 木島先生は29歳の設定だったのですが、本当に若くなっている!と思いました(笑)。青さを感じられて楽しいなと。城戸さんは、髪が短いというのがまずありますが……。
吉田 ビジュアル的にかなり違いますね!
丸木戸 そうですね(笑)。城戸は前作ではサブ的な役割だったけど、今回はぶつかり合ったり怒鳴ったり笑ったり。いろいろな表情を見られるのが一視聴者としても楽しみなところです。
──ちなみに、竹財さんと吉田さんは、相手の素敵だったシーンを1つだけ挙げるとしたらどの場面を選びますか?
吉田 たくさんありますが、やっぱり病室のシーンは印象に残っています。竹財さん演じる木島の、蒲生田先生に対する気持ちや自分の父親への思いが想像できる。あと、木島から城戸への「君のそういうところ、僕は好きだよ」というセリフもいい。素敵な言葉をもらったなと思いました。竹財さんは特にないと思うんですけど……。
竹財 まったくないですね。
吉田 そこをなんとか!
竹財 嘘です(笑)。城戸の感情が爆発するところは思い出深いです。「みんながお前みたいに生きられると思うなよ!」というセリフ、カッコよかったなあ。あの一連のシーンはいい顔が見られたなとほくそ笑んでいました。
吉田 ああ……褒められるのは慣れない(笑)。
丸木戸 プロモーション映像にもちらっと出てくるシーンですよね。
──猪塚さんは、ご自身の出演シーン以外で本編を観るのが楽しみなところはありますか。
猪塚 吉田さんが大変だと言っていた、タクシーの中でのキスですね。城戸にとっては嫉妬や複雑な気持ちから始まるこの関係が、あの場面で一気に変わる。作品の核となる部分の1つなので楽しみです。
丸木戸 私たちは見ていないシーンだらけなので、楽しみですよね。メインキャラクター以外だと、蒲生田先生も意外と人気が高いんです。私が現場を見学させていただいたときは、蒲生田先生は臥せっていたので、木島や城戸としゃべっている姿はどんな感じなんだろうと期待しています。
- 「ポルノグラファー~インディゴの気分~」
- FODにて配信中
- ストーリー
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編集者の城戸士郎は、恩師の葬儀で大学の同級生だった純文学作家・木島理生と再会する。小説家を志していた城戸には、木島の作品を読んだことで自身には才能がないと気付き、筆を折った過去があった。しかしひさびさに顔を合わせた木島は、創作に行き詰まった様子。そこで城戸は、木島にポルノ小説の執筆を依頼し、ある目的のために彼を大御所ポルノ作家・蒲生田のもとへ弟子入りさせるが……。
- スタッフ / キャスト
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演出・脚本:三木康一郎
原作:丸木戸マキ「インディゴの気分」(on BLUE comics刊)
音楽:小山絵里奈
出演:竹財輝之助、吉田宗洋、猪塚健太、大石吾朗ほか
©丸木戸マキ/祥伝社 フジテレビジョン
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フジテレビが運営する動画配信サービス。現在放送中のドラマやバラエティ、懐かしの名作映画、アニメなど4万本以上が月額888円(税抜)~で見放題となる。PC、スマートフォン、タブレットなどでいつでもどこでも視聴が可能で、雑誌の最新号や人気マンガが無料で読める特典も。
- 竹財輝之助(タケザイテルノスケ)
- 1980年4月7日生まれ、熊本県出身。2004年に「仮面ライダー剣」で俳優デビュー。主な映画参加作に「未来予想図~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~」「ママレード・ボーイ」などがある。そのほか、NHK Eテレ「旅するスペイン語」に出演。
- 吉田宗洋(ヨシダムネヒロ)
- 1982年10月21日生まれ、長野県出身。「信長の野望・大志」シリーズや「男おいらん」など多くの舞台作品に出演。「信長の野望・大志 夢幻 ~本能寺の変~」が、2019年5月18日に埼玉・戸田市文化会館、5月21日から26日まで東京・シアター1010で上演される。
- 猪塚健太(イヅカケンタ)
- 1986年10月8日生まれ、愛知県出身。主な出演作はミュージカル「テニスの王子様」、テレビドラマ「今日から俺は!!」、舞台・映画「娼年」など。2019年9月からは舞台「A New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』」が東京と大阪で上演される。
- 丸木戸マキ(マルキドマキ)
- 2015年に「水曜の朝、午前3時30分」でデビュー。主な著作は「ポルノグラファー」「インディゴの気分」「アケミちゃん」「目を閉じても光は見えるよ」「オメガ・メガエラ」など多数。現在、on BLUE(祥伝社)にて「〈續・ ポルノグラファー 〉プレイバック」が連載中。
2019年5月23日更新