映画「ダンボ」特集 ティム・バートン×又吉直樹 | “そのままで、きっと輝ける”マイナスをプラスに転じる魅力的なキャラクター

又吉直樹が語るティム・バートン&「ダンボ」の魅力

愛さずにはいられないキャラクター

又吉直樹

子供の頃から、キラキラしてみんなから大人気の主人公よりは、その傍らにいる少し変わった登場人物に感情移入することが多かったんです。ティム・バートン監督が描く映画の登場人物は、周りから変わり者として扱われていても、愛さずにはいられないのが惹かれるポイントです。例えば「チャーリーとチョコレート工場」のウィリー・ウォンカはチョコレートを作る天才的な部分も好きなんですけど、口が悪かったり嫉妬深い部分も好き。友達にはなりたくないけど、嫌なやつだなとも思えず、かわいらしくて応援したくなる。ああいう存在がいるというのがうれしいですね。

「ダンボ」のように、弱点に見られる部分を力に変えていく「シザーハンズ」の主人公エドワードもお気に入りです。それから「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」には、特殊能力を持っているけどほかのことは苦手な人々が出てきます。彼らがチームとして機能したときに、それぞれが持っている特性を生かしてすごいことを成し遂げてしまうのが素晴らしいですね。

とにかくかわいい!みんなの翼となるダンボ

「ダンボ」

ダンボがとにかくかわいいです。むちゃくちゃいい意味なのですが、かわいすぎる! 劇中では最初に大きな耳のダンボを観たとき、みんな引くんですけど、かわいい!と思わなかったのか不思議(笑)。僕らは小さい頃からダンボに親しみがあるからですかね。かつてダンボに夢中になった大人も楽しめる作品です。

ダンボが飛ぶのはわかっているのに、飛んだ瞬間は感激でした。物語を背景にした感動と、映像としての感動もある。ダンボが羽に反応するのは、母象・ジャンボが飛びたいと思っていたからなのかなと思います。そして、ダンボという存在がみんなの翼となり、勇気となる。ダンボがどれだけのスピードで飛ぶのかも楽しみにしてください。

根底にある家族の物語

「ダンボ」

ダンボの世話をすることになるホルト一家をメインキャラクターとした、家族の物語でもあります。ホルト一家のミリーとジョーはお母さんを亡くしているので、母と引き離されたダンボの気持ちを理解していて献身的に尽くしている。ダンボとジャンボの関係を修復することは、2人にとって母親を感じることでもあるんでしょうね。そして、サーカス団員である両親の間に生まれた2人は、潜在的に自由になりたいという気持ちも感じていると思います。彼らの思いもダンボに託されて、勇気となったのではないでしょうか。

僕の解釈ですが、ミリーの「科学者になりたい」という夢には、負傷してサーカスに出演できない元看板スターのお父さんの生活を支えたいという気持ちがあると思います。科学館で、生活の役に立つ発明道具を父親に見せるシーンも深い意味があると思います。ミリーはサーカスの芸を覚えようとしないので、一見父と娘には軋轢があるように見えるんですが、そうじゃないんですよね。1つひとつのシーンに意味があるから、2、3回は観ないとですね。

変わり者でも羽ばたける!

「ダンボ」

本作には、他人と違っているとか、付き合いにくいと思われたとしても、その部分をいかに、自分の武器に変えていけるかというメッセージが込められています。みんなに大きすぎる耳を笑われたダンボは、耳を翼に変えたことで羽ばたけました。僕も自分の個性を生かせたのは、芸人になってからなのでダンボに似てると思いますよ。子供の頃はよく笑われていましたし、中1のときは五厘刈りにして頭が青かったので、先輩に「きゅうり」と呼ばれたり。ですけど、初めて文化祭で芸をして盛り上がったときはうれしかったですね。日常では違和感と受け取られるようなことも、芸人になると生かされる。そういう意味ではダンボやサーカスの団員さんと近いですね。

又吉直樹
「ダンボ」特集
「ダンボ」
2019年3月29日(金)全国公開
ストーリー

アメリカ各地で興行の旅を続ける落ちぶれたサーカス団で生まれた象のダンボ。ダンボは、サーカスの新たな看板スターとしてショーに出るが、大きすぎる耳のせいで観客の笑い者にされてしまう。ある日、サーカスの元看板スターだったホルトの子供たちが、ダンボと遊んでいると、大きな耳でダンボが飛べることを発見する。その“空飛ぶ子象”の噂を聞き付けた大興行師のヴァンデヴァーは、サーカス団をだましてダンボを手に入れようとたくらみ、愛する母と引き離してしまう。ダンボの姿に勇気付けられたサーカス団の仲間たちは、母象の救出に挑む。大空を舞うダンボが、世界中に“勇気”を運ぶファンタジーアドベンチャー。

スタッフ

監督:ティム・バートン

脚本:アーレン・クルーガー

音楽:ダニー・エルフマン

音楽監修:マイク・ハイアム

キャスト

ホルト:コリン・ファレル

ヴァンデヴァー:マイケル・キートン

メディチ:ダニー・デヴィート

コレット:エヴァ・グリーン

日本語吹替版キャスト

ホルト:西島秀俊

ヴァンデヴァー:井上和彦

メディチ:浦山迅

コレット:沢城みゆき

又吉直樹(マタヨシナオキ)
1980年6月2日生まれ、大阪府出身。吉本興業が運営する芸人養成所・NSCの東京校5期生で、綾部祐二とともに2003年にお笑いコンビのピースを結成。芸人として活躍する傍ら、作家としても活動し、2015年「火花」で第153回芥川龍之介賞を受賞。著書に「第2図書係補佐」「東京百景」「夜を乗り越える」「劇場」などがある。俳優として映画「舟を編む」やNHK大河ドラマ「西郷どん」などに出演。また2007年に舞台脚本として書き下ろした「凜」が映画化され、2019年2月に公開。映画版には脚本監修としても参加している。