「はねぼうし」を売るなんてとんでもない
──「天空シリーズ」(「DQIV」、「DQV」、「DQVI」)で印象に残っていることはありますか?
一番記憶に残っているのは「DQIV」の「はねぼうし」です。敵が村を襲撃しに来た際、主人公の幼なじみであるシンシアが呪文・モシャスで主人公に化けて、身代わりとなるんです。そのあとにシンシアの「はねぼうし」を手に入れることができるんですが、これを売る人は信じられない! 金に困って売るとかあってはならないだろ!って。僕はラスボスとのバトルでもキャラクターに装備させていましたから。人生に置き換えてみたら、シンシアの「はねぼうし」を売るやつは絶対ダメだろと思うし、人として外れてはならない道くらいに感じてますけどね。
──それは当時から思っていたんですか?
そうですね。物語の終盤になって「シンシアのはねぼうし?」みたいな人には、「あの子が守ってくれなかったら君は存在していないから」という気持ちです。
──強い想いを感じます。「DQV」のビアンカ、フローラ論争はいかがですか?
自分的にはビアンカです。ただ「絶対ビアンカだろ!」と言うつもりはないというか、フローラ側の人たちの言い分もわかる。でもフローラのほうがお金持ちだからみたいな、“逆玉”的な考えの人とはちょっと相いれないですね(笑)。
名付けることの責任と、だからこそ湧く愛着
──2016年に上演された舞台「ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー」ではテリーを演じられました。どんな思い出がありますか?
自分はそんなに二枚目のキャラではないですが、テリーはめちゃめちゃ二枚目じゃないですか(笑)。でも姉と生き別れた孤高の剣士なんて現実世界にはいないし、どんな役者でも0から構築するだろうなと思って、演じさせていただくことにしました。ほかの舞台作品でも人を斬ったときにズバッっていう効果音は流れるんですけど、「ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー」ではゲームの音が流れて。自分が剣を振ったことをきっかけにその音が出るというのは幸せな体験でした。スタッフ・キャストのチームも本当に素晴らしかったです。
──出演したことによって「ドラゴンクエスト」への思いに変化はありましたか?
終わっているのでネタバレを気にせず話していいと思うんですが、あの舞台が一番大事にしていたのは“名前を付ける”ことだったんです。冒険をする者に自分の名前を託す、その勇者が自分であることって、ゲームの一番最初に名前を付けることとリンクしていて。浦沢直樹さんのマンガ「MONSTER」では名前を奪うことの残酷性が描かれていますが、逆に言えば名前を付けるという行為は何かに思いを注ぎ込むことのスタートなんだなと思いました。そのあと「DQV」で子供たちに名前を付ける場面を思い出して、当時プレイしていたときも安易に付けてはならない感覚があったなあと。名付けることの責任と、だからこそ湧く愛着というのを、舞台を通して改めて感じましたね。
自分が世界を救うことができる
──これまでのお話で風間さんのドラクエ愛が伝わってきました。今回プロモーション用に「#ドラクエはいいぞ」というハッシュタグが用意されてるんですが、「ドラゴンクエスト」を一度もプレイしたことがない人にお薦めするとしたら?
「ドラゴンクエスト」には経験値という概念がありますが、僕はこれまでに見てきた景色や経験してきたことが自分の人生を豊かにしてくれていると思っています。映画やドラマでは主人公が世界を救うことを見届けますが、「ドラクエ」では自分が世界を救うことができるんです。そんな経験値が得られるものを、僕は今のところロールプレイング以外に知りません。なので、経験が自分の人生を豊かにすると思わない方はやらなくていいと思います。世界を救ったことがある人もやらなくていい。でもこの2つに当てはまらないんだったら、やったほうがいいです。
──なるほど(笑)。今回の取材で「ドラクエ」の魅力は語りきれましたか?
もっと話すこともできますが、大事なことは伝えられたと思います。あと今まで「ドラクエ」について熱弁してきましたが、実は「トルネコの大冒険」も同じくらい大好きで、とんでもない時間を費やしてきたと思います。どんなにうまくなったとしても出目が悪いとすぐにやられてしまい、それがたまらなく面白い。ゴルフと同じなのかなと思うんですが、あんなにシンプルであんなに難しいゲームはないです。よくできすぎてるんですよ。
──次はぜひ「トルネコ」のお話を聞かせてください。
プロフィール
風間俊介(カザマシュンスケ)
1983年6月17日生まれ、東京都出身。ドラマ「それでも、生きてゆく」「純と愛」「西郷どん」「麒麟がくる」「カムカムエヴリバディ」「silent」「初恋、ざらり」、映画「コクリコ坂から」「映画 鈴木先生」「猫なんかよんでもこない。」「鳩の撃退法」「先生の白い嘘」など多数の作品に出演している。舞台にも数多く参加しており、主演する「モンスター」が2024年11月30日、「こまつ座 第153回公演『フロイス -その死、書き残さず-』」が2025年3月より上演される。また2025年1月5日スタートの大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」には江戸の地本問屋のリーダー的存在・鶴屋喜右衛門役、1月放送予定のABEMAオリジナルドラマ「警視庁麻薬取締課 MOGURA」には警察署の管轄エリアの市長・安堂誠役で出演。