景子ちゃんが目に宿すものは強い(綾野)
──そのほか、お互いのここは観てほしいという部分はありますか?
綾野 高千穂のまなざしの聡明さ、ですかね。すごく惹き付けられたんですよ。そのまなざしがこの作品に光を作ってるというか、見るべきものの視点をちゃんと与えてくれてる。
──なるほど。
綾野 逆に僕が演じた犬養は目がすごく混濁してます。だから、彼は鮮やかな景色を見てないんですよ。でも高千穂は犬養には見れない鮮やかな景色というか「美しいものを美しい」と捉えられる瞳の美しさがある。
──何か気付いたきっかけはあったんでしょうか?
綾野 もともと思っていたことではあるんですが、景子ちゃんが目に宿すものは強い。それは芝居とは違う境地にあるもの。撮影初日で改めて気付いて確信を持ちました。これだったら自分はどんだけ混濁していてもいいという。
──北川さんのまなざしの強さが綾野さんの芝居に影響を与えたんですね。
綾野 「その医師は追ってはいけない」と言われておきながら、高千穂だけはちゃんと追う。公私混同する僕をしっかりと見てもらえてるという体感があるから無茶ができる。行っちゃえ! 大丈夫だ! 高千穂いる!と思ってました。
──確かに犬養の行動には破天荒とはまた違う荒さがあった気がします。
剛くんの父親役がすごく新鮮(北川)
──では、北川さんが思う綾野さんのお芝居の見どころを教えてください。
北川 刑事のバディものでプライベートの生活をしっかり描くのは、あまりないと思っていて。私は映画を観ていて、犬養さんが家に帰って、1人でお弁当を食べるシーンにハッとくるものがありました。なんとも言えないよさがあって、すごく好きなシーンです。
──ゴミなどが散らかった暗い部屋に1人で帰るところですね。
北川 犬養さん1人のシーンですし、私は撮ってるところも知らない。映像で観たのは、仕上がったものを観たときが初めてだったんです。ただ1人でお弁当を食べるだけなのに、この人はこうやって帰ってきてこういう空間でこういうものを背負って刑事として生きてるんだと。そういったバックグラウンドが一発で視覚的にドーンと入ってくる。なぜか涙が出ていました。
──犬養の生活が垣間見える瞬間でした。
北川 あと今回、剛くんの父親役がすごく新鮮。難病を抱えた娘さんの前では笑顔でいるシーンも好きですが、その裏でお弁当を孤独に食べるシーンが心に残りました。
綾野 今その話を聞いて、この役をやって本当によかったと思った。
北川 本当?
綾野 うん。犬養は悲しい人ではないんだけど、寂しい人ではあるんだよね。
──最後に安楽死を請け負う殺人犯ドクター・デスについて伺いたいんですが……。
綾野 ドクター・デスが僕らじゃないとは言い切れないですからね。僕の可能性もあるし、高千穂の可能性もある。
北川 そう言われたらそうでした(笑)。
──確かに……失礼しました。
綾野 僕たちは刑事という名のもと、バディを組んで、あらゆる可能性を考えてます。果たしてドクター・デスは誰なのか、警察の人間なのか、外部の者なのか。高千穂はそれをちゃんと見てる。彼女が見ている景色や世界はどういうものなのか?という視点で観ると、この作品は全然違う味付けに変わってくると思います。何より、まだ発表されていないシークレットキャストが複数存在しますので、お楽しみください。