コミックナタリー PowerPush - 「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 ~紋章を継ぐ者達へ~」

藤原カムイがヤングガンガンでの10年を語る

ヤングガンガン10周年への思い

──ヤングガンガンでの10年を振り返って、何か思い出はありますか?

ヤングガンガンは、まだそんなに年数が経ってないような気がしてました。あっという間に済んじゃった感じです。同じ10年でも、前作の「ロトの紋章」のときは相当しんどかった記憶がありますね。前作の連載を終わらせた時なんて、本当にもう真っ白になっちゃったみたいな感じでしたし。「雷火」も10年ぐらい続いたけど、あれが終わった時はスカーっとして「あー、終わった終わったー」みたいな感じだったんですけどね(笑)。

ヤングガンガンNo.24

──10年間続けてきて、もう辞めたいと思ったことはありますか?

何度となくあります。よく壁にぶつかるんですよ(笑)。日々やってると、やる気が全然起きない時っていうのは絶対にあるんです。そんな時は、まず1枚描くようにしています。扉絵とかを1枚描くと、続けてみたいというふうになるんですね。

──作業スケジュール的に辛いということはないんですか?

うん、それはないですね。僕はネームって1日ぐらいで本当にすぐできちゃうんですよ。下書きも1日でやっちゃう。ネームと同じ紙にちょっと細かく描いて、下書きになっちゃうんですけど。まあ、単行本の準備と重なっちゃうときはなるべくスケジュールを調整してもらって、その回だけ連載を休むというふうにしてもらっていますけど。

──すごいですね。もともと、マンガ家の仕事を始められた頃から、そんなしっかりしたペースで働き続けてきたんですか?

そうでもないです。子供ができたあたりから、「ちゃんとカチッとやんないとできないぞ」っていうふうになったんですよ。それで、だんだん規則正しい生活になってきたところがありますね。

マンガを描きながら、RPGをやっている

──これだけ長く連載を続けていると、前作から読んでいる読者も、もう大人になっていますよね。

「ロトの紋章」の読者って、義理堅いというか「これだけは絶対に好きです」みたいな感じの人がけっこう多いんです。ほかのマンガの単行本はみんな売っちゃったんだけど、これだけは持ち続けているみたいな話も、ちょこちょこ聞くので、ありがたいなあと思っています。今はそういう生の声を聞けるのって、仕事先とか、飲み屋で会った人とか、そういう人たちばっかりなんですけど(笑)。でもそういう人が、賢者とか竜王について熱く語ってくれたりするんです。

──今後も連載がさらに続いていくと思うのですが、読者にはどんなふうに読み続けてもらいたいと思っていますか?

「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 ~紋章を継ぐ者達へ~」最新20巻

お話としては結末に向かっていくことになるはずですが、これでファンタジーの世界としてのドラクエが終わるわけじゃないんで、まずはここでの決着をちゃんと見届けてほしいという気持ちがありますね。

──ファンタジー世界での少年マンガを描き続けていくことは、藤原先生のキャリアの中で、どういう意味があると思いますか?

意味というよりも、趣味? 非常に楽しいですね。マンガでRPGをやっているような感覚なんです。ゲームマスターはどこにもいないんですけどね。マップを広げて、「この街からここまで移動しなきゃ、でも旅の扉がないんだよなあ」などと考えていくんです(笑)。

──物語を描きながら、ゲームの世界を自分でも楽しんでいるんですね。それはオリジナルで世界を作り上げていくのとは別の楽しさかもしれないですね。

別ですね。だから僕の作品で、唯一ドラクエシリーズは「Kamui Fujiwara Presents」を掲げてないんです。

藤原カムイ

──では、その作品の掲載誌であるヤングガンガンに期待することはありますか?

規定の枠にとらわれない、新しい雑誌を目指してもらいたいなあということですね。スクエニは、他の出版社に比べるとかなりアウェイなポジションなので、他のマネじゃなく、もっと新しいものをやろうよという感じです。期待してます。

ヤングガンガンNo.24 / 12月5日発売 / 330円 / スクウェア・エニックス
ヤングガンガンNo.24
創刊10周年記念号!
  • 藤原カムイ描き下ろし創刊10周年ピンナップ付き
  • 原作:七月鏡一 作画:梟「牙の旅商人 ~The Arms Peddler~」連載再開
  • 原田雅史の集中掲載「トゥー・マッチ・ペイン」スタート
作画:藤原カムイ 脚本:梅村崇 監修:堀井雄二「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章~紋章を継ぐ者達へ~」20巻 / 12月25日発売 / 576円 / スクウェア・エニックス
「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章~紋章を継ぐ者達へ~」20巻

新時代の賢王、覚醒!

蜃気楼の塔へとやってきたポロン、レーベン、ベゼル達。塔の中で異空間の迷宮へと迷い込んだレーベンとベゼルは、賢王となるための試練を課せられることになる。はたして、無事新たなる賢王が誕生し、この迷宮から抜け出せるのか!? その時、ジパングには神器を狙うハロルドの魔の手が迫っていた。イサリは、自らの使命を帯びて、人ならざる者へと変貌しつつあるハロルドと対峙するが!? 導かれし者達の物語、第20幕。

藤原カムイ(フジワラカムイ)
藤原カムイ

1959年生まれ。1981年マンガ宝島(宝島社)にて「バベルの楽園」でデビュー。以降読み切りを中心に活動し、1987年に月刊コミックバーガー(スコラ)にて原作に寺島優を迎え「雷火」を連載。邪馬台国を揺るがす陰謀に立ち向かう青年を描き人気を博す。1991年には月刊少年ガンガン(スクウェア・エニックス)にて原作に川又千秋を擁し「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章」をスタート。TVゲームであるドラゴンクエストの設定を活かしヒット作に。同作は1996年に映画化され、2004年からはヤングガンガン(スクウェア・エニックス)で続編「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章~紋章を継ぐ者達へ~」を連載中。