絵本「かけっこネウ」は、子供たちの笑顔がイメージできる(髙山)
──ネヲ先生とはみこま先生による人気Webマンガ「かけっこネウ」の絵本が、今夏に「よみきかせキャンバス」で公開されます。みきた先生はこちらの脚本を手がけているんですよね。
みきた はい。私はもともとネヲ先生のファンだったんです。でも「私にやらせてください」と申し出たわけではなく、たまたまお話をいただいて。運命的なものを感じましたね。
──「かけっこネウ」のどういった部分に魅力を感じていましたか?
みきた キャラクターが本当にかわいらしくて魅力的で。特に羊のモフさんは、優しいルックスだけど、たまに「きみたちのあたまにもつまってそうだね こしあんが」とか、辛辣なことを言うキャラクター性が大好きです(笑)。でも猫のネウ、辰のロンロンのことを大事に思っていて、突っ走っていってしまう2人のことを「しょうがないなあ」と言いながらも付いていく姿が、とてもかわいいですね。
髙山 私もモフさんが一番好きなんです! 作品の世界観もめちゃくちゃかわいいし、キャラクターがたくさんいるので、推しを作れる楽しみがありますよね。
みきた わかります。私が特に好きなエピソードは42話と43話。雨が降ってきて、モフさんが「かぜひいちゃうし いこうか」と促すのですが、ネウは雨が好きで立ち止まり、結局3人で一緒に遊び始めてしまう。そのはしゃいでいる様子がすごく優しい空間で、大好きなシーンですね。
髙山 かわいい……。「かけっこネウ」はロードムービーのような作品だと思うんですが、「人生は、思わぬ方向に転がっていくことが楽しいんだ」という部分に、私はすごく共感するんです。「雨が降ってきた。じゃあこうしてみよう」などの発想の転換にワクワクさせられる。そこは大人が読んでも魅力を感じる部分だと思います。
──絵本の制作はどのように進んだのでしょうか?
みきた マンガはネヲ先生とはみこま先生が共同でお話を作っているので、急に私が入ってどう思われるかと少し不安もあったのですが、おふたりからは「絵本という形で『かけっこネウ』を見るのが楽しみ」と温かい言葉をいただきました。はみこま先生とも何度も話し合いを重ね、ネウたちの魅力は優しさだと思うので、そこを生かせるようなストーリーをご提案させていただきました。「人に柔らかく接すること」だけが優しさなのではなく、「人のためにがんばれること」も優しさである、という視点を意識しましたね。
髙山 私も絵本のネームを拝見しましたが、“優しさ”の意味を、口で説明するよりもスムーズに伝えられるような作品だと感じました。
──個人的には、最後の展開に心がほっこりしました。ご自身が考えたストーリーにネヲ先生のイラストが合わさって、どう感じましたか?
みきた ネームが完成するまでに何稿か重ねたのですが、ネヲ先生は本当に絵がお上手なので、直すところがほぼなかったです。事細かに伝えなくても、私の頭の中にあった世界観を完璧に作り上げてくださって。「さすがだな」という気持ちでいっぱいでした。
髙山 完成が楽しみです! みきた先生の書いたお話を読んで、まさに擬音の使い方がお上手だなと思ったんです。「バビュン!」という音とか、「読み聞かせをしたら子供たちが喜ぶだろうな」と、子供たちの笑顔がすでにイメージできて。さすがだなと思いましたね。
みきた ありがとうございます。私も完成をとても楽しみにしています。
絵本は未来への思いを込めて作っている(髙山)
──読者の方々に、絵本の世界をどのように楽しんでほしいですか?
髙山 なんとなく描かれた絵本って、この世に存在しないだろうなと思うんです。私もみきた先生も含め、絵本を作る人はきっとみんな「こうなってほしい」という未来への思いを込めて作っている。本がなかなか売れない状況の中、1文字ずつに熱を込めて描いているので、「AIが作ったものとは違う」ということを、頭の片隅に置いておいてもらえたらうれしいです。
──短い文章の中に、書き手の思いがぎゅっと詰め込まれているのが絵本である、と。
髙山 本当にそうだと思います。私は「がっぴちゃん」を執筆するとき、限られた文字数の中で「ここはひらがながいいかな、漢字がいいかな」「読点を打つべきかな」「どこで区切ろう」など、すごく細かく考えたのですが、きっと絵本作家さんはみんなそういうこだわりを込めているだろうなと。文章だけを手がけた私がこれだけこだわったので、絵も文もご自身で書かれる方は、もっと別のこだわりを持っていらっしゃるだろうなと思います。
みきた 私は子供たちにとっての絵本って、暇つぶしの道具ではなく、小さな旅をさせてくれる存在だと思っているんです。人生の教訓を教えてくれて、成長していく過程で少し先に待ち構えている経験をさせてくれる。例えば「火に近づくと危ない」ということを、絵本の中のキャラクターが「近づくとこうなっちゃうよ」と実践してくれたり。かと思えば優しさで包んでくれたり、大笑いさせてくれたり。一歩先にある広い世界をチラッと見せてくれる、先生みたいだなって。「よわもち」はそこまで大それた物語ではないんですが、「あなたに似ている存在はいるよ」と、読者のそばに寄り添いたいと思って描いています。子供だけではなく、大人も同じような悩みを抱えていると思うので、あらゆる人々にとって「よわもち」が一瞬でも安らげる場所になれたらうれしいです。
──ありがとうございます。ちなみにおふたりは、次回作の執筆の予定はあるのでしょうか?
みきた 私は今考えているものがあって、それを描いてみようと思っています。
髙山 すごく楽しみです! 私は「がっぴちゃん」の世界観を、本ではない何かで表現するアイデアをたくさん考えています。まだ実際に動けてはいないんですが、かわいいキャラにできたという自信を持っているので、形にできるようないいご縁があればうれしいですね。
プロフィール
髙山一実(タカヤマカズミ)
1994年2月8日生まれ、千葉県出身。2011年に乃木坂46の1期生オーディションに合格し、2012年にCDデビューした。2016年には初の短編小説「キャリーオーバー」を発表、同年ダ・ヴィンチ(KADOKAWA)で長編小説「トラペジウム」の連載を開始。同作は2024年にアニメ映画化された。2021年に乃木坂46を卒業。卒業後もタレント活動や、作家として絵本「がっぴちゃん」を出版するなど、幅広く活躍している。
高山一実STAFF (@takayama_staff) | X
たかやま (@takayama.kazumi.official) | Instagram
衣装協力
ワンピース:4万6200円/Velnica Room(Velnica)
イヤリング:3080円/luumii accessory
リング:3万7400円/ロードス(Pearl for Life)
サンダル:3280円/VIVIAN COLLECTION
スタイリスト:Toriyama悦代(One8tokyo)
問い合わせ先
Velnica Room:03-6323-9908
VIVIAN COLLECTION:https://vivian-collection.jp/f/contact
luumii accessory:https://luumiiaccessory.stores.jp/
ロードス:03-6416-1995
みきたりり
2025年に「第1回よみきかせキャンバス えほん応募コンテスト」でグランプリを受賞し、「よわもち」でデビューした絵本作家。自身のSNSを中心に、優しく暖かな雰囲気のイラストや4コママンガを投稿している。
──「かけっこネウ」制作のきっかけを教えてください。
私が2019年頃に描いたオリジナルの“十二支の動物たち”のイラストを、おはなし担当のはみこま先生がご覧になったことがきっかけです。
十二支といえば動物たちがその順番を決めるために競争をしたという有名な逸話があります。
そこから着想を得てはみこま先生より「このテーマで一緒にマンガを作らないか」とお声がけをいただき、共作というかたちで作品作りがスタートしました。
ただし、本作ではその競争を“勝負”として描くのではなく、のんびりした動物たちがそれぞれのペースで旅をするようなロードムービー的な物語を主軸にしています。
動物たちのかわいらしさや、ふとした瞬間の“本気”や“思い”を丁寧に描くことを大切にしています。
──はみこま先生とはどのように共作されていますか? また制作秘話などありましたらお聞かせください。
基本的にはキャラクターの設計や物語の構成ははみこま先生が中心となって考えており、いただいたアイデアをベースに2人で相談しながらマンガとして仕上げていくスタイルで制作しています。
例えば以前私がXで投稿していた“辰”のキャラクターはお面をかぶっているのですが、現在の「かけっこネウ」に登場する辰のロンロンもお面をかぶっており、そうした過去のモチーフをさりげなく踏襲してくださっています(笑)。
また登場する動物たちはそれぞれ“自分のカバン”を持って旅をしているのですが、何が入っているかはまだ内緒です。
もしかしたら、今後の物語の中で少しだけ明かされるかもしれません。
そういった細かな部分まで楽しんでいただけたらうれしいです。
──どのような思いを込めて「かけっこネウ」を制作されていますか?
「かけっこ」という競技は小さなお子さんからご高齢の方まで、きっと誰もが一度は経験したことのある共通の記憶だと思っています。
勝負ごとである以上、うれしかったり悔しかったり、さまざまな思い出がある方も多いのではないでしょうか。
だからこそ世代や性別を問わず多くの方に共感していただけるテーマとして、「かけっこ」を本作のモチーフに選びました。
例えば、小さなお子さんが運動会で転びながらもゴールを目指す姿や、必死に応援する親御さんの姿……。
そこに光る涙と汗、大きな声、そんな光景のすべてにどこかピースフルで心があたたかくなる瞬間があると感じています。
この作品でもそんな優しい世界観を描いていけたらと思いました。
動物たちがかけっこに挑んだり、のんびり旅をしたりする姿に、読者の方々がそれぞれの立場で共感したり、応援したくなったり……。
日常のなかでほっと一息つける、ふと寄り添えるような作品を目指しています。
プロフィール
ネヲ
イラストレーター・マンガ家。2020年に月刊コミックジーン(KADOKAWA)にて、Eveがマンガ原作とプロデュースを務めるマンガ「虚の記憶」で連載デビューした。2024年からはポケモン公式X・ポケモン情報局で「雨のちヌメラ」を連載。同年にはオリジナルWebマンガ「かけっこネウ」をSNSで連載開始。2025年4月には「かけっこネウ」の作品アカウントが設立され、同作の絵本化やカプセルトイの商品化などさまざまな展開が予定されている。