コミックナタリー PowerPush - 吉河美希「山田くんと7人の魔女」
男子も女子も、入り乱れてキス三昧!「ヤンメガ」の吉河美希が放つ、型破りな学園ラブコメ
今は学園もの以外を描く気はまったくない
──先ほど、昔からマンガはあまり読まなかったと仰ってましたが、「ヤンメガ」の公式ガイドブックで、もともとマンガ家を目指していたわけじゃない、ってお話しされてましたよね。どうしてマンガ家になろうと思ったんですか?
高校生のときに美術の授業で、描きたかった絵の世界観を1枚の絵でうまく表現できなかったんですね。卒業した後はグラフィックデザイナーを目指して専門学校に入ったんだけど、なんか違うなって2カ月で辞めちゃったんです。ぽっかり時間が空いたので、やり残したことをやってみたくなって。あのとき描けなくて悶々としてた絵の世界観が今なら描けるかもしれない、それも1枚絵じゃなくてマンガなら表現できるかもしれない、と思ったのがきっかけです。まずペンとか、マンガを描く道具を揃えにいくことから始めました。
──どうしてマガジンに?
マガジンはすごく好きで、唯一読んでたんですよ。私が高校生の頃ってちょうど「GTO」が始まった頃で夢中になって、弟は加瀬(あつし)さんのマンガが大好きだったので、2人で毎週交互に買ってました。
──やっぱりヤンキーじゃないですか(笑)。
だから、ヤンキーじゃないですよ!(笑) それで新人賞の締め切りが9月30日っていうのを見て、「そこに間に合わせるように描こう!」と思って。
──絵では表現しきれなかった世界観、原稿用紙ではうまく描き表せましたか。
はい。描き終わったら「あーすっきりしたー」ってすごい自己満足しちゃって。マンガ家になるつもりとかまったくなかったんで、マガジンに送ったことも忘れてたんですよ。そしたら10月後半くらいに編集部から「あ、マガジン編集部の者ですけど、担当につくことになりました」って電話がかかってきて、思わず「はあ!?」って(笑)。本当にすっかり忘れてたので、お父さんの知り合いを訪ねて、ネパールに行く準備をしてたんです。
──それはまたぶっ飛んだ(笑)。投稿したマンガはどんなストーリーだったんですか?
江戸時代の鎖国が現代までそのまま続いている世界のお話でした。いまだに黒船が日本に何度も攻めてくる、みたいな。
──わ、SFっぽいお話だったんですね。意外でした。吉河さんと言えば「ヤンメガ」も「山田くん」もそうですが、学園もののイメージがやはり強いので。
今のところは、学園もの以外を描く気はまったくないですね。
──そこまで言い切るのはなぜ?
学園もの以外は、あんまり楽しそうだなって思わない。なんででしょうね。「学園ものしか描かないなんて、学校生活楽しかったんだろうね」ってよく言われるんですけど。
──そうなんですか?
いや、全然そうでもない……(笑)。少なくとも、あの頃に戻りたい、とか一切思わないです。学生時代は貴重な経験ができて今思えば良い思い出です。当時は学校が楽しいなんて思った事なくて、「なんで毎日、早起きして行かなきゃいけないんだ」って(笑)。でもそんな学生生活で得た一番大切なものが友人だったんですよ。その友人たちとは今でも変わらず集まって、くだらない話をして笑える仲なのであえて学校生活に戻りたいと思わない。とにかく勉強したくなかったんですよね。今でもたまに「明日テストなのに原稿の締め切りでどうしよう」って悪夢をよく見ます(笑)。
──楽しくなかったからこそ、マンガの中では理想の学校生活を実現したい、とか。
そうかもしれないですね。なぜかデビューしてから打ち合わせで出すネームでも、いつも学園ものを描いてた気がします。
担当編集 描いてましたね。と言うか、それ以外見たことない。原稿になったもの以外のネーム、ほとんど持ってきてないですから。
──えっ!?
担当編集 本当にありえないですよ(笑)。そんな新人、普通に考えたらまず相手にされない。でも吉河さんは描くと必ず雑誌ですごい人気を取って、結果を出してたので。
あはは。「ダメだ、面白くねえなこれは」って思っちゃうともう描けないんですよね。でもキラリと光る物がみえてくると、「やばいこれ、超面白い!」って止まらなくなる。
──吉河さんにとっては、それが学園ものってことなんですね。
そうですね。私は、楽しい学園生活を描きたい、というのが「ヤンメガ」の頃から作家としての根本にあるんです。楽しい学園生活を描いて、読者の人に喜んでもらえるのがすべて。それが誰にも必要とされなくなったら、いつマンガ家を辞めてもいいなという気持ちです。「山田くん」は「ヤンメガ」とはまた違った要素として、変わった能力を手に入れたらどんな学校生活を送れるか? っていうところを、ワクワクしながら読んでもらえたらなと思ってます。もちろん「ラブ」の部分も含めてね!
あらすじ
進学校である朱雀高校一の問題児・山田は今日も先生に怒られて超不機嫌。そのうえ、優等生の白石うららと一緒に階段から落っこちて、死んだ!
と思ったら白石と体が入れ替わっていた!! 相性サイアクな2人の運命が、不思議な力をきっかけに結びつく!!
キスするとナニかが起こるスクール・ラブ・コメディ開幕!!
最新5巻は2013年2月15日より発売中。また講談社のサイト・コミックプラスでは、スマートフォン&タブレットでも読める第1話が、全ページ公開されている。
吉河美希(よしかわみき)
2003年マガジンSPECIAL(講談社)にて「GLORY DAYS」でデビュー。以降、真島ヒロのアシスタントを経て、2005年に少年マガジンワンダー(講談社)に「ヤンキー君とメガネちゃん」を掲載。読み切りや短期連載での掲載を経たのち、翌年、週刊少年マガジン(講談社)にて正式連載が開始した。不良少年とクラス委員長の元不良少女が漫才のような掛け合いを繰り広げるコメディは人気を博し、2010年にドラマ化。2011年に完結した後、2012年2月から「山田くんと7人の魔女」の連載を開始した。
2013年2月18日更新