コミックナタリー PowerPush - 大須賀めぐみ「VANILLA FICTION」
「魔王」「Waltz」から一貫して「絆」を描き出す作家性の源泉に迫る
ゲッサン(小学館)で連載中の、大須賀めぐみ「VANILLA FICTION」2巻が発売された。伊坂幸太郎を原作に迎えた「魔王 JUVENILE REMIX」「Waltz」に続く、大須賀にとって初のオリジナル作品だ。
コミックナタリーではこれら3作品に通底する要素を明らかにすることで、彼女の作家性を浮き彫りにすべく、取材を試みた。その結果、浮かび上がってきた新作のテーマとは……。
取材・文/坂本恵、安井遼太郎 編集・撮影/淵上龍一
大須賀めぐみ作品の系譜
「魔王 JUVENILE REMIX」「Waltz」はともに、主人公らがコンビを組んで進んでいく物語だった。そこで描かれていたキャラクター同士の強い絆は、大須賀作品を貫くテーマとして「VANILLA FICTION」でも引き続き登場する。これまでの作品内容を、絆に焦点を当てて振り返ってみよう。
「魔王 JUVENILE REMIX」テーマ:兄弟の絆
他人に自分の言葉をしゃべらせる能力「腹話術」を持つ高校生・安藤と、その弟・潤也。物語前半では安藤が、巨大な組織との死闘を繰り広げる。後半では潤也が安藤の死にまつわる秘密を探り、兄の思いを遂げるために戦う。
「Waltz」テーマ:バディの殺し屋
氏名も住居も持たず、殺しで日銭を稼ぐ少年。彼は裏稼業のエージェント・岩西から「蝉」という名前と、殺し屋としての仕事を与えられる。岩西の元で働くうちに蝉の中に芽生えていく、プロの殺し屋としての自覚と信頼。お互い悪態をつきながらも離れられない蝉と岩西は、力を合わせて死線をくぐり抜けていく。
「VANILLA FICTION」テーマ:???
バッドエンドしか考えられない小説家・佐藤忍はある日、傷つき汚れた少女・エリに出会う。エリを連れた佐藤、そして2人と運命をともにする正体不明の男・太宰。彼らを狙う刺客からの逃避行が、否応なしに幕を開ける。佐藤やエリ、太宰の間にどのような絆が築かれていくのかが、本作の見どころとなりそうだ。
あらすじ
「世界を救うために、とある地でクッキーを食べる」そんな馬鹿げた現実を突きつけられた佐藤忍は、一気に片をつけるべく、エリ、太宰治とともに最短ルートで旅立った……はずだった。
行き着いたその先に立ちはだかるは、太宰に続くもう1人の「不死者」! そして迫り来る、もう1人の「指輪の持ち主」!
ついに判明する敵チーム。佐藤忍を待ち受ける、さらなる窮地。どう考えてもバッドエンドにしか……ならない!!
大須賀めぐみ(おおすがめぐみ)
12月21日生まれ。千葉県出身。2002年、少年サンデーR増刊(小学館)にて「トンパチ」でデビューした。代表作は伊坂幸太郎の小説「魔王」を少年向けにアレンジした「魔王 JUVENILE REMIX」、同作のスピンオフ「Waltz」。2012年よりゲッサン(小学館)にて、オリジナル作品での初連載「VANILLA FICTION」をスタートした。