コミックナタリー Power Push - UTOPIA

藤子ワールドの原点がここに 幻の単行本、ついに完全復刻

幻の単行本ついに完全復刻!

松本零士蔵の「UTOPIA 最後の世界大戦」原本

藤子不二雄の単行本デビュー作品として知られ、多くの逸話を持つ「UTOPIA 最後の世界大戦」。原本は世界に10数冊しか現存せず、オークションに出品されれば数百万はくだらない。この伝説といえる単行本が、小学館クリエイティブによって完全復刻された。

「UTOPIA 最後の世界大戦」は、正確には過去に2度復刻されている。しかし従来の復刻版では、表紙が描き下ろしに変更、カップリング作品の排除など、オリジナルの再現は叶わなかった。全ての問題をクリアした完全版は、今回が初となる。藤子ファンだけでなく、マンガ研究者も必読の資料性が高い復刻だ。

  • POINT1 大城のぼる執筆の表紙を再現
  • POINT2 ほかのマンガ家によるカップリング作品「覆面団」収録
  • POINT3 本文2色も当時のまま

藤子ファン待望!完全復刻に各界から歓喜の声

石黒正数

UTOPIA完全復刻!!
あの、「まんが道」で満賀と才野(A先生とF先生)が、氷素爆弾により氷付けになった未来都市を競うように描いたUTOPIA。
上京する前の満賀と才野(藤子不二雄先生)の初単行本。
長らく幻の単行本だった「UTOPIA 最後の世界大戦」の復刊に興奮を隠す事が出来ません。
UTOPIAって、単に藤子不二雄先生の初期作品であるというだけでなく、まだ無名に等しかった頃の御両名が漫画家に憧れて憧れて描いた作品という、
創作の原点、意欲の象徴とも言える記念碑的な作品に思えてならないのです。
復刊の知らせを耳にしてからというもの、胸をかきむしるほど漫画家に憧れた自分自身を思い出し、ソワソワ落ち着きません。
「まんが道」を読み直しながら正座して待機します。

石黒正数プロフィール

1977年生まれ。2000年「ヒーロー」で講談社アフタヌーン秋の四季賞受賞、同作品でデビュー。代表作「それでも町は廻っている」(少年画報社)「木曜日のフルット」(秋田書店)「ネムルバカ」(徳間書店)ほか。

黒田硫黄

世界の終わりはいつも甘美だ。なぜあんなにうっとりさせるのだろう。
ノストラダムスより、断然米ソの核戦争だ。渚にて。キューバ危機。共存しない向うの世界。すこし前の時代の気分を嗅いでいた。中学生だった。21エモンと、宇宙戦争と、フランケンシュタインを同じ年に読んだ。
自分の終わりについての想像は、甘いがあまりに利己的だ。世界の終わりは、公共性がある。エクスキューズなのだ。本作の中の、あの人間の大統領のはてしない恰好よさを見よ! たくさんの中のひとりだから、恐ろしくイカすのだ。
若い二人の作者の、巨大な全体をつかみ出そう、語ろうという格闘と、甘い陶酔感が満ちている。後年の作品にも脈々としている。それ以上に懐かしく知っている。この感じ。
「明日世界はこうなるかもしれない」
眠る前、夜毎、布団の中で。

黒田硫黄プロフィール

1993年、講談社・月刊アフタヌーン「四季賞秋のコンテスト大賞」を「蚊」ほか3編で受賞し、デビュー。2003年、「セクシーボイスアンドロボ」(小学館)で文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞(同作品は2007年にTVドラマ化)。同年夏には、「茄子」(講談社)の一篇「アンダルシアの夏」を原作にしたアニメ「茄子 アンダルシアの夏」が劇場公開された。「大日本天狗党絵詞」「あたらしい朝」(以上、講談社)「大王」「黒船」(以上、イースト・プレス)など、著作多数。

大槻ケンヂ

古書店のガラスケ―スの中、その存在だけで名作のオ―ラを放ちまくっていた「UTOPIA」!日本漫画の黎明期そのもの。国の宝ですよ。復刻の裏にドラえもんとのび太の活躍ありと見た!

大槻ケンヂプロフィール

1966年東京都出身の男性シンガー。ソロでの音楽活動ほか、筋肉少女帯、特撮などバンドでも活躍。作家としての顔も持ち、小説「グミ・チョコレート・パイン」は2007年に映画化されている。

椎名高志

「藤子不二雄」の両先生がこれを執筆されたのは、たしか18、9歳の頃だと思いますが…改めて読んで、画力や構成力などの技術的な面でのレベルの高さはもちろん、若い才能の輝きというか、漫画へのひたむきでまっすぐな愛情と情熱に圧倒されます。背伸びした主題、あふれんばかりのSFマインド、どのページからも荒々しい熱気が放射されてます。そしてこのボリューム! 太陽の中心部をのぞいて、そこで燃えている熱量がどれほどのものなのかを垣間見た思いです。
希少本としても有名だったこの作品を、完全復刻版としてまた手軽に手に取れるようにしてくださった関係者のみなさんに感謝します。

椎名高志プロフィール

6月24日、大阪府生まれ。1989年、「Dr.椎名の教育的指導!!」(週刊少年サンデー)でデビュー。1992年、「GS美神極楽大作戦!!」で、第38回小学館漫画賞を受賞。 代表作は「GS美神」のほか、「MISTERジパング」「一番湯のカナタ」。2005年33号より「絶対可憐チルドレン」連載中。

中川翔子

藤子不二雄先生、この度は「UTOPIA」の復刊、本当におめでとうございます!
伝説の「まんが道」を読み、キャラクター達の瞳の輝きや線の一本一本にお二人の未来へこめた想いが見えて泣けてきます。
お二人で力をあわせて一生懸命描き上げた「UTOPIA」。
読んでいてドキドキ鳥肌が止まりません。この感動を今感じることができて嬉しいです。
ここからすべてがはじまったと思うと胸がいっぱいになります。
地球の財産と言っても過言ではない漫画が、こんなにも充実している日本に生まれて良かったです!
大切に読んで、こどもにも受け継いでいきたいと思います。

中川翔子プロフィール

1985年生まれの女性アイドル。2001年に芸能界デビュー、2006年にはシングル「Brilliant Dream」で歌手デビュー。ほかにも声優やイラスト、マンガ家、ドラマ出演など、多方面で活躍するマルチタレントぶりを発揮している。愛称は「しょこたん」。

Bose(スチャダラパー)

このあと、世界中の誰もが知っている素晴らしい作品を作り続けることになる2人が、
まだまだほとんど何も成し遂げていない頃の作品なので、
「今読めばまだまだ未熟な部分もあるじゃないか」と、
自分は漫画家ではないけど、発想やいろんな部分で畏れ多くも比べてみたりして、
ちょっとでも勇気が出るんじゃないか、というような期待もあったのですが、
よーく考えたら、デビュー前の20歳ぐらいのときに、すでにこのレベルなんですよね。
無理無理無理(笑)。

Bose(スチャダラパー)プロフィール

スチャダラパーのMC担当。1990年にアルバム「スチャダラ大作戦」でデビュー以来ヒップホップ最前線でフレッシュな名曲を日夜作り続けている。個人活動としては、テレビ・ラジオ・CM出演、ナレーション、執筆、ゲーマーなど、幅広いジャンルで活動中。2010年にはデビュー20周年を迎え、2月24日にベストアルバム「THE BEST OF スチャダラパー 1990~2010」をリリース。さらに、20周年記念イベントを東京、大阪で開催した。2011年も様々な活動を行い、7月には昨年に引き続き日比谷野外大音楽堂で「スチャダラ2011『オール電化フェア』」を開催、9月には大阪城音楽堂で「スチャダラ2011~それぞれの秋~」を開催する。

ヤマグチノボル

藤子・F・不二雄先生の作品がなければ、今のぼくはなかったと言っても過言ではありません。代表作の「ドラえもん」。ただたんにのび太が、道具でなんとかする漫画じゃなかった。そこにはSFやミステリー、オカルト、あらゆるテイストが詰まったおもちゃ箱のような漫画でした。一作一作、ためになる雑学に満ちていて、興奮しながら読んだものです。その上、なんといってもセリフ回しがよかった。簡潔ながら、言葉を選ぶセンス、ひらがなとカタカナのチョイス、そしてあの独特の間。ぼくはそういったセンスをF先生から学んだといっても過言ではありません。そこはかとないおかしさと言うのでしょうか。まさにF先生は生粋のエンターテイナーでありました。そんな藤子不二雄先生の原点とも言えるべき「UTOPIA 最後の世界大戦」が復刊されるとのこと。こんなめでたい話はありません。速攻買い求めて聖書にしたいと思います!

ヤマグチノボルプロフィール

ライトノベル作家。代表作「ゼロの使い魔」(メディアファクトリー)。アニメ4期が来年放映予定。

ゆうきまさみ

『21エモン』が好きで、『のび太と鉄人兵団』が好きな僕が生まれる5年も前、藤子作品に初めて触れる10年も前に発表された作品の復刻だ。
もちろん僕も初めて読むので、新鮮な気持ちで楽しみたいと思う。

ゆうきまさみプロフィール

北海道出身。1980年、月刊OUT(みのり書房)掲載の「ざ・ライバル」でデビュー。代表作は「究極超人あ~る」「機動警察パトレイバー」「じゃじゃ馬グルーミン★UP!」など多数。現在は週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて「鉄腕バーディーEVOLUTION」を連載(単行本第8集まで発売中)。

吉崎観音

幻の作品復刻、おめでとうございます。
あまりにも偉大で、記念碑的な作品にどのようなコメントをすればよいものか悩みましたが、ここは素直に読後感を書かせて頂こうと思います。
とまれ頭に巡ったのが、劇画と児童漫画の隔たりは、この当時にはさらにはお二人の考える「漫画」にはなかったのだな、ということです。
ただひたすらに「漫画」が表現できるスケールを信じて疑わない、どこにも臆するところのないテーマ、モチーフ、モチベーション。まさに藤子先生だけにとどまらない漫画の原点を観る思いでした。
初の描き下ろし単行本であるということにかけた意気込みもまた生々しく伝わってくるような気がしました。
最後に、細かいところですが随所に見られるスペクタクルなシーンの描写構図力が見事です。なかでも水中描写は素晴らしいもので、その後の「海の王子」にも繋がっているのかな、と想像したりしました。思えば、後期作品の中においてもこの水中描写には度々印象深いものだったように思います。
最初(の単行本)にして「最後(の世界大戦)」。
かっこいいなあ藤子先生!

吉崎観音プロフィール

九州出身。1989年小学館新人コミック大賞佳作でデビュー。マンガ・イラスト・キャラクターデザインなど多岐にわたって活躍。1998年に読み切り「ケロロぐんそー」を発表。1999年2月より「ケロロ軍曹」本編を連載開始。2005年には「ケロロ軍曹」が第50回小学館漫画賞児童向け部門を受賞。

藤子・F・不二雄 藤子不二雄(A)「UTOPIA 最後の世界大戦(復刻名作漫画シリーズ)」 / 2011年8月25日発売 / 3990円(税込) / 小学館

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1953年に鶴書房から出た、藤子不二雄の最初で最後の描き下ろし単行本。原本は足塚不二雄名義で発表され、表紙は大城のぼるが執筆、別のマンガ家の作品とのカップリングで出版された。これまで2度の復刻では表紙が新たに描かれ、カップリング作品も省いた形での出版となっていたが、今回は初の完全復刻。オークション落札価格400万円以上とも言われる超レア本が蘇る。

藤子不二雄(ふじこふじお)

藤本弘と安孫子素雄の共同ペンネーム。安孫子が藤本が通っていた高岡市立定塚小学校に転校してきたのが縁で付き合いが始まる。手塚治虫の「新宝島」の影響を受けて、本格的にふたりでマンガを描き始める。1951年「毎日小学生新聞」に連載した「天使の玉ちゃん」でデビュー。足塚不二雄名義を経て藤子不二雄のペンネームで合作を続け、87年にコンビを解消。その後は、藤子・F・不二雄、藤子不二雄(A)としてソロ活動を行う。96年に藤子・F・不二雄が逝去。合作の代表作に「オバケのQ太郎」、Fの代表作に「ドラえもん」、(A)の代表作に「忍者ハットリくん」など多数。

小学館クリエイティブ

資料性が高い稀少マンガの復刻を手がけているプロダクション。これまでに復刻を行った作品は手塚治虫「新寳島」「手塚治虫創作ノートと初期作品集」、水木しげる「恐怖の遊星魔人」、織田小星作・樺島勝一画「正チャンの冒険」など約200点。

また書籍の出版、および書籍・雑誌 の企画・編集受託・校正受託、地図(日本、世界)の編集制作を請けおっている。