セキセイインコに対する裏切りのような気がして

──まず鳥頭という奇抜なヒロイン誕生のエピソードからお伺いしたいのですが。

鳥海　私が高校2年生のとき、干支が酉だったんです。その年の年賀状に、飼ってたインコのすぅちゃんと自分の高校の制服を合体させた、アイコラみたいな写真を気合を入れて作って……。そのときのコラを、FAXの送信状に落書きしたら担当の山本さんが、（口調を変えて）「ねえねえ、これマンガにしようよ」って言ってきて……。

山本　えっ、それ俺の真似なの？（笑）

鳥海　あっ、あの、ちょっと臨場感を出してみました。

──ありがとうございます（笑）。「すぅ」という名前のインコを飼ってたんですね。

鳥海　はい。最初はポッキーとクッキーっていうセキセイインコを飼ってたんですけど、ポッキーが死んじゃって、その次にすぅを飼い始めました。

──昔から鳥がお好きだったんですね。セキセイインコの後、鳥への情熱はエスカレートしていったんでしょうか。

鳥海　いや、その後は犬にいきました。

──えっ、カナリアとか文鳥とか、ほかの鳥にいったりせず、犬に。

鳥海　はい。けどそれはセキセイインコに対する裏切りのような気がして……。あ、でも大学院で研究しているのはオオミズナギドリっていう鳥なんですけど。

小学生が考えてくれたキャラに吐瀉物を持ってこさせたことは謝りたい

──大学院でも鳥の研究をされてるんですね。マンガのネタに研究内容が反映されている部分はありますか？

鳥海　鳥彦くんっていう読者ハガキから生まれたキャラクターがいるんですけど、彼が主人公のつばめに吐瀉物をプレゼントするというシーンがあって。オオミズナギドリって子供にご飯をあげるときに吐き戻してあげたりするんですけど、それが元ネタです。

山本　応募してくれた小学生も、まさか自分の考えたキャラクターが吐瀉物持ってくるとは思わなかったでしょうね……。

鳥海　あの、ホント、トラウマを残したら申し訳ないなとは思ってるんですけど……。

──掲載誌がりぼんなので、読者層は小学生がメインだと思うのですが、小学生くらいの年齢の子にウケるものを研究したりはしますか？

鳥海　そんなに意識はしてないんですけど、電車の中とかで小学生の持ち物を見たりはしますね。駅でポケモンスタンプラリーしてる子供たちの会話聞いたり。

山本　職務質問受けないようにして下さいね！

鳥海　あ、はい……気をつけます。

大人の読者には小ネタを楽しんでほしい

──「つばめのすぅ」は、りぼん読者にはもう知られていると思うので、次は大人の人にも知ってもらいたいですよね。大人の読者層にはどんな楽しみ方をしてもらいたいですか？

鳥海　実はちょいちょいいろんなところに小ネタを入れてまして。大人の方にはそういうところに気付いてほしいです。

──例えばどんな小ネタを？

鳥海　「KOKKEI NEWS PAPER」っていう新聞を読んでるシーンがあるんですけど、宮武外骨の滑稽新聞とかけていたり……。

──それ、言われないとわからないですね（笑）。

鳥海　これは社会の教科書だから、表紙に窓を書いてみました。社会の窓。あとこの枕は自分的にはエミリオ・プッチのつもりです。

──エミリオ・プッチ（笑）。ところでこの扉絵、ギターじゃなくてベースなのはどうしてですか？

鳥海　あっ、たまたま家にあったのが弟のベースで……。私、ギターとベースの区別とかつかなくて……。ちなみにアイドルでイッカクの一斗くんってキャラクターが出てくるんですけど、一斗がライブをしているところはZepp Tokyoのつもりです。

──これ、Zeppなんですか！（笑）

鳥海　多分これを描いた頃にtacicaとフジファブリックとTRICERATOPSが出てるイベントがあって、それでZeppに行ったんです。その記憶を頼りに……。

──別に、写真を撮ってきたわけではなく（笑）。

山本　鳥海さんの中でここはZeppなんですね。

鳥海　はい、「ロッカーいっぱいあったなー」みたいな。あと「愛のプラシーボ」のときは、りぼんと「ONE PIECE」がコラボする号だったので、すぅをルフィっぽくしようと麦わら帽子をかぶせてみました。でも、なんか裸の大将みたいになっちゃって……。

──これが鳥海流「ONE PIECE」（笑）。

鳥海　ひどい「ONE PIECE」ですよね。あとこれは本誌での連載開始時の扉絵です。うさぎ年なのでうさぎを描いたのと、新連載だから「生まれるー」って感じでイースターエッグを描いてみました。……お前何言ってんだよって感じですね。

──いえ、あの、いいと思います。

鳥海　あと小石川家に遊びにいく話で、お父さんがやってるゲームは「ときめきメモリアル」です。藤崎詩織と朝日奈夕子を足して藤崎夕子にしてみました。

──これは気付きそうですね。でもこのゲームの線、どこから出てるんですか（笑）。

鳥海　あっ、そこにはエネルギーを注げなかった……。

山本　興味のあるなしの差が激しいですよね（笑）。

──この部屋もテレビとテーブルしかないですもんね。情熱を注ぐところがいささか間違っているというか……。

鳥海　背景が下手なので、とりあえずがんばれるところはがんばろうと。