「トリアージX」佐藤ショウジインタビュー|超絶アクションとおっぱいにこだわって連載100回!初代担当と振り返る「スクデッド」からの歩み

月刊ドラゴンエイジ(KADOKAWA)の看板を背負って立つバイオレンスアクション「トリアージX」が、連載100回を突破。単行本4巻で死んだと思われた緋崎千影の12巻越しのカムバック、前作「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」を想起させるパンデミックを描いたCASE:7「fatal disease」など、物語は長期連載の中でダイナミックに展開し、佳境に向かって今、さらに大きな盛り上がりを見せている。

単行本18巻発売のタイミングに合わせコミックナタリーでは、作者・佐藤ショウジ、連載立ち上げに携わった初代担当編集者・川中島(仮名)氏を取材。作品を成り立ちから語ってもらい、「トリアージX」の参考となった名作アクションマンガの存在や、「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」の原作を手がけていた故・佐藤大輔への思いも聞いた。

取材・文 / はるのおと

「スクデッド」+「ワイルド7」=「トリアージX」?

──連載100回突破ということで、まずは作品の歩みを振り返っていけたらと。そもそもですが「トリアージX」は、どのような経緯で立ち上がった作品なのでしょうか。

川中島 2008年くらいから佐藤大輔さんが体調を悪くされて「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」の連載が中断する(編注:佐藤大輔が2017年に逝去したことにより同作の連載はストップしている)ことになったので、ショウジさんに別の原作付き作品かオリジナルを描いてもらおうと打ち合わせを重ねたんです。その中でアイデアが出た、オリジナル作品である「トリアージX」の連載をしようということになりました。

佐藤 「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」は銃とゾンビと女の子のセクシーさが売りだったので、それらを残しつつ「トリアージX」では新たにバイクやヒーローものっぽい勧善懲悪という要素を入れて。あと川中島さんからは、男主人公の存在と学園要素を入れるようにとも言われましたね。

川中島 主人公たちが学生ということが、ドラゴンエイジの読者が感情移入するために重要だと思ったんです。「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」もそうでしたし。連載立ち上げ時は、ドラゴンエイジの誌面でやってた「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」のミュージアム企画と並行して打ち合わせしていましたよね。

佐藤 ありましたね、ミュージアム! 休載中、毎号カラーイラストを見開きで載せるというやつ。懐かしい、忘れていました。

「トリアージX」初期ラフ。この頃のタイトルは「デッドマンズER」。 「トリアージX」初期ラフ。嵐の設定画には「一人ワイルド7といった雰囲気?バイクで特攻。」と書かれている。

──「バイクやヒーローものっぽい勧善懲悪という要素」を入れた、というお話ですが、それらの要素はどこから出てきたものなのでしょうか。

連載開始前に描かれた美琴のラフ画。

川中島 「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」を連載している当時、「ワイルド7」の単行本をショウジさんに渡したことがあって。望月三起也先生は素晴らしいアクションシーンを描かれているので、ぜひ参考にしてほしかったんです。あとショウジさんは、僕とも大輔さんとも年齢が離れていて……。

佐藤 20歳くらい歳下ですからね。だから一緒に作品を作るにあたり、イメージを共有するために共通言語となるような資料をたくさん用意してくれたんです。「ワイルド7」はその中でも特に時代を超えて通じる素晴らしさがありました。だから実は「トリアージX」の舞台である飛岡市は「ワイルド7」の主人公・飛葉から来ているし、望月総合病院も三起也先生の名字をいただいていて。かなり影響を受けています。

6巻で折り返しだったはずが18巻まで到達

──ちなみに連載立ち上げ時はどれくらい連載するつもりだったのでしょうか?

佐藤 すぐ終わる予定でした。大輔先生の体調がよくなったら「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」の連載を再開するという話でしたから。

川中島 そのような、大輔さんの体調をうかがいつつの進行もあって、連載初期は1つひとつのエピソードがそれほど長くないんです。後のエピソードほど長くなるのは「ワイルド7」と同じ。当初、1エピソードが単行本2冊というスパンだったのに、後半は1エピソードで5冊、6冊とどんどん増えていく。「トリアージX」はそんなところまで「ワイルド7」のスタイルに忠実になった(笑)。

──「トリアージX」6巻の作者コメントで「トリアージXもようやく折り返しです」と書かれていましたが、現在18巻まで出ています。それも「ワイルド7」へのリスペクトだと(笑)。

佐藤 どんどんキャラクターがいっぱい出てきて、話も広がって……正直、オリジナルの長期連載は初めてだったので、僕に計画性がなかったかもしれません(笑)。特に6巻辺りからは敵組織のシリンジが本格的に登場し、大きく物語が展開していくので、ガンガン描こうと燃えていましたね。誰も止めてくれないし。

──編集側でそれをコントロールすることはなかったのですか?

川中島 6巻の頃には担当編集は僕じゃなく、現担当の原田くんになっていたよね。

佐藤 そうです。原田さんになってからは割と放任主義で(笑)。だから学園パートの比重も下がり、雛子の登場シーンもめっきり減って。

川中島 僕が担当していた頃は何かと「学園パート入れましょう」「学園に戻りましょう」と言っていたけど……。

1巻より。嵐と美琴が通う私立望月学園高等学校。主にクラスメイトの雛子や由宇、巨乳好きの男子生徒たちといったキャラクターと交流するコメディが展開される。

佐藤 川中島さんは「学生とエージェント、その二面性がキャラクターを支える」という話をよくされていましたが、その縛りも緩くなった。しかもアニメ版は尺の都合でコミカルなパートがかなり減ったのでさらに雛子の活躍が少なくなり、声優の大空直美さんに申し訳なかったです。

──2015年に放映されたアニメ版ですね。1クールでしたが、もう少しボリュームがあれば雛子の活躍する学園パートも増えていたかもしれないと。

佐藤 そうですね。でもアニメはすさまじく内容を詰め込んでスピーディーに話が展開するおかげで、かなり面白くなったと思います。

川中島 1話からシリンジとかメインキャラクターを全員出していたしね。

佐藤 その1話の収録に立ち会ったとき、声優さん30人くらいの前で挨拶させられたのは軽くトラウマです(笑)。

──原作がアニメから影響を受けたことはありましたか?

佐藤 全体的に再現度が高くてうれしかったですけど、特にCGモデル担当の方がすごくこだわって嵐たちが乗るバイク・GS1200SSを作られていて「すごい。僕もこんなふうに見せなきゃ駄目だ」と刺激を受けました。あと美琴の前髪をぴょこんとハネさせるのがかわいくて、あれは原作にも取り入れましたね。もちろん声優さんの力も大きく、柩を正気に戻すシーンとかホロリとくるくらい僕は感動したし、黒田崇矢さんの演技が素晴らしいおかげで、望月先生が怪しいことを言っていても説得力がすごい(笑)。ファンの方は、ぜひ改めて観てほしいです。

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「トリアージX」1巻期間限定無料公開
期間:2018年12月7日(金)~20日(木)

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ComicWalker、ニコニコ静画(マンガ)でも、1巻分の内容を連載形式にて無料公開中。

佐藤ショウジ(サトウショウジ)
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2002年に「ふたりぼっち伝説」でデビュー。佐藤大輔原作による「学園黙示録 HIGHSCOOL OF THE DEAD」はTVアニメ化され、ヨーロッパほか海外でも熱狂的な支持を得る。2009年より開始した「トリアージX」もTVアニメ化を果たし、現在も連載が続く人気作品となっている。最新作としてサイトウケンジを原作に迎えた「神装魔法少女ハウリングムーン」を別冊ドラゴンエイジ(KADOKAWA)で連載中。そのほかの著作に「FIRE FIRE FIRE トリプルファイヤー」「FIRE FIRE FIRE BLACK SWORD」など。