「トリアージX」佐藤ショウジインタビュー|超絶アクションとおっぱいにこだわって連載100回!初代担当と振り返る「スクデッド」からの歩み

13巻で雛子のパンチラが解禁された理由

──「トリアージX」は「CASE:XX」という表記で章立てされ、現在8つのCASEが終了しています。特に思い入れのあるものはありますか?

5巻より。CASE:4ではアイドルとして活動する織葉が活躍。彼女が出演する番組の収録中に、テレビ局が賊に占拠される。

佐藤 全部思い入れはありますが、強いて言うならCASE:4「HUNTER CAGE」ですね。「ダイ・ハード」を参考にしたんですが、閉鎖された空間での戦いだからこれまでに描いたことがなかったような局面が多く、物語的にもシリンジの影が少しずつ迫り、アイドルたちのワチャワチャ感もあって描いていて楽しかったです。

川中島 CASE:4の時点はもう担当ではなかったけど、僕も川中島というキャラクターでマンガに出させてもらっていました。いろいろと怪しいことをする社長の役(笑)。一読者としては、美琴を黒髪にして怪しい学園に潜入させるCASE:6「dystopia dominator」が好きでしたね。

佐藤 「スケバン刑事」みたいな話ですね(笑)。

川中島 そうそう。「これ、俺は思いつかなかった。美琴の黒髪、いいな!」と唸らされました。

──個人的には飛岡市に新型ウイルスの感染者が溢れるCASE:7「fatal disease」が印象的です。最も長いCASEですし、ゾンビもの然とした展開は「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」を思い起こさせました。あのエピソードはなぜ入れられたのでしょうか?

佐藤 そもそも“トリアージ”という言葉は、病人や怪我人が同時に多数いる状況で、治療者の優先順位を決めるという意味です。その究極の選択を迫られる状況を作り出すために、パンデミックが起きるエピソードを入れようというのは最初から考えていました。

川中島 連載当初は、パンデミック編になったら最終局面と話されてましたよね。

佐藤 その予定でメインキャラクター全員の背景を描きながら展開していたけど、狭霧家の話だけはどうしてもパンデミック編の前に入れられなくって。だからその後にCASE:8「BLADE WEB」として友子と光姫の話をしました。

──確かにCASE:7はオールスター感がありますよね。多くのキャラクターがバトルに絡むだけでなく、学園パート担当だった雛子にも危機が迫り、一度は暴力を振りかざす嵐を拒絶します。

13巻より。CASE:7で嵐が感染者を叩きのめすのを目の当たりにする雛子のパンチラ。

佐藤 一般人の雛子ちゃんはやっぱりこのマンガに外せないファクターです。だからこれからもどんどん話に絡んでくると思います。ひとつ補足すると、このエピソードから雛子ちゃんのパンチラを解禁しているんですよ。

──それまでパンチラがなかったんですか。意外です。

16巻より。再登場した千影は美琴へ想いが溢れ、突然キスをする。

佐藤 絶対に描かないと決めていたんですけど、ここからは雛子ちゃんも大人な展開を迎えるからパンチラを描くぞ、と(笑)。

──意識的に変化をつけていると。そして美琴のピンチに、CASE:3「ミッドナイト・ゲリラ」で死んだと思われていた千影が助けに現れます。実に単行本では12巻越しの再登場でした。

佐藤 あれは念願の展開でした。4巻時点で、彼女が火の海に消えるシーンを描きながら「いつか必ず花を持たせよう」と思っていたので。ただ久しぶりに美琴に会えたうれしさからから千影は暴走気味ですが(笑)。クレイジーだけど頼りになるキャラクターです。

「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」の続きは簡単にはできない(川中島)

──CASE:7は心揺さぶるアツい展開が多いですが、そこに照準を合わせたのは「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」以上のものを見せようという意図があったのでしょうか?

佐藤 そうですね。より派手な絵面、よりダイナミックな展開を見せようとは考えました。例えば「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」で戦う相手はゆっくりと歩く“奴ら”でしたが、「トリアージX」では素早く動き人間以上の力を持つ感染者が相手です。そのため主人公たちがより派手に大暴れできるだろうとか。

──その試みは成功したと感じます。その一方でファンとしては、テイストの似た「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」の続きを読んでみたいとも思ってしまいます。例えば佐藤ショウジ先生がストーリーを考えるか、それとも別の原作者を立てるなどして連載を再開させるのは難しいのでしょうか?

最終巻となっている「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」7巻。

川中島 現実的に「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」の世界観を継承し、伝え聞いてる断片から続きを構成することができる人は、たぶんこの世にいないと思いますよ。

佐藤 大輔先生はすさまじいほどこだわりの強い作家さんでした。展開も設定も、些細な資料であってもこだわりが半端ではなく、他者の介入をあまり許さないような方で。だから、もし僕が勝手に描いたら枕元に立たれるでしょう(笑)。

川中島 生前の大輔さんが「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」をどういう思いで作っていたか知っていて、さらに大輔さんに認められるような実力を持つ方が「俺が佐藤大輔の遺志を継いで描くぞ」という意志を持ち、それをショウジさんが納得されたら再開できるかもしれませんが……。

佐藤 そういう話になっちゃいますよね。事情が詳しく伝わっていない海外のファンからは「すぐ続きを描いちゃえよ」なんて言われるんですけど、そんなに簡単じゃないです。僕らとしても作品が途中で止まってしまっていることには心を痛めていますが、大輔先生の思いの丈を知っているだけに、迂闊には手を出せないですね。

川中島 海外のマンガや小説は、共同制作としてたくさんの制作者が関わるのが基本なんです。たとえば小説「宇宙英雄ペリー・ローダン」シリーズは最初に立ち上げた作家さんたちは亡くなっているけど、次の世代の作家さんが描き続けている。でも「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」の原作者はワン・アンド・オンリーな存在だったので、別人が簡単に続きを書けないということは理解してほしいです。

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「トリアージX」1巻期間限定無料公開
期間:2018年12月7日(金)~20日(木)

実施電子書店

ComicWalker、ニコニコ静画(マンガ)でも、1巻分の内容を連載形式にて無料公開中。

佐藤ショウジ(サトウショウジ)
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2002年に「ふたりぼっち伝説」でデビュー。佐藤大輔原作による「学園黙示録 HIGHSCOOL OF THE DEAD」はTVアニメ化され、ヨーロッパほか海外でも熱狂的な支持を得る。2009年より開始した「トリアージX」もTVアニメ化を果たし、現在も連載が続く人気作品となっている。最新作としてサイトウケンジを原作に迎えた「神装魔法少女ハウリングムーン」を別冊ドラゴンエイジ(KADOKAWA)で連載中。そのほかの著作に「FIRE FIRE FIRE トリプルファイヤー」「FIRE FIRE FIRE BLACK SWORD」など。