コミックナタリー PowerPush - 夜麻みゆき「刻の大地」
懐かしの名作が未収録作も含めた愛蔵版に! 夜麻みゆきが原点と未来を語るインタビュー
続けることも大切だけど、残すこともしたい
──夜麻先生は、結末まで考えてストーリーを作るタイプですか?
うーん、真ん中がないんですよね。始まりと終わりだけを考えていて、その間の点と点を線でつないでいく感じです。最後は大体なんとなく決めてるんですけど、精密に組み立てているわけではないですね。
──では以前刊行された10巻分はまだ中間地点なわけですね。復刊される愛蔵版には、雑誌掲載のみで単行本未収録だったエピソードも収められるので、ファンからの喜びの声も多く耳にします。
それはもう、こういった機会をいただけてうれしい限りで……。本当は復刊することもちょっと戸惑っていたんですが、いろいろと気持ちの整理をしたところ、これからマンガを描き続けていくことを考えると、残すこともしたいなと思ったんです。
──残すこと?
はい。続けることも大切だけど、残したいという思いも強くなってきたんです。それで、未完のままで申し訳ないんですが、復刊という運びになった次第です。
──夜麻先生にとって、「レヴァリアース」「幻想大陸」「刻の大地」はどんな作品ですか?
一言で言うと「夢」ですね。
──夢というのは、空想の世界という意味もありますし、憧れみたいな意味もあります。
なんだろう、夢としか言いようがないです。人それぞれイメージがあると思いますが、夢という一言で皆さんにイメージを受け取ってもらいたいですね。私のイメージと皆さんのイメージが重なったらうれしいです。
カラーはデジタルで、モノクロはアナログでやっていきたい
──作画の話もお伺いしたいのですが、いま作画はデジタルですか?
カラーは以前から少しずつやっていましたが、モノクロは2011年にゼロサムWARD(一迅社)で発表した読み切り「Kanon Texte」(参照:夜麻みゆきの新作読切「Kanon Texte」がゼロサムWARDに)で初挑戦しました。
──つい最近なんですね。
もう試行錯誤でした。詳しいアシスタントさんに聞いたりして、なんとか仕上がったっていう感じですね。アナログで描いた線画をスキャンして、デジタルでトーン処理をしています。
──デジタルで描いてみようと思ったのは、理由があったんでしょうか?
作画にどうしても時間がかかるので、デジタルにすれば早くなるのかなという気持ちがありました。あとトーンが何枚貼ってもなくならないですし(笑)。イメージが違ったら貼り替えたりすることも、すぐできますからね。ただ難しかったのは、プリントアウトしたときのイメージがつかみにくいということです……。
──原寸のイメージがつかみにくい?
そうなんです。いざ原寸で見るとイメージしている濃度と違ったりして、何度も手直ししました。液晶画面で見るトーンと、印刷したときのトーンのイメージが違うんです。その手間がかなりかかるので、挑戦したものの自分にはデジタルは合わないなと気付き……。今後、カラーはデジタルで、モノクロはアナログで描いていきたいと思っています。
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あらすじ
すべての魔物(モンスター)を束ねる悪の権化・邪神竜ディアボロス。
勇者ザードにより倒されたはずのディアボロスは時を経て復活、魔物たちは凶悪化して再び人間を襲うようになっていた。
真実を確かめるべくディアボロスの元へ向かったザードだが、彼が帰ってくることは二度となかった──。
それから3年後…。ザードの友人である聖騎士カイは、ザードが言い残した「人と魔物の共存」が可能なのか、その答えを求め、あてのない旅を続けていた。
ひょんなことから、魔物と心を通わせる不思議な少年・十六夜(いざよい)と、ディアボロスにより滅ぼされた種族“ダークエルフ”の生き残りであるジェンドと出会ったカイ。いつしか旅の仲間となった3人は、それぞれの目的のため、ディアボロスの居場所を探す旅に出発した。
夜麻みゆき(やまみゆき)
大阪府出身。代表作は異世界オッツ・キイムを舞台とした一連のファンタジー作品「レヴァリアース」「幻想大陸」「刻の大地」。著書に「トリフィルファンタジア」(全2巻、スクウェア・エニックス)などがある。2011年に新作読み切り「Kanon Texte」を発表するなど、現在も新作執筆に精力的に取り組んでいる。