「転生したらスライムだった件 第2期」特集 岡咲美保(リムル=テンペスト役)×沼倉愛美(ヒナタ・サカグチ役)×中山敦史(監督)×杉本紳朗(プロデューサー)座談会|魔王へと至るリムルの新たな決意、そして変わらない気持ち

TVアニメ「転生したらスライムだった件 第2期」の放送が2021年1月にスタートする。第1期で自身を慕う魔物たちとともに国作りを進め、とうとう一国の盟主となったスライムのリムル=テンペスト。第2期ではそんなリムルと彼が治めるジュラ・テンペスト連邦国に、未曾有の危機が訪れる。

コミックナタリーでは波乱を予感させるアニメ「転生したらスライムだった件 第2期」の放送を前に、リムル役の岡咲美保、ヒナタ・サカグチ役の沼倉愛美、第1期で副監督、第2期で監督を務める中山敦史、プロデューサーの杉本紳朗による座談会を実施。2018年に放送された第1期を振り返ってもらいつつ、新キャラクターであるヒナタの魅力やリムルの新たな一面など、第2期の見どころを語ってもらった。

取材・文 / 齋藤高廣 撮影 / 武田真由子

海外でも人気だった「転スラ」第1期

──まずは第1期についてお話を伺っていきますが、放送当時、反響の大きさを感じる出来事はありましたか。

岡咲美保

岡咲美保 「転スラ」第1話の放送のとき、「転スラ」のイベントで海外にいたんです。そのときのことは印象に残っています。私はリアルタイムで放送を観られなかったので、日本での放送時間にマネージャーさんに「お客さんの反応、どうでしたか!?」と聞いたら「いい感じだよ!」と言われて、ひと安心したのを覚えていて。

──海外でも人気があったのですね。どこに行かれたのでしょうか。

岡咲 私が行ったのは中国、韓国、シンガポール、アメリカのサンフランシスコとシカゴです。

杉本紳朗 アニメのイベントで放送中にこんなに海外に行くことは滅多にないので、手応えを感じましたね。

岡咲 作品を上映しているときに「あははは!」って笑い声が聞こえて、「海外でもこのギャグは通じるんだ!」って感動したこともありました。国内でいえば、2019年に年賀状のお渡し会があって、子供からお年寄りまでさまざまな方が来られていて、年齢層が広いなと感じました。

杉本 中山監督の周囲でも反響あったんじゃないですか。

中山敦史 ありましたよ。日頃アニメを観ない友達も観ていました。あと印象に残っているのは、友人から小学生の娘さんが書いたファンレターをもらったことですね。そういうことはなかなかないですから。

第1話はリムルと同じ目線で楽しめるように作った

──国内外、老若男女を問わず人気の高さがうかがえる「転スラ」第1期ですが、第2期から参加される沼倉さんはどんな印象を持たれましたか。

沼倉愛美

沼倉愛美 第1話を観たときに、世界観がしっかりしている、設定が作り込まれているところが魅力だなと感じました。その分、伝えなければいけない情報は多いはずなんですが、その伝え方が堅苦しくないので、観ているうちに自然と頭に入ってきて。設定が緻密でありながらわかりやすい、そのバランスが絶妙で、観終わった後に「この先も観たい!」と。第1期を観ながら、第2期でヒナタがどんなふうにリムルと関わっていくのか、どんなふうにヒナタのさまざまな側面が描かれていくのか、期待が高まりました。

──確かに第1話は情報量が多いですが、とても観やすかった印象があります。このエピソードでは中山監督が演出を担当されていますが、視聴者に設定を伝えるうえで工夫したことはありましたか。

中山 設定をただ説明されるだけだと視聴者は面白くないので、リムルと同じ目線から徐々に世界を理解してもらえるように、と心がけていました。最初はまずリムルの「どうなっているのかわからない」という不安に共感できるような作りにしたくて。それから魔力感知で周りが見えるようになったり、ヴェルドラからさまざまなことを教えてもらったりして、リムルが少しずつ周囲の状況を把握していきますよね。それに合わせて視聴者の理解も進んでいくといいなと。原作の序盤もリムルと足並みを揃えて世界を理解していけるのが面白かったので、アニメでもそれを表現しようと思いました。

──リムルの目線から観てもらうことで、スムーズに作品世界へ入れるようにしていたということですね。

中山 そうですね。あと第1話は絵作りでも苦労していて。ヴェルドラと出会うまで、リムル1匹がずっと洞窟にいるというシチュエーションになってしまうので、どう映像化すべきか悩みました。グラフィックデザイナーの生原(雄次)さんには転生シーンのイメージ映像を作り込んでもらったりして。岡咲さんがリムル役として期待以上の芝居をしてくれたこともあり、結果的にはびっくりするほどいい第1話になりました。

──岡咲さんは「転スラ」が初主演作ということですが、リムルを演じてみて、印象に残っていることはありますか。

岡咲 特に第1話ですが、「こんなにしゃべるんだ!」とびっくりしました。

一同 (笑)。

岡咲 あとは、第1話の収録でほかのキャラとの掛け合いを演じていたとき、音響監督の明田川(仁)さんに「自分の中で演技を固めすぎているね。掛け合いなのに自分で用意してきた温度感のままでセリフを言ってしまってる」と言われたことがあって。特にヴェルドラとしゃべるシーンでは「前野(智昭)さんのヴェルドラがこういう返しをしてきたから、こういうリムルを出そう」という余裕がなくて、すごく反省しました。なので第2話以降からは、なるべく現場で出るお芝居を大事にしよう、ほかの方のお芝居を聞こうと意識して。

TVアニメ「転生したらスライムだった件」第8話より、最期を迎えるシズと、彼女に寄り添うリムル。

──その学びが活かせた場面はありましたか。

岡咲 第8話のベッドに寝ているシズさんとリムルの会話シーンです! あんなにシリアスかつ静かな場面で、2人きりの会話を演じたのはあのエピソードが初めてだったのですが、(シズ役の)花守ゆみりさんの芝居がすばらしかったので、自然な掛け合いが作れて。優しいリムルを引き出すことができました。

原作者とスタッフのディアブロ愛から生まれた番外編

──岡咲さんに挙げていただいた第8話、シズさんとのエピソードは強く印象に残っています。第1期はこの第8話までが1つの区切りになっているように思うのですが……。

中山 それまでリムルはふわっとしていましたからね。僕はここに来ちゃったけど、とりあえずやることないから石食べていようとか、草食べていようとか(笑)。やっぱり第8話でシズさんの遺志を継ぐという目的が定まってからは締まりますよね。

杉本 伏瀬先生からの「序盤はしっかり描いてほしい」という要望もあり、シズさんのエピソードは丁寧に作りました。ただ、結果的にプロローグにあたるお話に8話分を使うことになったので、残りの話数でストーリーをどこまで進行させて終わればいいのかという問題が出てきて。当初は第1期のうちにもう少し先までストーリーを進める予定だったんですよね。

──第1期の第20話から最終話である第23話まではシズさんの生徒であるケンヤたちとのエピソードが描かれましたが、原作ではこのエピソードの前後からノンストップでストーリーが展開していくので、切りどころが難しそうです。

中山 そうなんです。一度は完全にシナリオ会議が紛糾しちゃったんですが、結論として第1期はシズさんにフォーカスを当てようということになり。シズさんの心残りでもあったケンヤたちのことを、リムルが救うエピソードで終わることにしました。

──あの終わり方にはそういう意図があったんですね。沼倉さんには第1話、岡咲さんには同じく第1話と第8話について語っていただきましたが、杉本プロデューサーと中山監督は、思い入れのあるエピソードなどありますか。

TVアニメ「転生したらスライムだった件」の「閑話:ヴェルドラ日記」より、ヴェルドラ(左)とイフリート(右)。TVアニメ「転生したらスライムだった件」第24話より、ディアブロ。

杉本 どのエピソードももちろん好きなのですが、第24話の後に放送した「閑話:ヴェルドラ日記」ですね。あのエピソードは原作マンガの各巻末にある「ヴェルドラのスライム観察日記」をベースに、全編を(ストーリー構成・脚本の)筆安一幸さんに書いていただいたんですが、かなりオリジナル要素を盛り込んでいただいて。脚本が上がってきたときは「こんなに遊んで大丈夫か」とスタッフ陣がざわざわしたんですけど(笑)。

中山 全然第1期を振り返ってないじゃんっていう(笑)。

杉本 でも実際に作ってみたら面白かった。ほかのエピソードとはかなり毛色が違うのですが、こういういろんなことができるのが「転スラ」のよさだなと思いました。その名の通り「閑話」になりましたが(笑)。

中山 私の思い入れがあるエピソードは、第24話ですね。先ほど、杉本さんがもう少し先までストーリーを進める予定だったと言っていましたが、個人的にはディアブロが登場するエピソードまで作りたかったんです。そうしたら伏瀬先生やほかのスタッフも同じ気持ちだったようで、「ここで終わっちゃったらディアブロ登場しないじゃん、じゃあディアブロが活躍する番外編を作ろうよ」という話に(笑)。だからあれは伏瀬先生とスタッフの熱いディアブロ愛から生まれたエピソードだったんですよね。原作を知らない人からしたら、急に謎の悪魔と昔のシズさんが出てきてついていけなくなっちゃうかなと心配していたんですけど、クオリティの高いエピソードになったので、作ってよかったと思っています。