虫って本当に面白いんですよ
──片桐さんは犬も飼ってますし、鳥も飼われてますよね。動物はお好きなんですか?
どっちかっていうと嫁さんが生き物好きなんですよ。だから家ではもともとオカメインコとヨウムを飼ってて、子供が生まれたあとに保護犬を預かることになって、そのあとツノガエルをもらってきました。あと何年か前から、家族で昆虫採集もするようになったんですよ。
──へえー!
それも嫁さんがハマっちゃって。手塚治虫先生が好きだったオサムシっていう虫がいるんですけど、土や崖の中で冬眠しているのを掘って採集する「オサ掘り」っていうのがあるんですね。そのオサ掘りに行ったんですけど、ある箇所で掘って、そこから10キロぐらい離れただけでちょっと色や形が違う個体見つかるんです。
──その土地ごとに微妙に違う種類になっていると。
そうなんです、飛べないから。そうやっていまだに進化しているのって面白いですよね。あ、あと取材で虫屋さんに行ったときにナナフシを4匹ぐらい買って、それも家にいますね。いま200匹ぐらいになってます。
──え、200匹!
ナナフシってほぼメスしかいないけど、延々と増えるんですよ。「天地創造デザイン部」では、ナナフシはどういう扱いされるんだろうなーと思って楽しみにしてます。
──たまに出てくる虫部がもっと活躍するといいですね。
でも虫を嫌いな人は多いですからね (笑)。ホウセキゾウムシっていう、本当に宝石みたいにきれいな虫もいるのに……。
──その虫はまだ原作にも出てないですね。
昆虫って哺乳類とかより圧倒的に種類が多いし、いまだに新種が見つかることが多いし、本当に面白いですよ。
──虫部の出番が増えることに期待しましょう。天地創造社のデザイナーは、美しさ重視の金森さんや、味も大事だと考える木村さんなど、それぞれ重要視するポイントが違いますが、片桐さんがデザイナーになるならどの立場が近いですか?
僕がやるとしたら水島じゃないですかね。
──水島さんは常識にとらわれない攻めのデザインがモットーで、代表作は蛇です。前衛的という意味では似ているかもしれないです。
水島が作った飛ぶ蛇(トビヘビ)、カッコよかったですもんね。
──ほかにも水島さんが作る生き物はシンプルで機能性重視というのも特徴です。でも片桐さんはスマホケースなども自作してますけど、機能性で言うと……。
いま使ってるスマホケースは、形がゴツすぎてポケットに入らないんですよ(笑)。
──首から下げて使ってますもんね。
動物を粘土で造るときも、デザインを優先する余り6本足にしたこともあるし、ルールを無視してます。機能性はハナからないです、粘土のときは。「こういうのがあっても面白いんじゃないかな」っていうだけ。あんまり便利、便利っていうほうばかりにいきすぎてもね(笑)。
──「天地創造デザイン部」を観ながら、神様のオーダーを聞いて、「自分だったらどうするかな」と考えることはありますか?
あー、そこまでは頭が回ってないです。僕が野生動物を考えるのはおこがましいというか……。あと、大喜利力がないので(笑)。ペガサスが実際にいても乗るのは怖いな、とかは考えるんですけど。実物大のガンダムを観たときも、「これ、胴体の操縦席が高すぎて危ないだろ」って思いましたから(笑)。
「これ、なんの生き物だ?」とクイズ感覚で観るのが楽しい
──最後になりますが、改めてアニメ「天地創造デザイン部」はどういった人におすすめでしょうか。
誰でも楽しめるんじゃないですか? さっき言ったように、理系にアプローチした内容だと男の子が好きそうだけど、それだけじゃないし。キャラクターもかわいいから女の子も楽しめますよ。それに1話完結なのも今の時代に合ってると思います。1話完結どころか、CM前のAパートだけでお話が区切られてますよね。今の若い子は、2時間の映画も長くて観られないっていう話をよく聞くじゃないですか。そういう意味では、1話20数分の中に短いお話が2~3話分入ってるのはいいと思いますよ。1話完結だからどこから見てもいいと思いますし、一気観しなくてもいいし。でもやっぱり、最初にも言ったように親子で観るのがおすすめかな。
──実在の動物について学べるのはいいですよね。
それに、デザイン部の人たちが「ここをこうしたらいいんじゃないか」って試行錯誤してるときに、「これはなんの動物になるんだろう」って想像しながら観るのもいいですよ。子供が見たら「これは絶対、○○だ!」って言いたくなると思います。
──なるほど、図鑑的に紹介するわけじゃなくてストーリーがあるから、「これはなんの話なんだ」とクイズ感覚になるというか。
そうそう、いろんなヒントをもとにね。例えば動物社会を動物目線で体験する回があったじゃないですか。最初はその動物が何かわからないんだけど、「女王をトップにした完璧な階級社会が形成されている」っていう説明があったから、僕は最初「蟻の話かな?」と思いながら観てたんですよ。そしたらどうやら違うことがわかっていって、実はとあるネズミだということが最後にわかるというオチで。そんな生態なの!?ってびっくりしましたよ。
──このネズミ、生態まで詳しく知らない人のほうが多いですよね。
あとはゾウが出てきた回も、最初は「これなんの動物なんだろう?」って思ってたら、ある生き物がどんどん改良されていった結果、ゾウになったりとか。「これ、なんの話をしてるんだ?」って巻き戻しながら観た回もありますよ。最初に「本当にそんなのいるか?」って思わせておいて、本当にいるっていう。そんな感じで「こんな生き物、本当にいる?」と思いながら観るのが楽しいですね。もともと特徴を知ってる動物だったら「わかったぞ!」ってうれしい気持ちになるし。タツノオトシゴとかはすぐわかったんですよ。
──土屋室長のお孫さんが、タツノオトシゴのデザイン画に落書きするんですよね。なぜかオスに「おかあさん」、メスに「おとうさん」って書いたのが、そのまま採用されちゃって。
うん。僕はタツノオトシゴの生態は知ってましたから、すぐにわかってうれしかったです。そういうふうにいろいろ考えながら観ると、親子で楽しめると思いますよ。親としても、子供がこれを観てたからって「もう、アニメばっか観て!」とはならないですから。深夜に放送されてるのがもったいないですよ。
──Amazon Prime Videoなどでも配信されているので、家庭でも観やすいとは思います。
そうなんですね。息子たちだけじゃなくて嫁さんも好きだと思うので、家族で配信を観てみます!