TVアニメ「スケートリーディング☆スターズ」内田雄馬(前島絢晴役)×古川慎(流石井隼人役)対談|団体競技の和を崩しまくる?2人が対談 個性豊かなキャラクターたちがぶつかり合いながら前に進む、“谷口悟朗らしさ”が詰まった作品

「スクライド」「コードギアス 反逆のルルーシュ」をはじめ、濃密な人間ドラマと迫力ある映像表現を兼ね備えた数々の傑作アニメを世に送り出してきた谷口悟朗監督。彼が総監督を務める新作アニメ「スケートリーディング☆スターズ」の題材は、なんとフィギュアスケート。しかもオリジナルの団体競技“スケートリーディング”に打ち込む男子高校生たちの青春を、「黒執事」で知られるマンガ家・枢やなをキャラクターデザイン原案に迎えて描くのだという。果たしてどんな世界が待っているのか? メインキャラクターである前島絢晴(まえしま・けんせい)役の内田雄馬、流石井隼人(さすがい・はやと)役の古川慎に、作品の魅力を語ってもらった。

取材・文 / ひらりさ 撮影 /  入江達也

谷口作品の魅力は「ぶつかりあい」「競い合い」がキーワード(古川)

──谷口悟朗さんを総監督に迎え、まったくオリジナルの団体競技“スケートリーディング”を描くアニメ「スケートリーディング☆スターズ」(以下、スケスタ)。最初に話が来たときの印象を覚えていますか?

左から内田雄馬、古川慎。

内田雄馬 僕はもともと、フィギュアスケートを積極的に観ていたんです。芸術や競技としての興味というよりは、声優として「身体の使い方」を勉強したくて。いかに身体をうまく使うか、バランスをとるかなどを考えるうえで、スケーターの皆さんの身のこなしや振る舞いがとても参考になるなと。なので「スケスタ」の前から、フィギュアスケートという競技にとても親しみを持っていたんですが、アニメでそれを団体競技として描くってどんな感じなんだろう?と想像が膨らみました。

古川慎 これまでにも谷口さんの作品をいくつか拝見していたので、話を聞いた時点で「実体はわからないけれど異質なものができあがるんだろうな」と感じていました。谷口さんの作品にはいろいろな魅力がありますが、僕は「ぶつかりあい」だとか「競い合い」がキーワードだと思っているんです。ぶつかりあって高みを目指していく、それぞれの信念を曲げないキャラクターに惹かれながら観ていました。本作も、キャラクター設定で前島、流石井、そして神谷浩史さん演じる篠崎怜鳳の3人が並んでいるのを見て、「この3人がきっとぶつかってくれるんだろうな」とワクワクしながらオーディションに臨みました。

──オーディションだったんですね。

内田雄馬

内田 はい。個性的なキャラクターたちがたくさん登場しますが、その中でも前島というのは、かなり尖っている人で。僕にとってはアプローチが難しいかなと不安もあったのですが、選んでいただけてうれしかったです。

古川 オーディションでしゃべるセリフにも、谷口さん節が感じられて。「これはとてもアツい作品になるぞ!」と思いました。

──古川さんは、フィギュアスケートには馴染みがあったんでしょうか?

古川 僕はあくまで、世間でフィギュアスケートの話題が盛り上がっているときに観る程度だったんです。でも「スケートリーディング☆スターズ」のお話をいただいた頃に、何かの大会で日本代表選手の皆さんが団体で表現するエキシビションの演技を偶然目にしたんですよね。1人ひとりでも美しい演技をされる人たちが、協力しながら作り上げている内容や表現に触れて、フィギュアスケートってここまで人をワクワクさせることができるんだなあと感動したのを覚えています。

前島って「子供」であり続けられるのがすごい(内田)

──内田さん演じる前島は、個人競技の選手として活躍していたものの、プロ選手でコーチだった両親の死後、全身全霊をかけた大会でライバル・篠崎に敗北し、失意のうちに辞めたという少年。アプローチが難しかったということですが、どんなことにこだわって演じていますか?

アニメ「スケートリーディング☆スターズ」より内田雄馬演じる前島絢晴。

内田 周りがどう感じるかを考える前に、自分の思っていること、やりたいこと、表現したいことを全力でやるのが前島という人間。泥をかぶってもがんばり続けられる人ですよね。若いなと思うんですが、彼のポジティブさはとても羨ましい。僕はあんまり自分の意見を突き通すタイプじゃないので(笑)。

──そうなんですか?

内田 僕はどちらかというと人の表情を観察したり、周りを見ることで、どうしたら円滑にコミュニケーションできるかを考えます。もちろん大人になると、誰でもそうなってくる面がありますよね。前島って「子供」であり続けられるのがすごい。僕も「ここだけは」という譲れないポイントを持ってはいるんだけど、「僕はこう」というところは持ったうえでみんなで話し合って、それからまた考えるほうだから、前島みたいに「こうだ! ドーン!」みたいなことはないですね。前島は、愛される意志の強さを持っているのがすごい。

古川 前島と雄馬くんの似てるところはね、好きなことを楽しむ気持ちの表現方法じゃないかな。歌を歌ってるときの雄馬くんと、スケートを楽しんでいる前島はリンクしてるなと思ってた。

内田 そう思ってもらえるのは、かなりうれしいですね。

古川 雄馬くんのノッてるテンション感が伝わってくると、こちらもやりやすいです。

内田 それは本当にハッピーだなあ。

古川 助けられております(笑)。

内田 前島は本来非常に明るくて、ただ過去に背負っているものがあるゆえに後ろ向きな部分もあるんだけど、それでも前に進む力が大きい人。自分の思いの強さを、自分でも自覚しないで出し切る人。立ちはだかっている篠崎に対しても、周りからどう比べられているかとか関係なく、本人の純粋な感情でライバル心を持ち続けているんですよね。その根底の意志の強さが魅力だなと思います。勝手にめちゃくちゃやるから、団体競技の和を崩しまくりますけど(笑)。

──本作は、スケートリーディングというスポーツのドラマであると同時に、「部活もの」でもあるんですよね。突然目の前に現れた流石井に焚き付けられてスケートの世界に戻ることにした前島は、それまでは敬遠していた戌尾ノ台高校のスケートリーディング部の門を叩き、スケートリーディング選手への道を歩みだします。

古川慎

古川 部活ものではあるけど、かたや競技キャリアをドロップアウトしていた前島と、かたや突然現れた流石井が中心にいるという(笑)。部活ものって本来みんなで力を合わせて目標に向かっていこうとするところにドラマが生まれるんだと思うのですが、前島と流石井が異分子なので、波乱の連続なんですよ。特に流石井はね、コミュニケーションがド下手くそなので……。常に煽っていくスタイル。先の話を知れば知るほど、部活がどんどんぐちゃぐちゃになっていく(笑)。

──早く流石井のしゃべりを聞きたくなってきました!

内田 前島は前島で衝動的で、どっちもコミュニケーションが下手(笑)。流石井は頭がすごく回るから、前島をうまいこと手のひらで踊らせようとするんだけど、彼が思った以上の勢いで踊るので、ドタバタが起きる。戌尾ノ台のほかのメンツが真面目にチームを作り上げようとしているところに、いい意味で引っ掻き回すタイプ2人が投入されるのが、面白いですよね。

古川 我々はもう、「いかにこの人たちをひっかき回して動揺させて、部員たちに新しい風を吹かせるか?」に専念してます。毎話、いい意味でごちゃっとしてます(笑)。