コミックナタリー - [Power Push] 鈴菌カリオ「Sillyなコダマ!!」 スペシャルコンテンツ
恋したあの人は「人間になりたい河童」。IKKI最注目の暴走恋愛シュールギャグ!
「河童ラブコメ」でビシッと決まった
——豊田さんが鈴菌さんに対して尊敬してるところってどこですか。
豊田 頭おかしい人ですよね、ちゃんと。
鈴菌 全然褒めてないじゃないですか!
豊田 いや、いい意味で。いい意味で頭おかしい人なので、それには感動してしまいます。僕は理屈で考えるほうなので、物語の整合性とか気になっちゃうんですけど、そんなことを凌駕する面白さがある。ギャグとか小ネタとかは僕が絶対に提案できない部分なので、そこはすごいし、キレてると思ってますし、信頼もしてますね。
——おお。そんなおふたりで起こした新連載が「Sillyなコダマ!!」ですが、この作品、鈴菌さんらしい暴走もありつつ、「好きになった男の子が実は……」という、いわゆる少女マンガのフォーマットをなぞっています。どういう経緯でこうなったんですか。
鈴菌 そもそも「ラブコメがやりたい」というのが最初にあったんです。でもプロットが「男の子がいて、女の子がいて、好きなんだけどうまくいかない」とか、あまりに漠然としてて……。豊田さんから「こういう作品」ってひと言で説明できる感じがほしいね、と言われて、ふたりで悩みに悩んで、行き詰まりかけてたときにふと「あ、河童は!?」と。
豊田 最終的に決め手になったのは河童よりむしろ「尻子玉」ですね。
鈴菌 そう。「尻子玉」って語感と字面がおかしいよ、ってずっと笑ってて、その盛り上がりで決まったという。あと人間関係とかキャラクターとかは、もともと用意していたプロットを当てはめていった感じです。
——河童という要素だけが足りてなかったんですね。
鈴菌 そうですね。それまでフワッとしてた物語が、「河童ラブコメ」でビシッと決まったかな、と。
豊田 あの頃の自分に「河童でホントに大丈夫なの?」って言ってあげたい気持ちはあります。
鈴菌 またそういうこと言う!
ぶっとんでるのに深い、が見えてきた
——「河童ラブコメ」っていうわかりやすい輪郭ができたことで、話が転がりだしたわけですね。
鈴菌 ええ。ただ「河童」と「ラブコメ」のバランスが難しいなー、と。どれだけ河童河童言えばいいのか。みんなそんなに河童大好きじゃないだろうし。それに、ラブコメの、というか日常の中に、「尻に手を突っ込む」という流れを自然に組み込むのが難しい。河童……尻……難しいな……尻……尻……(尻穴に手を突っ込むアクションを繰り返しながら)。
豊田 あなたその動きはどうかと思いますよ。
——編集者の立場から見たこの作品の魅力って何でしょう。
豊田 やっぱり活き活きとしたキャラクターですね。河童だし、尻子玉喋るし、ぶっとんだキャラばっかりなんだけど、読み進めていくといつの間にかキャラの内面の深いところにタッチしちゃってるっていうのが、これまでの鈴菌作品にはなかった魅力。意外性あって面白いと思ってます。
鈴菌 豊田さんが最初からずっと言ってたのは、ギャグとシリアスのバランスをきちんと両立したいということで。ギャグはものすごく振り切っていて、シリアスはものすごく深い、という。確かにそれができれば面白いと思うんですけど、やっぱりすごく難しくて……今は両立できるようがんばってる最中ですね。
豊田 シリアスとはいえ、暗くはならないように。
鈴菌 暗いマンガ好きですからね、豊田さん。
豊田 明るいマンガのほうが好きだよ!でも僕が担当する作品は、どれもなぜか暗くなってっちゃう……。
鈴菌 この作品はそうならないようにがんばってる最中です(笑)。
——やー、一時はどうなるかと思いましたが、マンガ家と編集者、お互いが認め合ってることがわかって安心しました。もう、言い残した不満とかないですよね。
豊田 不満とか言われるような心当たりはないですけどね、僕は。ゆるふわ愛され編集者ですから。
鈴菌 何ゆるふわって、うぜえ。うざいです。この人。
豊田 ナタリーさんのキャッチコピーですよ。「ゆるふわ愛され」って。
鈴菌 マジですか……すいません(笑)。
鈴菌カリオ(すずきんかりお)
1981年4月7日生まれ。2004年、月刊IKKI(小学館)にて「知恵熱」でデビュー。翌年に同誌にて、短編オムニバス形式の「乙女ウイルス」を連載開始。乙女心をテーマに、ギャグからシリアス、不条理まで幅広いストーリーを描き分け読者の注目を浴びた。2008年からは「Sillyなコダマ!!」を連載中。
豊田夢太郎(とよだゆめたろう)
IKKI編集部専属契約編集者(フリーランス)。2003年のIKKI月刊化と同時にIKKI編集部へ参加。現在、松本次郎「フリージア」、原一雄「のらみみ」、きづきあきら+サトウナンキ「セックスなんか興味ない」、ウィスット・ポンニミット「ブランコ」、スエカネクミコ「放課後のカリスマ」などを担当。