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小学館の少女マンガ誌・Sho-Comiは、今年で創刊50周年を迎えた。これを記念し、コミックナタリーでは全10回にわたる連載企画を展開中。第8回には、これまでの連載でも多くのマンガ家から憧れのSho-Comi作家として名前が挙がった北川みゆきが登場する。Sho-Comi50周年企画として新たに読み切りが発表された人気作「亜未!ノンストップ」「東京ジュリエット」についての思いや、マンガを描くうえでの原動力、34年を数えるマンガ家生活で一番印象的だったエピソードも明かしてくれた。

取材・文 / 三木美波

ネームで「亜未」「望」と書いたときに、ちょっと泣いてしまったんです

──今年4月、約20年ぶりに「東京ジュリエット」の新作読み切りがSho-Comiに掲載されました(参考:Sho-Comi50周年!北川みゆき「東京ジュリエット」新作、歴代作家のプレゼントも)。みのりと亮が35歳になってもお互いに夢中な様子が見られてうれしかったですし、読み切りとしてもとても面白かったです。

みのりと亮が描かれた「東京ジュリエット」新作読み切りのカラーカット。Sho-Comi2018年10号に掲載された。

ありがとうございます! 私は作品を描き終わると、キャラクターのその後を考えることってしないタイプなんです。だから今回はみのりたちに「懐かしいね、元気だった!?」って話しかける気持ちでした。

──みのりと亮の娘はやはりデザイナーになるんだ、しかもインスタに新作をアップするんだ……!と時代を感じました。2人の子供を軸に描こうと思ったのはなぜでしょうか?

Sho-Comi50周年記念で「東ジュリ」と「亜未!ノンストップ」の新作読み切りを、とオファーをいただいたときに、「うーんと……」ってけっこう考えて。2作品とも1990年代の話なので、時間軸を変えない続編とか、物語の間を埋めるエピソードを今のSho-Comiに描くのは難しいなと。だとしたら、本編の何十年後の話。「東ジュリ」のみのりと亮には子供がいそうだから、その子の話を描こうと思ったんです。

担当編集 この読み切りを校了したとき、変わらぬオシャレさとおもしろさに、編集部で「このまま連載してほしい」って話で盛り上がりました。

みんな落ち着いて、それは気の迷いだからね(笑)。

──今度は「亜未ノン」の新作読み切りが11月20日発売のSho-Comi24号に登場します。こちらはどんなエピソードなんでしょうか?

「東ジュリ」より、現役のSho-Comi読者寄りです。あんまり亜未と望は出ていなくて、ふとしたきっかけで映画のオーディションに受かった女の子と、アイドルっぽい俳優のラブストーリー、になりました。……実はこの話のネームで「亜未」「望」って名前を書いたときに、ちょっと泣いてしまって。なんで泣いてるんだろう私、って思ったくらい、よくわからなくて今も言葉にしづらいんですけど。懐かしさと、もう1回描かせていただけるありがたさ、みたいなものがこみ上げてきて……。不思議なんですよね。「東ジュリ」の読み切りのときはなかったんですけど、「亜未ノン」は私の中でちょっと特別なのかなと。

「亜未!ノンストップ」のカラーカット。

──それはどういった意味で?

「亜未ノン」のときに、読者の反応をもらえることの大事さを教えてもらったというか……。これも言葉にするのが難しいんですけど、例えばマンガがキャッチボールだとして、作品を描く、つまりこちらがボールを投げると、相手から返ってくるボールの速度とか熱量が、それまで描いていた作品とは違っていたんです。

──相手から返ってくるボールとは、ファンレターなどでしょうか?

そうですね、当時だとそれが中心でした。本当に読んでくれるのがありがたかったです。マンガ家としてのプロ意識も、それまでももちろんあったつもりではいたんですが、「プロなんだぞ! プロとしてやっていくんだぞ!」って思いがより芽生えたなと。

──読者に作品が届いたことが、「亜未ノン」で実感できたということですね。

いやでも、「亜未ノン」の前の「ぷりんせすARMY」とかもすごく楽しく描いたんですけどね! なんてったって少コミで初めて乳首にトーンを貼った女ですから(笑)。

──あはは(笑)、確かに「ぷりアミ」の野々香は乳首にトーンが貼ってありました。少コミ史上エポックメイキングな出来事ですね。

マンガ家になることを父に反対されたからこそ、本気になれた

──さて、ここからは北川さんのデビュー時や少コミ連載作を振り返っていければと思います。まずはデビューまでのお話を教えていただけますか? 子供の頃からマンガがお好きだったとか。

はい、お絵描きも好きでした。高校のときはマンガ研究部に入ったりして、オリジナルの作品も描いていたんですけど、これを仕事にするなんて本当に無理、大変だと思ってて。

──マンガ家デビューは17歳のとき、高校3年生だったと伺っています。

ええ。マンガ家になろうと思ったのは、最初は本当に軽い気持ちで、就職口がなかったからなんです。それに大学に行くほど勉強が好きではなかったし、お金を出してくれる親に申し訳ないなあと。マンガが好きだったので、進路相談で高校の先生に「マンガ家になります」って言ったら、先生のお兄さんが書店員だったこともあり、編集部の方を紹介してもらえることになったんです。「講談社と小学館、どっちがいい?」と言われたときに、少コミですぎ恵美子先生が「まりんぱーく横浜」(週刊少女コミック1980年13号に掲載。「抱きしめてミッドナイト」に収録)という読み切りを描いていらっしゃって、「この人の絵、とっても好きだ!」とときめいたことを思い出して。だから「小学館でお願いします!」って。

──そこから編集者を紹介してもらって、通常の持ち込みと同じように作品を持って行ったのでしょうか。

そうです。当時、父にマンガ家になることを「絶対に許さない」って反対されていて。じゃあ「デビューしたという既成事実を作っちゃおう!」と思って、デビューまではものすごい量を描きました。

──その負けん気の強さ、北川作品のヒロインみたいです(笑)。

「東京ジュリエット」13巻より。みのりに限らず、北川作品のヒロインはここぞというときに芯の強さを見せる。

で、ですかね!? どうなんだろう。でも当時は必死だったんですが、今思えば父の反対があったから「やらなきゃいけない」と本気になれたのかなと思います。そういえばデビュー前に編集さんについていただいたとき、「僕とこれからマンガを作っていきましょう。2週間後にまた打ち合わせしたいので、そのときまでにお話を作ってきてね」って言われて「わかりました!」と元気よく返事して。「お話を作ってこい」、つまり作品を1本持っていけばいいのかと思って、一生懸命原稿を描いて「31ページ持ってきました!」と2週間後に渡したら、「先走らないで!」って怒られたんです(笑)。「プロットを持ってきて」という意味だったらしくて! もう「すみませんでした!」(土下座のポーズ)って感じで、その担当さんと一緒にプロットを作るということを学んで……そこから学ぶんかい、みたいな(笑)。

──担当さんも、北川さんの気合いを感じてうれしかったでしょうね。そこから1984年の週刊少女コミック増刊に掲載された「12時の鐘は聞こえない」でデビュー。1986年に「スニーカーAge!!」で少コミ初連載となります。その後連載された「原宿ポップビート」や「レタスと剣」は2作とも原作者がクレジットされていますが、原作付きの作品を描かれた理由は?

担当さんが「北川は、絵は少コミっぽくてかわいいけど、話作りがヘタだからこいつに勉強させないと」ってことだったかと(笑)。でも本当にいろんな基礎ができてなくて行き当たりばったりで話を作っていたので、担当さんと話しても「この後どうなるの?」「うーん……」って感じだったんです。この2作品は自分がまったく考え付かない角度で物語を展開させられたので、勉強させていただきました。

──原作といえば、この9月に単行本化された「ふわふわゆれて、はらはらおちて」で久々に原作付きの作品を手がけられました。原作を担当したのは一井かずみさんでしたね。

これは私からリクエストさせていただいた企画なんです。一井先生のマンガは、私が100回生まれ変わっても出てこない言葉、セリフ、コマ割りで構成されていて、本当に「ここしかない!」というタイミングでどストライクな気持ちの乗せ方をすると思っていて。作品を面白いと思ったり尊敬していたりするマンガ家さんはいっぱいいるんですが、「この人のネームで描いてみたい!」と思ったのは一井先生が初めてなんです。なので図々しいんですが、プチコミック40周年のときに吉原由起先生と大海とむ先生がコラボしていた作品がすごく面白かったので(参考:吉原由起×大海とむが冬の王と春の姫描く物語、わたなべ志穂の読み切りも)、「私もコラボやってみたいなー」「描きたい! 描きたい!」ってリクエストして(笑)。だからこれは「原宿ポップビート」や「レタスと剣」とは自分の中で全然違う立ち位置の作品です。

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北川みゆき(キタガワミユキ)
北川みゆき
1月1日、東京生まれ。山羊座のB型。1984年、「12時の鐘は聞こえない」でデビューを飾る。少女コミック(小学館)を中心に活躍し、「あのこに1000%」「亜未!ノンストップ」「東京ジュリエット」などポップな作風で多くの作品を発表。少女コミックからの移籍後も、1998年から2004年までCheese!で連載されていた、姉弟による禁断の恋愛「罪に濡れたふたり」、2006年から2008年までプチコミック(ともに小学館)で連載され、2016年には武井咲主演でTVドラマ化された「せいせいするほど、愛してる」などヒット作多数。現在はプチコミックにてシリーズ連載「どうしようもない僕とキスしよう」を発表している。