「ふしぎ遊戯」「僕の初恋をキミに捧ぐ」……思い出のSho-Comi作品

──Sho-Comiは今年で創刊50周年を迎えました。星森さんがSho-Comiで好きな作品はなんですか?

私は渡瀬悠宇先生の「ふしぎ遊戯」が特に好きだったので、そのイメージが強かったです。周りの友達もみんなも夢中になって「ふしぎ遊戯」を読んでいましたね。そのあと少しSho-Comiから離れる期間があったんですけど、青木琴美先生が「僕の初恋をキミに捧ぐ」を連載していた頃にまた読み始めるようになって、その頃は自分もSho-Comi作家を志していたので、読者として楽しみながら描き方の研究もしていました。それこそトーンなどで表現される風とか、綿密に描き込まれた背景、ドラマチックな展開がとても魅力的で。青木先生が描く顔のアップや、ページをめくる前のヒキの作り方は、参考にできないくらい衝撃を受けましたね。「この先生のいる雑誌で描きたい!」と思って投稿するようになりました。

──Sho-Comiの作家さん方とは交流はあるのでしょうか? 第1回にご登場いただいた夜神里奈さんのお仕事場にお邪魔したとき(参照:Sho-Comi50周年特集 第1回 夜神里奈インタビュー)、星森さんから贈られた招き猫が飾ってありました。

「恋するみつば」より、みつばと幸輝。

ああ、うれしい。夜神先生は私がデビューする前に初めてアシスタントに行かせていただいた先生で。なかなかお会いできていなくて寂しいのですが、永遠に私の師匠として、日々尊敬しています。あと、さっき編集部にお邪魔したときに佐野愛莉先生にお会いしたんですが、彼女は私のアシスタントとして来てくれていたことがあって、すごく思い入れのある子なんです。もう私が“子”なんて言えないくらい人気作家さんなんですが(笑)。

──「恋するみつば」の単行本の中では、アシスタント時代の佐野さんとのエピソードが描かれていましたよね。

そうなんです。佐野先生は私のアシスタントとして来てくださってたときから尊敬している方で。「君のカラーイラスト、すごく好きだから私にくれ」なんてねだったりして(笑)。なかなかお会いする機会も減ってしまったんですが、これからのSho-Comiを支える先生だと思っているので、勝手に応援しています。

自分と相手を大事にしている恋愛が描きたい

──改めて、星森さんはSho-Comiをどんな雑誌だと感じていますか?

派手でありながら、胸キュンが詰まっている。そしてスピーディーな展開で盛り上げていくジェットコースターみたいなイメージがありますね。そこが月刊誌にはない魅力を生み出していると感じています。月刊誌だと意外とキャラクターたちがうじうじしている期間が長く続くこともあるんですけど、Sho-Comiは雑誌のカラーもあって、あまり長期間キャラクターが落ち込まないようにしていて。そういうスピード感がSho-Comiのよさだと思うんですが、私もそればかり描いていていいのかという自問自答もあります。なので自分はその中でも一石投じていきたいなとも思っているんです。Sho-Comiの中にある、いろんな色の1つになりたいなと。もしかしたら私の作品はSho-Comiの中でも展開がゆったりしているほうかもしれないんですが、Sho-Comiのメインカラーでなくても、端っこのほうで「こんなマンガもあるんだ」と思ってもらえる作品になれたらなと思っています。だからといってSho-Comiらしさから完全に外れてしまっても需要がなくなってしまう。そのあたりの均衡は難しいなと感じるところであり、挑戦していて楽しいところでもありますね。

──では星森さんがご自身の作品を通して、Sho-Comiの読者に伝えたいことはありますか?

先ほど言ったことの繰り返しにはなるんですけど、やっぱり初恋の楽しさを感じてもらえたらうれしいですね。あとは、ちょっと大人の関係に進むところを描くにしても、親御さんが読んだときに、ちゃんと注意喚起していると思ってもらえるマンガでありたいなと思うんです。

──「ういらぶ。」の10巻でそういうシーンがありましたね。親に内緒で凛と旅行に出かけた優羽が、母からの言葉で「いけないことをしたんだ」と身をもって自覚していました。

「ういらぶ。」より。「みんなで」と嘘をつき、凛と2人きりで旅行したことを母親に咎められた優羽は、母親の言葉と凛の決意を受けて、事の大きさを噛みしめる。

そうですね。この2人は付き合っているし、そういう関係にもなるよねという場面でも、周りから見たらまだ子供なので、周りを心配させるような行動を取ってしまったら「それはいけないことだよね」と描いていけるようなマンガにしていきたいと思っています。例えば「恋するレイジー」で今後かのと玲次の関係が発展したとして、真面目なかのが流されてしまったらそれでいいのかとか、ちゃんとキャラクターに準じた展開を描いていきたいですし、その中で「自分を大切にしてね」というのと、「自分を大切にしてくれる男子を見つけてね」という気持ちを伝えていきたいんです。恋してハッピーだからなんでも自由にやってしまうのではなく、もっと自分と相手を大事にしている恋愛が描きたいなと。

──後半の凛は特にその意識をちゃんと持っていましたね。

優羽の母親へ、決意を述べる凛。

それをちゃんとキャラクターの言葉や行動で見せたいんです。例えば凛と優羽が勝手な行動を取ったシーンを描いたときに、それを読んだ親御さんが「こういうことをしたらダメだからね」と注意するのではなく、マンガの中で伝えていくようにしたい。読者さんにはみんな自分のことを大事にしてほしいんです。だから“大事な恋をしてください”っていうのを伝えていきたいです。なんだか母親みたいなマンガだなと思います(笑)。

──とても素敵なお話でした。それでは最後に、今後Sho-Comiがどんな雑誌になっていってほしいか、星森さんの考えをお聞かせいただけますか。

今はSho-Comiもいろんな挑戦をしているところなのかなと、雑誌を読んでいてもなんとなく感じているところで。作品のジャンルもファンタジーやスポ根とか、いろんなバリエーションが増えているなと。Sho-Comiのよさであるジェットコースター感を崩さずに、もっと読者さんが楽しめるような新しいテイストが生まれるよう、私も力添えしていきたいです。今は小中学生の読者さんが多いですが、もっと上の世代の方が読んだときにも楽しい雑誌になっていったらうれしいですし、「Sho-Comiだったらなんでも読めるね」みたいな、楽しい遊園地のような雑誌であればいいなと。1つに絞らず、いろんな味がある雑誌になったらいいなと思っています。

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映画「ういらぶ。」
2018年11月9日(金)全国ロードショー
スタッフ

原作:星森ゆきも「ういらぶ。―初々しい恋のおはなし―」(小学館「Sho-Comi フラワーコミックス」刊)

監督:佐藤祐市

脚本:高橋ナツコ

音楽:佐藤直紀

主題歌:King & Prince「High On Love!」(Johnnys' Universe)

製作:『ういらぶ。』製作委員会

制作プロダクション:アスミック・エース / 共同テレビジョン

配給:アスミック・エース

キャスト

和泉凛:平野紫耀(King & Prince)

春名優羽:桜井日奈子

坂下暦:玉城ティナ

藤蛍太:磯村勇斗

佐伯実花:桜田ひより

佐伯和真:伊藤健太郎

星森ゆきも(ホシモリユキモ)
星森ゆきも
2月22日生まれ、東京都出身。2008年にSho-Comi増刊(小学館)に掲載された「つめたくしないで」でデビュー。キュートな絵柄と等身大のピュアラブストーリーで人気を博す。主な作品に「ういらぶ。―初々しい恋のおはなし―」「そらときみと。」「恋するみつば」など。現在はSho-Comi(小学館)にて「恋するレイジー」を連載中。単行本は3巻まで発売されており、最新4巻は11月26日に発売。

2018年12月20日更新