「シキザクラ」OP主題歌アーティスト 亜咲花×ゲスト声優 吉原雅斗(BOYS AND MEN)対談|名古屋出身アーティストが、東海発のアニメに夢を懸ける「これから、地元を盛り上げてくれる心強い同志に」

東海エリアを舞台に、東海出身のスタッフ・キャストが中心となって作るオリジナルTVアニメ「シキザクラ」。コミックナタリーでは10月9日の放送開始に先がけ、オープニング主題歌を担当する亜咲花と、最終話に本人役でゲスト出演するBOYS AND MENの吉原雅斗による対談をお届けする。名古屋出身の2人は、同作の試みにどのような印象を抱いたのか。また商店街が有名な街・大須や、知っていたら通なデートスポットなどの地元トークに花を咲かせる。さらにはアーティストとして名古屋を盛り上げたいという気概や、今後の「シキザクラ」に懸ける大きな夢まで熱く語ってもらった。

取材・文 / 前田久撮影 / ヨシダヤスシ

名古屋で繋がる人の縁

──おふたりはこうしてお仕事などでご一緒される機会は多いんですか?

吉原雅斗(BOYS AND MEN) 直接会うのは2回目です。でも、ゲームで遊んだ回数は2桁くらい……みたいな。

亜咲花 「Apex Legends」で“チーム名古屋”というチームを組んで一緒に遊んでるんです。

吉原雅斗

吉原 「八十亀ちゃんかんさつにっき」の作者で、名古屋に強い安藤正基先生の繋がりで集まったチームで。

亜咲花 参加者全員、名古屋という共通点から仲良くなった人ばっかり。だから会ってないけど、よしぴさん(吉原のこと)の声はよく聞いてます。

吉原 「右! 右だよ!」とかね(笑)。

──名古屋を縁にした繋がりがあるんですね。今日の対談のテーマである「シキザクラ」も東海発の作品ですが、おふたりとこのタイトルとの出会いは?

亜咲花 私は2年前くらいに、「名古屋を、東海エリアを題材にしたアニメを、名古屋のキャストやスタッフを中心にしたチームで作るので、ぜひその主題歌を歌っていただけませんか?」とお声がけいただいたのが最初です。

吉原 僕が知ったのはもうちょっと後です。僕のいるボイメン(BOYS AND MEN)は名古屋で根強くやっているグループなので、「名古屋発アニメ」を盛り上げる一環として声をかけていただいた感じだと思います。ありがたいことです。

亜咲花

──企画の第一印象はどうでした?

亜咲花 私は本当に名古屋が大好きだから、名古屋の、東海エリアの人たちをメインにキャストやスタッフを固めた作品っていうのに、ものすごく愛を感じましたね。こだわりと熱量がないと、そこまで人を揃えるのは難しいと思うので。

吉原 僕も名古屋から、しかもイチから企画を立ち上げる感じ。そこにすごくシンパシーを感じました。あと、やっぱり企画をやるときって、すごく売れている方を入れて、盤石な布陣で始めるのが人間の心理だと思うんですけど、それよりも東海の方で固めるのを優先しているところが、とても情熱的で素敵な考えだと思いました。

──PVが公開されていますが、そちらをご覧になってみて、どんな感想を持たれました?

「シキザクラ」オープニング主題歌PVより。

亜咲花 3DCGで描かれた派手なアクションの臨場感だったり、映像の立体感がものすごいですね。一瞬、舞台が名古屋だと忘れちゃうぐらいで、逆にあのPVからどういうふうに名古屋につながっていくんだろう?って、ちょっと気になりますよね。

吉原 PVだとまだ名古屋感はそんなにね。でもバトルシーンは、やっぱり男の子なんでアガりました。銃だったり、刀だったりでのファイトがスゴくカッコいい。「名古屋、こんな予算あったん?」っていう感じ。

亜咲花 ちょっと!(笑)

吉原 いやー、生まれ育った街だから、そのあたりの感覚がわかってないのかな。「名古屋、ここまでガチでいってるん!?」って驚きました。胸アツでしたね。

亜咲花 でも私が知ったのは2年前くらいだけど、たぶんもっと前から関係者の皆さんは企画とか練ってただろうから、とてつもない時間がかかっているはずですよ。本当にそうした、今までスタッフの皆さんのやってきた努力が、この映像に詰まっているんだなとPVを見て感じました。

“シキザクラ”ポーズをする亜咲花。
“シキザクラ”ポーズをする吉原雅斗。

歌に込めた「地元」への思い

──そんな亜咲花さんは「シキザクラ」のオープニング主題歌「BELIEVE MYSELF」を歌われていて、この曲では作詞も担当されています。中京テレビの「シキザクラ」制作密着番組でも曲の制作過程が取材されていましたが、改めて曲に込めたものを伺わせてください。

亜咲花 曲を作ったのは1年以上前で、作詞をしていた時点では、まだアニメのタイアップ曲で歌詞を書かせていただいたことがなかったんです。作品の発表順が前後したこともあって、別の作品に書いた曲が先行して出ましたけど。だからとにかく、お話をいただいたときはうれしかったんです。アニソン歌手として活動してきて、歌うだけじゃなく、ついに歌詞まで書けるんだ!って。それで前向きに取り組ませていただいたんですけど、気を付けた点は、亜咲花のよさ、作品のよさも出しつつ、名古屋の色を少しでも出すことです。最初は歌詞を立て読みにしたら「名古屋」と読めるとかも考えたんですけど……ちょっと難しくて入れられなかったですね。

──曲もカッコいい、ロックな感じですし、ちょっと合わないかもしれませんね。

亜咲花

亜咲花 そうなんです。シリアスな曲なのに、その仕掛けはやっぱり違うかなあと(苦笑)。で、ちょっとボカシながらその雰囲気を入れることにしました。「この街輝け ずっと!」という歌詞があるんですけど、その「この街」というのは、私にとっては名古屋のことです。「過ごした青春(じかん) 忘れないで キミだけの場所 ここにあるから」という歌詞も、私の名古屋への愛と、キャラクターたちに向けた、「大人になっても帰ってくる場所はここだよ、いつでも帰っておいで」というメッセージを入れたところですね。作品の歌詞を書くときって、ここまで幅広く考えるんだと気付いた、アーティストとしての成長にも繋がった1曲です。

──亜咲花さんのブログには、「転勤族にとっての地元とは」(参照:亜咲花 公式ブログ - LINE BLOG)という地元への思いを綴ったエモいエントリがありますよね。

亜咲花 なんで知ってるんですか!? 恥ずかしい……(笑)。そう、名古屋はアメリカから帰国して、いろいろバタバタしていた時期が続いていた中で、私のすべてを受け入れてくれた街だったんです。それもあって、名古屋には本当に、異常なぐらい愛がありますね。

──「BELIEVE MYSELF」の歌詞には、そのエントリと重なるような気持ちも込められているのかなと。

亜咲花 まさにそうです。私、生まれ育った場所が全部バラバラで、小・中・高と全部バラバラの土地で通ったので、地元がある、帰って来る場所があるのはいいなあ……とうらやましく思う気持ちがあるんですよ。だから、帰る場所があるなら、大切にしてほしいという気持ちも込めて、あの歌詞を綴っています。

吉原雅斗

──レコーディングで歌ってみた感触はどうでした?

亜咲花 自分で選ばせていただいた楽曲なんですけど歌ってみたらものすごく音域の幅が広くて大変でした(笑)。サビでは裏声、Aメロでは低い地声で歌って、これはとんでもない曲を選んでしまったなと。レコーディングの様子も「ナゴヤアニメプロジェクト!」(注:東海エリアのスタッフを中心にアニメを制作し、国内に止まらず海外にも発信していくプロジェクト。「シキザクラ」はその第1弾として制作された)の企画で録っていただいていたんですけど、何時間も格闘しましたね。ハモりも何層もあったので、たくさん録って、コーラスも録って。ストリングスもかなり大きく前面に出ているオケだったので、それに負けないように声も奥行きを作るために何層も何層も重ねているんです。ぜひ聴いていただく際には、ストリングスのきれいな音と亜咲花の主メロ以外のハモとかコーラスにも注目してもらえたらうれしいです。

吉原 コーラスも全部ひとりでやったの?

亜咲花 全部やった!

吉原 ……それは大ッ変だわ!! ボイメンではわりかし僕がそういうコーラスとかを担当したりするんですけど、それでも大変だなって思うので、それをソロで、しかもダブル、トリプルとやるのは、聞くだけでゾッとします。しんどすぎる……。

──そういう苦労を伺うと、また曲の聴こえ方が変わってきそうな感じですね。

吉原 でも本当に、すごく侘び寂びがあって、Aメロ・Bメロで引き込まれて、サビの部分でめっちゃ熱くなるような曲で、聴いたときはシンプルに感動しました。友達なのに。

ヒーローに憧れる高校生・三輪翔。 代々シキザクラの儀式を行ってきた巫女一族の少女・明神逢花。

亜咲花 今までゲーマーの顔ばかり見せてきて、「自称歌手」状態だったもんね(笑)。

吉原 歌っている本人の思いがたくさん詰まっている曲だとは思うんですけども、受け取る側でもすごく、「シキザクラ」とリンクさせて、自分の中で解釈できる曲だなと思いました。キャラクターの葛藤だったり、勇気を出した瞬間だったり、作品を見進めるほどにリンクする場所が増えそう。とても作品にマッチした1曲だなと思いました。

──作品との関わりという話で言うと、吉原さんは「シキザクラ」でアニメの声優に初挑戦されたとか。声のお仕事はこれまでもちょこちょこやられていらっしゃいましたけど、やはり何か違いました?

吉原 いやー、それが、今回は自分役だったので、ノンストレスでやらせていただきました。

亜咲花 吉原雅斗役なんだ!

吉原 そうなんだよ。ありがたいことです。ボイメンとしてがんばってきて、ボイメンとしてこの作品に出られるなんて。自分にできることは微々たることだったかもしれないですけど、作品の役に立てるように、悪目立ちをしないぐらいに伸び伸びと、楽しんで演じました。